情報の循環構造を構築する「GDN circulation」
私の経験では、 「Rank 1st theory」が成立する広告主は他にもあって、たとえば、Amazon、ユニクロなどがそうだった。また、この逆で、図表1の(case2)のようにキレイに右肩下がりになる広告主もいる。これは、「条件3:商品/サービスの競争力がある」「条件4:ブランドの競争力がある」「条件5:ウェブサイト/ランディングページの競争力がある(使いやすくコンバージョンしやすい)」のいずれか、あるいは、いずれもが整っていない場合だ。もちろん、このような広告主企業はネット広告を有効活用できない為、衰退していくことになる。あえて社名は挙げないが、皆さんも思いつくことと思う。
順位変動がCVRに影響しない(case3)に当てはまる典型例は、転職や人材紹介だ。これは、アルバイト情報とは違って、比較検討期間が長く、短期的にコンバージョンに至らない為、掲載順位とCVRに正の相関も負の相関も統計的には出にくくなる。アルバイト市場に比べて、転職市場は、流動性が低い。たとえば、学生は一年に何回もアルバイトを変更したり、複数のアルバイトを掛け持ちしたりする。転職市場の場合に、一年に何回も転職する人は少ないし、正社員を掛け持ちする人はいない。その結果、慎重に適性を考慮しながら、コンバージョンするため、1位掲載だろうが3位掲載だろうがあまりCVに関係しないことになる。
儲かる広告主は、この「Rank 1st theory」が成り立っている。そして、もう一つの「GDN circulation」 をうまく活用している。「GDN circulation」 は、Googleのビジネスモデルにうまく便乗し、意図的に情報の循環構造を構築することで、半自動的なキャッシュマシーンをグルグルと回すのがコツである。

Googleのビジネスモデルにうまく乗っかるためには、ユーザーがどのように回遊するのかをイメージしてもらったほうが早い。たとえば、「アルバイト」で検索したユーザーがいたとする。FromAであれば、まずは、FromAの検索広告を1位に掲載する。仮にこのCTRが20%などの高い数字であっても80%の人はスルーしていく。このスルーしたユーザーは捕捉できないかというと、そうでもない。なぜなら、自然検索結果のリストの中に、GDNを掲載しているサイトが含まれているからだ。アルバイト関連であれば、たとえば、アルバイト情報比較サイトみたいなサイトにGDNの広告枠がある。つまり、「GDN広告枠付きサイト」をユーザーが自然検索結果リストの中から選んでクリックした場合、今度は、その「GDN広告枠付きサイト」で FromAの広告を掲載できるチャンスがあるのだ。
つまり、こういう感じだ。たとえば、「アルバイト」で検索したユーザーが、検索広告でFromAの広告をクリックして、FromAのサイトに訪問してくれれば、まずはありがたい。しかし、スルーされてしまった場合、今度は、GDN広告枠でユーザーに広告を表示するチャンス(セカンドチャンス)が訪れる可能性がある。そしてそのセカンドチャンスの際に、「GDN広告枠付きサイト」でFromAの広告を掲載してサイトに誘導できて、アルバイト応募(CV)に至ってくれるなら、それでもよい。だが、そのセカンドチャンスを逃しても、ユーザーは欲しい情報が見つからない場合、検索ページに戻ってきて今度は「アルバイト 表参道」などのキーワードで検索するかもしれない。そして、また、クリックしてくれればありがたいが、スルーされても、今度は、3回目のチャンスが「GDN広告枠付きサイト」で訪れてFromAに誘導できるかもしれない。そして、また、それがダメでも、次のチャンスがあるかもしれない……と循環していく。
Googleのビジネスモデルは、この自然検索結果に「GDN広告枠付きサイト」を含めることで、グルグルと広告掲載が続いていくため、その循環構造で儲かるようになっている。アルゴリズムによって、多めに含めたり少なめに含めたり、調整しているだろう。