ブランド価値向上やSEOの観点も!企業がウェブアクセシビリティ向上を推進すべき4つの理由
MZ:企業にとって、ウェブアクセシビリティの向上が重要な理由は何でしょうか。
清野:4つの観点があります。1つ目は、法的コンプライアンスを遵守するため。米国ではウェブアクセシビリティへの配慮をしていないことで訴訟になった例もあります。法律で義務化されている対応に不足があれば、当然様々なリスクにつながります。
2つ目に、顧客体験を担保することで市場の拡大につながる点が挙げられます。特にウェブの顧客体験では、リアル店舗での接客などと異なり、その場で人が対応してフォローできません。ゆえに、ユーザーが欲しい情報をスムーズに得られる仕組み作りが一層重要です。
企業の顧客の中には、障害者の方や高齢者の方もいらっしゃいます。そういったユーザーにも快適な顧客体験を提供できれば、顧客の幅も広がり、利用拡大につながるといえます。
3つ目に、ブランド価値の向上の観点でも、ウェブアクセシビリティは大切な要素です。CSRなどの重要性が高まる中、企業が社会的な責任を果たしユーザーに寄り添ったスタンスでいることは、ブランド価値向上につながります。
4つ目は、ウェブアクセシビリティを高めるとSEOにも効果があるからです。音声読み上げがしやすい「マシンリーダブル(機械が読みやすい)」なウェブサイトは、プログラムが理解しやすい内容だということ。結果的に、Googleによるクローラーの解析にもポジティブに働くため、SEOの評価が高まるともいわれています。
ウェブアクセシビリティへの取り組み、何からすべき?
MZ:ウェブアクセシビリティを向上させるために、企業は何から取り組むのがよいでしょうか?
清野:まずは、ガイドラインや規格の内容を知ることが重要です。世界的なウェブアクセシビリティのガイドラインである「WCAG」のバージョン2.0、2.1、2.2や「WCAG」2.0に相当する日本基準で制定した規格「JIS X 8341-3:2016」などに、企業は対応することになるためです。

清野:これらのガイドライン/規格に対して、自社のウェブサイトに不足している部分を把握し、対応すべきことを確認するのがファーストステップです。デジタル庁のサイトや、ウェブアクセシビリティ基盤委員会のサイトに情報がまとまっているので、参考にするとよいでしょう。
ガイドラインでは、「レベルA」「レベルAA」「レベルAAA」と3つのレベルが定められています。レベルごとに対応すべき項目のリストがあり、それらを満たすことで各レベルを達成できます。Aは最低限対応すべきレベルで、AAは推奨されるレベル、AAAは発展的なレベルです。これからウェブアクセシビリティの向上に取り組む企業は、まずレベルAに紐づく項目から対応し、AAまでの対応完了を目指すのがおすすめです。
レベルAを達成する項目例としては、「キーボード操作」や「エラーの特定」などがあります。エラーの特定とは、ユーザーがフォームに記入した情報に漏れや形式の問題があった時に、どの項目でエラーが起きどう修正すればいいかを提示することです。上部に赤字で「入力必須です」と示すだけでは、読み上げられても視覚障害者の方はどこを直すべきか把握できません。
レベルAAの例であれば、「コントラスト比」といった項目があります。視力の弱い方や色覚多様性の方も識別しやすいように、文字色と背景色などのコントラスト比の基準値が決められています。