SEOの概念がない時代に「これは仕事になる」と確信した
有園:渡辺さんは2022年4月からDMM.comに在籍されていますが、それ以前は長年、アイレップのSEM総合研究所の所長をされていました。
渡辺:SEM総合研究所には、2005年から2021年まで約17年間携わっていました。
有園:SEOに興味を持ったのは、いつごろなのですか。
渡辺:1996年、大学生の頃ですね。きっかけははっきりと覚えています。当時、始まったばかりのインターネット通販で傘を買おうと思ったのですが、検索で傘のショップを探すと、お目当ての店が出てきたのは検索結果の50位くらいでした。当時は検索結果の読み込みも遅く、とても時間がかかりました。「最初から1位に出してくれればいいのに」と思うと同時に、「これは仕事になるのではないか」と思ったのです。
大学ではESSのサークルに所属し、ディベートの資料を探すためにインターネットを使っていました。とにかくたくさん検索をして、さんざん苦労していたので、そういう考えに行き着いたのかと思います。
有園:しかし、当時はまだSEOの概念なんてなかったですよね。その時代に「検索結果を1位にすることが仕事になる」という発想があったのには非常に驚きます。何かが“降りてきた”ということなんでしょうね。
渡辺さんのような方は、業界の中でも貴重な存在だと思います。自分の得意なことを生かして仕事をして、今も専門家として第一線で活躍していることは素晴らしいですね。
短期的には生成AIで検索行動は変わらない
有園:それほど長くSEOに取り組んできた立場から見て、生成AIの登場による環境変化をどう捉えていますか。
渡辺:生成AIが出てきてから、「検索エンジンが使われなくなる」「SEOに大きく影響がある」と主張する人は多いですが、そういった意見の大半は、Google検索の話、つまり“検索結果画面”の話で終わっています。
検索結果画面の変遷を振り返ると、2007年に登場したユニバーサル検索が大きな変化でした。それによって、検索結果画面に画像や地図などが出てくるようになりました。その後も、検索結果画面は何度も変化してきましたが、それによって「検索行動」が変化したかというと、大筋では変わっていません。
人の検索行動がどう変わるのか、という観点で変化を見ると、これまでは「情報を取りに行く」だけでしたが、生成AIによって「尋ねる」「依頼する」ことができるようになります。「今までできなかったことができるようになった」というのが本質的な変化です。ただ、そのような検索行動の変化が表面化してくるのは、2030年ごろではないでしょうか。