※本記事は、2024年7月刊行の『MarkeZine』(雑誌)103号に掲載したものです
【特集】ターゲティング大変革期の到来
─ なぜその手法を選ぶのか?ターゲティング大変革期に求められる“目利き”
─ データクリーンルームで進化する、データドリブンマーケティング 現在の開発・活用状況を電通に聞く(本記事)
─ “レコメンド疲れ”した生活者にセレンディピティを LINEヤフーが目指す新たな広告の届け方
─ 老若男女の共通したインタレストを確実に捉える、「天気」が持つ可能性
─ 人の動きからは単純な位置情報だけでなく、興味関心・親和性も導き出せる
─ AIで進化するGoogle広告の今。成果を上げるために必要な3つのポイント
─ この数年で大きな変化が。自動最適化が進むMeta広告で効果を上げるためのポイント
─ 運用型広告をハックしてきた広告代理店のこれから
─ Google「3rd Party Cookie “廃止の撤回”」の真意 アタラ杉原剛氏が解説
活用が進むCookieレス時代の代替手法「データクリーンルーム」とは
──近年、Cookieレス時代の代替手法として「データクリーンルーム」に注目が集まっています。まずは、データクリーンルームとはどういったソリューションなのか、ご説明いただけますか。
榑林:データクリーンルームは、プラットフォーム事業者が広告主や広告代理店に向けて提供しているクラウド上の分析環境です。データクリーンルームでは、ユーザーのプライバシーに配慮した形で、プラットフォーム事業者が保有しているデータ、広告主が保有しているデータ、我々代理店が保有しているデータを連携し、顧客分析や広告配信、効果測定を行うことができます。
今後、データマーケティングでは、安全にデータを取り扱いかつ結果を出していくことが当然のこととして求められてきます。我々がクライアント企業様のデータマーケティングをご支援する際、丁寧で細やかな分析を安全に行うためには、データクリーンルームの活用が必須となってくるでしょう。
一方で、すべての広告主にとって、すべての場面でデータクリーンルームの活用が必須かというとそういうわけでもありません。たとえば、テレビとYouTubeの広告効果を掛け合わせて検証したい、デジタル広告がリアル店舗での購買にどのくらい効果をもたらしたかを検証したいなどの目的・課題があるとき、それを実現させるためにデータクリーンルームを手段として用います。
各社の目的・課題に沿って自由度高く活用できる点はデータクリーンルームのメリットですが、前述のとおり、広告主企業においては「活用が必須」という見方ではなく、目的・課題に応じて、活用するものとして認識いただくとよいかと思います。
──電通は、2016年頃から世界でもいち早くデータクリーンルームに着目し、プラットフォーム事業者との連携・開発を進めてきました。現在、どこまで整備・拡充・活用が進んでいますか?
榑林:業界の中でもかなり先行的に取り組んできましたので、大手のプラットフォーム事業者様とはおおよそ連携できています。また、そうした実績があることから新たにデータクリーンルームの取り組みを始めたいというプラットフォーム事業者様からお声がけいただく機会も増えています。
現在は、電通の2nd Party Dataに加え、データアライアンスを組んでいるポイントカード/決済アプリのデータや、小売の実購買データなどの連携を強化しているところです。昨年は1,000件ほどの案件でデータクリーンルームが活用されました。
さらに、電通ではデータクリーンルーム基盤「TOBIRAS(トビラス)」を構築し、2022年8月から提供を開始しています。データクリーンルームは、プラットフォームごとにデータ連携の方法や分析作法が異なるため、運用を一元化したり、データクリーンルーム同士のデータを比較検討したりできないという課題がありました。そこで開発したのが、複数のデータクリーンルームを利用しやすくするソリューション「TOBIRAS」です。TOBIRASは複数のデータクリーンルーム活用をデータ連携・分析作業など様々な面から支援します。