※本記事は、2024年8月刊行の『MarkeZine』(雑誌)104号に掲載したものです
「ユニファイドコマース」は手法ではない
「ユニファイドコマース」という単語の日本解説記事を頻繁に見かけるようになった。これはOMO、オムニチャネル、シームレスといった旧来の「手法」とは似て非なる「新市場」だ。ユニファイドコマースは、日本の小売・流通業界ではまだ実現には至っていないからこその、事業チャンスである。
理解の第一歩として、ここでクイズ。「Amazonにはあるが、日本の小売事業にはまだないモノ(仕組み)とは?」
答えは、「セラー出品者に販売を開放するマーケットプレイス」である。
日本の小売事業者(例:イオンや三越伊勢丹、セブンイレブンなど)は、オンラインであれ、店舗であれ、自社の目利きによるP/O品(発注仕入れ品)やオリジナル加工品(プライベートブランド)の販売に「閉じている」。
セラー出品者にマーケットプレイスとして開放する「フルフィルメント・サービス」への市場投資も極小のままだ。楽天やイオンでさえ、フルフィルメント施設への投資は合計でも数拠点という状況。対してアマゾンジャパンは、既に20拠点以上のフルフィルメント施設を構えており、中継配送センターを合わせると70拠点を超える規模に成長させている。
この広がる市場をすべて繋げる(ユニファイドさせる)ことで創出される新市場が、ユニファイドコマースである。
【図表1】は、Amazonの世界市場でのGMV(Gross Merchandise Value:販売扱い総売上)の伸びを示している。
見ると、Amazonがベンダーへの発注で仕入れる自社販売量(赤枠)は既に頭打ちに達している。それに対し、セラー出品者の販売量(青枠)の伸びには、その倍以上のジャンプ幅と規模があり、AmazonEC全体の成長を後押ししていることがわかる。
ユニファイドコマースとは、マーケットプレイスというエコシステムを開放する業態だ。単なる手法レベルの話ではなく、セラー出品者に付いているファン(潜在的な最終消費者)の開拓をする「ビジネス・アウトソーシング化」とたとえよう。さらに、この繋がりが物流だけでなく、金融決済や広告自動化も含めてまるっと、プラットフォーム上で一元化されていくところに隠れた意味合いがある。