動画広告と音声広告の体験の違い
スキップボタンを押されやすい動画広告
中野:ながら聴きができる音声広告は、コンテンツの合間でも“邪魔されている”感がないように思います。YouTube広告だと、動画視聴中に流れる広告に対して、「ああ、またか」とうんざりした気持ちになりやすいように感じます。
八木:そうですね。私の息子は現在小学1年生ですが、YouTubeで広告が流れるとすぐにスキップボタンを連打しています。動画広告は視覚と聴覚の両方への訴求であるため、言葉を選ばずに言うと“ウザい”と感じられやすいということですね。広告を出稿する企業にとっても、注意して動画広告を活用しないと、消費者にネガティブな企業イメージを与えかねません。
米国の調査会社が「広告の煩わしさ」に関して調べたところ、動画メディアと音声メディアの広告体験では「押し付けがましい」と感じられる割合が、音声メディアのほうが圧倒的に低いことが示されています。
中野:広告フォーマットの媒体の特徴を押さえた消費者とのコミュニケーションが、これまで以上に求められている気がします。
八木:音声メディアに関しては、ラジオとポッドキャストでも特徴が異なります。運転中に聴かれることの多いラジオは、特定のチャンネルをかけっぱなしにしても成立するメディアです。
一方でポッドキャストは、リスナーが特定の番組を自ら選択します。自己決定し、番組を能動的に聴いているという意識があるので、広告に対してもそれほど嫌悪感を抱かないのではないでしょうか。
ポッドキャスト広告は若年層に強い
中野:当社がポッドキャスト広告に着目したのは、車に詳しくないお客様にこそ日産デイズを知っていただきたいと思ったからです。他の広告と違い、生活シーンの中で、自然に耳に入れていただけるのではという期待もありました。
またポッドキャストは若年層や女性の聴取率も高く、「近い将来、車を購入するかもしれない」という潜在層にもリーチできると考えました。
八木:当社は毎年、朝日新聞社と「ポッドキャスト国内利用実態調査」を実施しています。実際にポッドキャストユーザーの年代別比率は、15〜39歳が56.9%と高く、若年層を中心に支持されているメディアだといえます。
中野:特にSpotifyは、20~30代の利用率が高いメディアですよね。
八木:そうですね。ポッドキャストのリスナーに若年層が多いのは、Spotifyなどポッドキャストを聴くことのできるオーディオプラットフォームに若年ユーザーが多くいることが影響していると思われます。
商品の良さを想像させる、音声クリエイティブの工夫
八木:今回はポッドキャストの音声広告に出稿した形ですが、広告実施後の効果はいかがでしたか?
中野:想像以上でした。再生完了率は9割を超え、ベンチマークしている数値と比較しても良好な結果です。またリーチ単価も、他プラットフォームより2割ほど抑えられています。
さらにブランドリフト調査を行って明らかになったのが、音声広告に接触したお客様の好意度が、通常の広告に接したお客様に比べて高くなったことです。日産デイズのことを知ってもらっただけでなく、「いいな」と思ってもらえたのが非常に良かったですね。
八木:広告のクリエイティブも適切だったように感じます。お客様に伝える上で、共感してもらえるように工夫した点などはありますか?
中野:クリエイティブを制作したメンバーは、日産デイズのプロモーション全般に携わっているのですが、視覚情報なしで訴求するための方法を熟慮したそうです。
八木:音声広告はイヤホンを通じてお客様本人に語りかけられるような疑似体験を作れるという強みがあります。その一方で、当然ながら視覚情報がないため、いかに頭の中に「映像」を思い浮かべさせられるかがポイントになります。日産自動車の「ファミリー訴求編」の広告では、母子のお出かけに至るシーンが脳内でイメージできるものになっていると感じました。
中野:ありがとうございます。「ファミリー訴求編」に加え、運転する方のインサイトを表現した「お出かけ訴求編」も、お客様に共感いただける内容になっているかと思います。2種類のクリエイティブを通して、「日産デイズなら、お出かけがもっと楽しくなる」ということが伝わったのではないかと考えています。