お客様の声から「当たり前ではない視点」を探し出す
――SNS運用で反響を得るために、大事だと感じていることを教えてください。
前提として、SNS運用の目的は反響を得ることではありません。ただ、大事にしていることはメンションをつけて弊社のサービスを評価してくださった投稿には必ず目を通し、できる限り返信をすることです。
自分たちは当たり前だと思っていることでも、お客様からすると当たり前ではない、ということは多々あります。それを自分たちで見つけるのは容易ではありません。日々の投稿やお客様の声から、「当たり前ではない視点」を探し出す努力をしています。
たとえば、大切なぬいぐるみを段ボールに入れて宅配便で送ることに抵抗があるお客様が、都内から山梨県の弊社店舗までわざわざ持ち込まれるケースがありました。配送することを避けたいという考えは、私たちだけでは気付けませんでした。対応として、神社で祈祷した「安全祈願シール」をぬいぐるみに同封してクリーニング後にお戻しし、次回ご利用の際にはそのシールを段ボールに貼っていただけるように工夫しました。
10年以上前に学生服クリーニングの際に「合格祈願」のタグをつける取り組みを行っていました。それを応用して「安全祈願」をつけるのはどうかという発想になったのです。弊社から大々的に紹介していませんが、喜んでくださったお客様がSNSで投稿されることで少しずつ認知が広がっています。
――SNS運用を継続するにあたり、大事だと感じていることを教えてください。
こだわった文章や動画作成は行わず、機材はiPhoneのみ、毎日考えなくても投稿できるコンテンツを見つけて投稿し続けてきました。お客様に対し、「お品物をこのように扱っていますよ」と伝えることが第一目的なので、リッチな投稿やバズは狙わなくていいというのが弊社のスタンスです。
ただし、会社のリソースを使っている以上は少しでも売上や利益に転嫁しようと考え、ときどきリンクを載せて「注文してくださいね」といったセールス的な言葉も入れています。
加えて、注文後にお客様レビューを依頼しています。Googleマップと自社サイト内でのレビュー、SNS投稿のいずれかができる導線を作っています。たとえばXのリンクをクリックすると、注文を受けたアイテムと該当するホームページのURLを自動で投稿文に入る状態にしています。それをそのまま投稿してくださっている方も多く、「ネットで洗濯.comで○○を洗いました」という文言とURLを拡散できるという効果があります。
フォロワー数が増えてもお客様の満足・安心が第一
――お客様のご要望に柔軟に対応するにあたり、社内連携が重要になってくると思いますが、意識していることなどあれば伺えますか?
会社としての考え方を全員に共有し、社内でアイデアや意見をフランクに言える環境作りを心がけています。
SNS担当ではないスタッフもSNSは見ているので、「お客様がこう言っていましたよ」といった情報が集まります。先ほど紹介した「ぬいぐるみを宅急便で送るのに抵抗がある」というお客様の声を見つけたのもスタッフでした。対応策もスタッフのアイデアを参考に生まれました。
――ありがとうございます。お客様の満足を第一に考える姿勢がとてもよくわかりました。最後にSNS運用の今後の目標や展望があれば教えてください。
キャンプブームやぬいぐるみ投稿のバズに乗って一定数フォロワーが増えたおかげで、施策や活動の幅が広がりました。具体的には複数のキャラクター元の大手企業から投稿のオファーをいただき、企業様からの案件としてお受けすることも増えました。
ただ、弊社の想いとして、一度接点のあったお客様に対して喜んでもらいたいという気持ちでSNSを運用することはフォロワー数が少ないときからブレていません。基本のスタンスは変わらず、お客様に向けたアナウンスをしながら、副次的にSNSをご覧になったことがご利用のきっかけにつながればいいなと思っています。
ここに注目!ヨンマルサン流SNS活用のポイント
ヨンマルサンさんのSNS活用における最大のポイントは、発信されるコンテンツが「企業側が言いたい事」ではなく「お客様の声」をもとにして作られていることです。
「お客様の声」をもとにしているからこそ、投稿ネタの枯渇に苦しむことなくコンテンツを量産でき、既存層とSNSを通した信頼構築が実現し、それを見た潜在層からの期待醸成にもつながっている循環が起きています。
また、SNSの活用目的を認知拡大としているケースが多い中で、お客様の満足・安心を活用の大目的に置いている点も特徴的です。SNSでもリアルと同様に接客し、もてなすことで徐々に認知を高めており、ブランド認知量に課題感がある企業にも参考になるSNS運用です。