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『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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CXマーケターの革新事例を探る(AD)

見積もり依頼数が1年で10倍以上に!Sansanが実施したプロダクトサイトの顧客理解とROI向上

 近年、BtoBビジネスにおける企業・プロダクトサイトの重要性が増している。トライベック・ブランド戦略研究所が2023年に発表した調査では、BtoBの商品・サービス購買関与者における情報収集源は「企業のWebサイト」が圧倒的一位であり、今後ますますオンライン上で顧客の心を掴み、次のアクションを生み出していくことが必要となってくる。そんな中で重要となってくるのが、プロダクトサイトにおけるCX(顧客体験)の向上だ。Sansan株式会社では、プロダクトサイト経由での成果創出のために2022年秋にCXプラットフォーム「KARTE」を導入し、ユーザー行動に応じたコミュニケーション改善を実施。その結果、導入からわずか半年でプロダクトサイト経由のリード獲得、商談、受注といった成果の創出を実現したという。同社の挑戦から、BtoB企業がCX向上に取り組む意義、具体的な進め方のヒントを得る。

「名刺管理サービス」に留まらない 挑戦し続けるSansan

MarkeZine編集部(以下、MZ):本日はSansanの取り組みを通じて、BtoB企業におけるCX最大化を探っていきます。はじめに、みなさまが現職でどのような業務やミッションを担っていらっしゃるのかお聞かせください。

北川:当社の事業から説明すると、これまで主力事業として展開してきた名刺管理サービス「Sansan」を、現在は名刺管理にとどまらず、営業やマーケティングに携わる方々の業務改善やデジタル化を支援する営業DXサービスとして提供しています。加えて、直近ではインボイス管理サービス「Bill One」や契約データベース「Contract One」といった事業も展開しています。

 そのような中で私はBill One事業部のマーケティング部 サイトグロースグループ マネジャーを務めているほか、Sansan事業部とContract One Unitのマーケティングにも携わっています。KPIとしては、商談や案件につながる質の高いリードを、いかに効率的に獲得していくかを重視して追っています。

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Sansan株式会社 Bill One事業部 マーケティング部 サイトグロースグループ マネジャー 北川 裕彬氏

小峰:私はSansan事業部マーケティング部のオンラインプロモーショングループに所属しているほか、兼務で「Bill One」と「Contract One」のマーケティングも担当しています。主にWebサイトの改善に携わっています。

佐々木:私はBill One事業部のサイトグロースグループに所属しているほか、オンラインプロモーショングループのリーダーも務めています。

 オンラインプロモーショングループは、主にリスティング広告やディスプレイ広告を活用し、効果的なリード獲得に取り組んでいます。一方、サイトグロースグループでは、プロダクトサイトの運営を担当しており、CV数増加を目指しています。最近では、月次決算に役立つ情報を掲載したBill OneのナレッジページにおけるSEO記事の制作やディレクションも行っています。

BtoBビジネスにおける、プロダクトサイトの重要性

MZ:Sansanでは2022年秋頃、CXプラットフォーム「KARTE」を導入したと伺っています。導入前に抱えられていた課題をお聞かせください。

北川:顧客理解」と「ROI向上」という主に二つの課題がありました。まず一つ目の課題は、顧客理解の文脈において、ターゲットの業務や課題感を十分に理解したうえで、当社のサービスの価値訴求として適切に言語化し、届けられる体系的な組織体制が十分に整っていませんでした。

 二つ目は、限られた予算内で高い成果を出し、ROIを向上させていくことです。組織が拡大し、より高い目標を設定される中で向き合わなければいけない課題でした。

 また、BtoBのプロダクトサイトに能動的に訪問する方々は、すでに利用検討度が高いことが多く、BtoBビジネスにおいては非常に重要なチャネルです。しかし、そういった方々に向けてサイトの改善活動を単発で繰り返していき、数字を出していく作業は地道で泥臭く、リソースも必要です。そのため、ある程度ルーティン化して繰り返していけば一定の成果が見込めるという「型」を作りたいと感じていました。

 このような課題の解決につながると考えたのが「KARTE」でした。

小峰:実はKARTEの導入に至ったのは、私が入社する前の採用面接時に「KARTEを活用したい」と話したのがきっかけでした。Sansanが抱えている課題を聞き、前職の経験から、KARTEなら成果を出せると考えたのです。

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Sansan株式会社 Sansan事業部 マーケティング部 オンラインプロモーショングループ 小峰 かえで氏

北川:小峰の提案を受けて、確かに当社の課題感にKARTEはマッチするなと思いました。とはいえ懸念もありました。というのも、以前他のツールを導入した際、リソースの問題などで定量的な成果をなかなか出せず、解約した経験があったんです。

