効率化を求めた分業化が顧客理解を難しくしている
佐藤(MOTTO):本日はゲームアプリのマーケティングプロモーションとデータ戦略について、業界をリードしてきた2社の担当者とディスカッションを進めていきたいと思います。お二人はゲームアプリのマーケティングに対して、どのような課題感をお持ちですか?
加藤(WFS):ゲームアプリ単体というよりは、マーケティング全体における課題になるかもしれませんが、まず一般論として、顧客理解の難しさが挙げられます。背景にはタッチポイントの多様化が指摘できるでしょう。
加藤(WFS):ショート動画やCTVなどの新たなフォーマットやメディアが盛り上がっているほか、エンターテインメント領域ではVTuberの長時間ライブを視聴する人が増えています。加えて、ゲームをPCでプレイする人が増加するなど、ゲーム周辺で顧客の行動が多様化してきているのです。
この変化に我々マーケターが追いつくことは非常に難しいと感じています。組織や人材の課題にも関連しますが、効率化のために「SNS運用担当」「リアルイベント担当」などと分業化を進めてきたのが、ゲーム業界のマーケティングの歴史だからです。顧客の多様なニーズやインサイトを捉え、マーケティング全体を設計することが難しくなっているため、役割を超えた組織作りが新たな課題となっています。
さらに、日本のゲーム市場が頭打ち状態になっていることは、様々な調査でも指摘されており、皆さまも実感されていると思います。一方で、海外市場においては日本のコンテンツにまだまだチャンスがあるものの、大きな成功事例は少ないのが現状です。この点は課題であると同時に大きなチャンスだと考えています。
新規ユーザーの獲得数だけでなく定着率にも目を向けよ
吉永(ルーデル):私は「費用対効果の最大化」に課題があると考えています。加藤さんのお話と重複する部分もありますが、マーケティングのチャネルや打ち手が増えたことで「どの方法が最も効果的なのか」を判断することが難しくなっているためです。これは業界を問わず、永遠のテーマではないでしょうか。この課題にどこまで向き合い、改善していけるかが重要です。
吉永(ルーデル):同時に、費用対効果を広告やマーケティングの領域だけに限定せず、より広い視点で捉えることも必要だと思います。たとえば新規ユーザーを獲得した際に「そのユーザーを効率良く定着させられているか」といった視点です。獲得数だけで施策の費用対効果を測っても、そのユーザーが早々に離脱しているようであれば、非常にもったいないと言えます。サービスの中身や入り口の部分も含めて、いかに費用対効果を最大化していくかが課題だと考えています。
山根(Adjust):デバイスの多様化により、費用対効果の最大化は一層難しくなりつつあります。この課題に応える手法がクロスデバイスの計測です。当社のクライアントからも「それまでなんとなく捉えていたものをしっかりと可視化したい」という要望が業種問わず増えてきました。
モバイルアプリトレンド2024:日本版
AdjustとSensor Towerが共同調査した「モバイルアプリトレンド2024:日本版」では、日本市場のアプリパフォーマンスに関する戦略的なインサイトをお届けします。ゲーム、ファイナンス、Eコマース、コネクテッドテレビ、PC、コンソールなどのチャネルのデータ分析から、アプリの成長機会を探ります。ダウンロードはAdjustのサイトから。