ヘブバンは未知の海外市場にどう進出したか
佐藤(MOTTO):山根さんから「クロスデバイス」の話題が出ましたが、今のゲームアプリマーケティングにおけるキーワードはまさに「クロスボーダー」ではないでしょうか。クロスするボーダーは「デバイス」であり「国境」でもあり「プラットフォーム」も含まれます。加藤さんには、国境をクロスしたお取り組みを紹介していただきたいです。
加藤(WFS):我々がグローバル展開をスタートしたのは約5年前です。ゲームを海外に展開する際、主に二つの方法があります。一つは自社でパブリッシングを行う方法。もう一つは現地の企業を通じて我々が制作したものをパブリッシングしてもらう方法です。我々は前者、つまり自社で海外市場に挑戦しています。
「新しい驚きを、世界中の人へ。」というミッションを掲げていることもあり、ビジネスのさらなる成長を目指すためにはグローバル展開が不可欠でした。2018年頃から本格的に取り組み始めましたが、当初は右も左もわからない状態だったため、現地の企業やプロモーション協力会社を探して体制を整えました。
体制を整えたのち、2023年には「ヘブンバーンズレッド(へブバン)」というタイトルを、韓国・繁体字圏でリリースすることが決まりました。とはいえ現地では会社名もタイトルもほとんど知られていませんでした。そこで、現地で制作発表会を開催することにしたのです。
最初は人が集まるか不安でしたが、韓国でも繁体字圏でも日本のゲーム市場に対する注目は高まっています。そんな日本国内で一定の認知度を誇るタイトルということもあり、制作発表会には多くのメディアの方々が参加してくれました。我々が大切にしている価値観やタイトルの魅力を、現地の方々と直接コミュニケーションを取りながらプレゼンテーションすることができ、良い機会になりました。
その後はプロモーションを強化し、日本と同様韓国や繁体字圏でもテレビCMやOOH広告を展開しました。商習慣の違いなどに適応しながらクリエイティブを制作したことは、非常に良い経験でした。
異文化交流に相当の費用と時間をかけるワケ
加藤(WFS):リリース直前には、台北ゲームショウという大規模な展示会に出展しました。事前プロモーションの効果もあって多くの方々にヘブバンを認知・体験していただき、“期待のタイトル”としての地位を確立できたと思います。
佐藤(MOTTO):海外展開の先輩から挑戦を考えている企業に向けて、成功させるためのポイントをお聞かせください。
加藤(WFS):文化的な違いを100%理解することは難しいですが、理解のないまま現地でのマーケティングやプロモーションを効果的に行うことは困難です。デジタルを中心としたアプローチであれば、ある程度は可能でしょう。しかし、我々が目指している地点は「タイトルのストーリーを伝え、豊かな体験を提供すること」です。そのためには、現地の文化をしっかりと理解することが重要だと考えています。
現地の文化を理解するために、当社のマーケティング部門では従業員の約4分の1を他国籍のメンバーで構成しています。海外でプロモーションを実施する際は、日本人メンバーとともにアイデアを出し合ってもらい、計画を立てる形です。加えて定期的に海外へ出張し、現地の方々と直接会って情報交換する機会も設けています。逆に、海外の方が日本を訪れる際も同様です。このような異文化交流には、相当の時間と費用をかけています。
佐藤(MOTTO):ライトフライヤースタジオがオフラインプロモーションを重視する理由が理解できました。Adjustとしては、海外展開をする企業にどのようなサポートを提供しているのでしょうか。
山根(Adjust):Adjustは海外に16の拠点を持っているため、現地の展開に必要なサポートを提供することが可能です。お客様のニーズに合わせて対応しますので、ぜひ相談いただければと思います。