今後、企業やマーケターに求められることは
高田氏は、これから企業やマーケターに求められるのは「市場読解力」だと考える。世界情勢の変化や物価高など、食品メーカーを取り巻く環境は非常に厳しいが、生活者が何を見てどう行動をしているのか、企業自身が掘り下げねばならない。
好みも行動も一層多様化する中、企業として売り上げと利益を追求しなければならない状況で、「どこにどんな人々がいて、その規模はどのくらいで、この後どうなっていくのか」まで見ていかないと、事業として行き詰まってしまうだろう。
また内濱氏は、「今の市場を見た時、依然としてひとり客向けには価格を抑えた提案が多い」と指摘。ひとり客向けであればエコノミー、誰かと過ごすなら少しお金がかかるプレミアム市場を作るケースが少なくない中、ひとり客を満足させるプレミアム体験は足りていないと考えられる。
ひとりだからこそ空間や接客の贅沢さに気づくことができ、「ひとり高級ホテル」や既存グループ客へのひとり利用シーンの提案など、「ひとりプレミアム市場」は開発の余地があるといえるだろう。
さらに、「ひとりに望んでもなれないハードルへのケアという視点もある」と内濱氏。子どもがいる家庭など様々な事情を抱えていたり、情報収集から準備までひとりで行うのが大変と感じたり、ひとり行動には様々なハードルが立ちはだかる。しかし、ひとりになりたい欲求は確実に広く存在する。そんな人々が後ろめたさを感じないよう、ケアを行うという考え方を企業が持つことも必要だ。
「たとえば、ひとりになる大義名分を作るアイデアが挙げられます。農家のボランティアをするついでや、リスキリングとしてのひとり旅など、行動の大義名分を作ることでチャレンジしやすくなるのではないでしょうか」(内濱氏)
「ひとりプレミアム市場」はチャンス
「今、ひとりをポジティブに捉えている人が非常に多く、企業はこの傾向をもっと積極的武器として活かせるのではないか」と高田氏。ただし世の中は変化を続けていることも鑑み、トレンドの変遷を慎重に見ていく考えを示した。
実際に、コロナ禍が緩んだ1~2年前のバレンタインデーでは金額を気にせず買う人が多い印象だったが、2024年のバレンタインは財布の紐が少し固いなど、新たな変化も徐々に出始めている。「今後も『好きの深掘り消費』のトレンドを踏まえつつも、バランスを見ながら施策を進めていきたい」と高田氏は加えた。
内濱氏は、「ひとりプレミアムの市場は企業にとってチャンス」と強調。調査からも、特に日本人は人に合わせる傾向が強いことがわかるが、その実ひとり欲求も持っている様子がうかがえる。
「今後、さらに自分の欲求を深掘りしていく生活者が増えることで、ひとり市場がもっと盛り上がっていくと考えられます」と内濱氏は展望を述べ、セッションを締めくくった。