 そのため、今回は投資判断をより慎重に行い、まずはSansan事業部から導入することにしました。短期間で「Sansan」のサイトでの運用と成果を確認するテスト期間を設け、その上で将来的には他のサイトにも展開していきたいというビジョンを上司に提示しました。実際導入後に「Sansan」で一定の成果を出せたため、「Bill One」「Contract One」と横展開を進めていきました

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KARTEで導線を増やしCV数が約10倍に

MZ:KARTEを活用した具体的な施策や定量成果についてお聞かせください。

小峰:本当に様々な施策を実施したのですが、わかりやすい例として見積もり依頼フォームの改善についてご紹介します。KARTE導入前は、ページ内に埋もれていた小さなテキストリンクだったものを、KARTEを使ってポップアップでアピールしたり、ファーストビューのCTAとして大きく配置したりしました。その結果、導線改善後から該当フォームでのCV数が伸び始め、1年間で約10倍増加となりました。

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「見積もり依頼フォーム」のCTA・ポップアップ例(クリックすると拡大します)

佐々木:離脱対策にも活用しています。LPに来訪しCVに至るユーザーはわずか数%で、多くのユーザーはそのままブラウザを閉じて立ち去ってしまいます。サービス資料ダウンロードフォームから離脱しようとしているユーザーに対して、導入事例集のコンテンツへ誘導した施策は効果的でした。検索キーワード別にコミュニケーションを変えたり、ファーストビューのキャッチコピーを調整したりすることで、ユーザーにより「自分ごと」として捉えてもらえるようになったのだと考えています。外部要因も多くありますが、CVRだけで見ると10%以上の改善が見られました。

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離脱対策のポップアップ例(クリックすると拡大します)

小峰:また、A/Bテストでサイト改善をする際や、サイト上のコンテンツを直接編集するときは「KARTE Blocks」を活用しています。

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KARTE Blocksを活用した「Bill One」サービスサイトのA/Bテスト例。ステートメントを非表示にしたパターンAと、メリット訴求セクションにステートメントの要素も追加したパターンBでA/Bテストを行い、パターンAのCVRが、オリジナルと比較して117%、パターンBと比較して109%向上する結果となった。
(クリックすると拡大します)

CXの改善で、プロダクトサイトのROIが向上

MZ:KARTE導入前の課題として「顧客理解」も挙げられていました。顧客理解におけるKARTEの活用方法をお聞かせください。

小峰:KARTEのセグメント機能を使用して、閲覧ページごとにユーザーを細かくセグメント分けして見ています。たとえば「機能ページ」を見ているユーザーと見ていないユーザーなど。そうすると、「ここのセグメントはユーザーボリュームは多いがCVが少ない=サイト内にユーザーがつまづくポイントがあるのでは?」というような仮説がたち、コンテンツの出しわけなど改善が行えるようになります。

佐々木:また、チーム全体で朝会の時間を利用してサイト内のユーザー行動を分析し、気づいたことを共有しながら改善アイデアを出し合っています。単に施策を実施するだけでなく、その施策が適切に展開されているか、ユーザー体験の観点から適切かどうかを常に考慮しながら施策を進めています。

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Sansan株式会社 Bill One事業部 マーケティング部 サイトグロースグループ 佐々木 良輔氏

北川:組織的購買が前提としてあるBtoBビジネスであっても、サイトに訪問される方は一企業に属する1人の社員なので、BtoCと同様、ペルソナやカスタマージャーニーのような概念をいかに解像度高く捉えられるかが大切です。CVに至るまでの行動数は意外と少ないので、サイトに来訪したその刹那に「問い合わせたい」「ダウンロードしたい」という気持ちを後押しするコミュニケーションをどう取るべきかをしっかりと考え、仮説を立て、検証していくことが重要だと考えています。

 顧客接点の多様化が進む中、プロダクトサイトは情報収集や企業理解のための場として重要な役割を担っています。KARTEを活用し始めてからは、Web広告に比べてもROIが良く、プロダクトサイトは費用対効果の高いチャネルに成長しました

MZ:そのほか、KARTEの導入・活用によって定性面で気づきを得られたことや、チーム内の意識やアウトプットに変化などがあれば教えてください。

北川:これまで感覚や感性に頼って決定していたことを定量化し、数値に基づいて判断できるようになったことです。マーケターだけでなく、デザイナーやエンジニアなど他のメンバーたちに対しても定量的なフィードバックを提供することで、同じ目線で取り組みを進められるようになったと感じています。

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「ツールの利用が定着しない!」を解決した“イエローカード”システム

MZ:Sansanは、今年春にKARTEによる顧客体験向上や事業成長が認められ、KARTE STAR 2024(※)で「GOLD STAR」を受賞されました。受賞によって変化はありましたか?

