日本市場に留まらず、グローバル市場で売上を立てるには?
今回紹介する書籍は『グローバルで通用する「日本式」マーケティング 元・味の素マーケティングマネージャー直伝の仕事術』。著者は、中島広数氏です。
中島氏は、味の素で海外事業・海外営業・国内外のマーケティング業務を行ってきた人物。「Cook Do」の事業担当を務めていた際には、ロングセラーブランドのリブランディングを行ったことで事業を拡大させました。現在は同社を退社し、事業コンサルティング会社freebeeの代表取締役として独立。香港貿易発展局のアドバイザーやPR戦略立案特化のファームである本田事務所のマーケティングディレクターなどを兼任しています。
本書では、味の素在籍時に中国とタイに駐在しマーケティングを行ってきた著者が、日本企業によるグローバルマーケティングの手法や考え方を紹介しています。
近年、日本の人口減少により、あらゆる業界にて市場規模の縮小が見込まれるようになりました。このような状況を踏まえて日本市場に留まらず、グローバル市場に進出して売上を拡大したいと考えている企業の担当者は多いでしょう。
しかし、群雄割拠のグローバル市場で多くの人から支持を集めることは決して容易ではありません。では、グローバル市場でヒット商品を生み出すためには、どうしたら良いのでしょうか?
グローバルマーケティングの成功の第一歩は“日本国内でのヒット”
本書で中島氏は、日本企業がグローバルマーケティングを進める際の前提として、「日本がダメなら海外へは通用しない」と説明しています。なぜなら、海外には日本国内よりも、数倍も事業規模が大きい競合他社が多くいるためです。
近年では特に、インターネットの普及で世界中のどこからでも情報が得られるようになりました。そのため、違う国にいてもその商品が日本で流行っているかどうかは簡単に調べられるようになりました。
つまり、日本国内で多くの人から商品に関心を持ってもらえていない限り、グローバルでも関心を持ってもらうことはできないと中島氏は説明しています。
もちろん、日本国内でヒットさせるのも容易ではありません。そこで中島氏は、商品がヒットする要因を15の法則に分解。ヒットに成功している企業の事例を踏まえその成功の要因を解説しています。
このヒットの法則を活用してまず日本国内でヒットを生み出し、そのヒット商品をグローバル市場に持っていく手順が必要であると中島氏は言います。
グローバル市場進出に必要な「アンゾフの成長マトリクス」
では、国内でのヒット商品を武器にグローバルに進出したいと考えている企業はどう動くべきなのでしょうか? 本書では先述のヒットの法則だけでなく、日本企業がグローバルでヒット商品を生み出すために活用すべきフレームワークやその活用事例についても紹介しています。
たとえば、日本企業がグローバルへの進出を検討する際には「アンゾフの成長マトリクス」を参考にし、フレームワークの縦軸と横軸の両方を同時に推進することが重要であると中島氏は説明。その成功事例として、味の素のグローバルマーケティングを紹介しています。
同社では、日本市場においては、既存商品であるうまみ調味料「味の素」を皮切りに、「ほんだし」「Cook Do」「カップスープ」「冷凍食品」と次々に新規製品を既存の市場で展開(新規製品×既存市場)。
そして、日本の市場でヒットした「味の素」などの商品をタイ、フィリピン、インドネシアへ輸出し、グローバルで新たな市場を次々と開拓していったと言います(既存商品×新規市場)。
この事例からもわかるように、グローバルマーケティングを進めるためには、まず国内でヒット商品を作り、それを海外に輸出して広める。その後は、広めた商品をローカライズして、それぞれの国に普及定着。最後に各国で、新製品開発戦略を進めることでグローバルでのヒットへと導けるようになるというのです。
このように本書では、日本企業がグローバル市場でヒット商品を生み出すための手順について事例を交えながら具体的に説明しています。
海外市場への進出を検討しているものの具体的な進め方がわからない方や、海外市場での既存戦略に懸念がある方にお薦めの書籍です。