小峰:メンバーのモチベーションが向上したと感じます。KARTEを活用した成功事例を見て、他の部門でも同様の手法を取り入れられないか、あるいは既存の手法をさらに改善できないかという意識が高まりました。

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KARTE STAR 2024 授賞式の様子
(※)KARTE STAR……顧客の体験向上(CX)、デジタルによる事業変革(DX)、従業員およびチーム変革(EX)に取り組むKARTE活用企業(KARTE Friends)のチャレンジを表彰する年に一度のアワード

MZ:評価されたポイントのひとつに、「Sansan」プロダクトサイトでの成功を「Bill One」「Contract One」など他のプロダクトサイトへ横展開し、事業部横断でナレッジを蓄積した点が挙げられています。横展開をうまく実現できたポイントはどこにあると考えますか。

小峰:基本的にKARTEに関する定例会議は事業部横断で実施しています。たとえば、ある事業部で特定の施策を実施していることが共有されると、他の事業部が「それは参考になる」「私たちの部署でも同様のことができそうだ」と考え、すぐに横展開できる状態になっています。

北川:ツール導入でよく見られる失敗例として、導入したものの、それを運用するための仕組みが適切に構築されないまま属人化してしまうことや、多くの人に活用されるツールとして定着しないまま放置されてしまうことがあると思います。そのような中でうまく体制を整えられたのは、小峰が率先して皆がアイデアを出せる場作りをしたことが大きいと思います。

 振り返りもきちんと行い、実施した施策をスライドなどにまとめ、どの策がどのような結果をもたらしたのかを、メンバー間で共有できるような仕組みを構築しました。またイエローカードシステムを導入し、互いに施策の進捗状況がわかるようにしています。

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小峰さん発案の「イエローカードシステム」。前回会議から進捗がないとイエローカードが提示される。可視化されることで、チームメンバー全員が自発的に行動を起こすようになったという。
北川さん「小峰は上司である私にもばんばんイエローカードを提示してきます…」

顧客の成功を起点にしたマーケティング活動を

MZ:最後に、今後の展望についてお聞かせください。

小峰:KARTE導入直後と比較すると、現在はKARTE経由で毎月一定数のCVを獲得しており、チャネルとしてのポジションを確立することができました。そのため次は、量だけでなく質の向上にも向き合っていきたいです。CV後の要因分析まで含めて、量と質をうまく両立できるような施策を今後実施していきたいと思います。

佐々木:Bill One観点で話すと、Bill Oneは請求書受領だけではなく、経費精算や請求書発行など新たな領域へと事業拡大を続けています。新規事業のマーケティングにおいて、Webサイトを訪れたユーザーに対して、どのようなコミュニケーションを取るべきか、何が正解なのかを探る際、KARTEは非常に有用であり、さらに活用していきたいと考えています。そしてまた来年も「GOLD STAR」を取りたいですね。

北川:私からは、まずプロダクトごとの今後の展望をお話しします。「Sansan」はこれまで当社の屋台骨として会社を大きく支えてきた事業です。しかし、冒頭にお伝えした通り、最近では名刺管理という位置づけから営業DXサービスへとコンセプトを変更し、より広いマーケットに対してサービスの価値を届けようとしています。今まで接点を持てていなかったお客様に対して、当社の価値をしっかりと伝え、サービスの導入を検討していただけるようマーケットを拡大していくことが、現在の課題です。

 「Bill One」は請求書受領だけでなく、請求書発行や経費精算という新しい第2、第3の矢を打ち込み始めたところです。マーケティングとしては、これらをいかに垂直立ち上げさせるかが大きなテーマとなっています。

 そして「Contract One」は、「Sansan」と「Bill One」に次ぐ三つ目のプロダクトとして、さらなる飛躍を目指しています。組織規模はまだ小さいですが、その中でも効率的で生産性の高いマーケティング活動を通じて事業貢献できることを目指しています。

 これら三つの事業に共通して、マーケティング部としては顧客を起点にしっかりとマーケティング活動が行えるような型を作っていきたいと考えています。その中で、顧客理解や顧客体験にしっかりと向き合い、そこからアウトプットしていくためのスキルが必須のコンピテンシーになっていくと考えています。そういった能力の開発も含めて、部全体でしっかりと取り組み、組織を強化していきたいと思っています。

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社プレイド

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2024/10/30 10:00 https://markezine.jp/article/detail/46934