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『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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MarkeZine Day 2024 Autumn(AD)

行き詰りの突破口となる可能性大!LIFULLの事業成長に繋がった「プロダクトアナリティクス」とは

 開発したプロダクトを短期間でグロースさせるために、必要なことは何だろうか。プロダクトが備えるべき機能や使いやすさはもちろんだが、圧倒的なユーザビリティや効果的なマーケティングがあったとしても、即グロースできるとは限らない。では、突破口はどこにあるのか? こんな悩みを持つマーケターやプロダクトマネージャーに向け、MarkeZine Day 2024 Autumnで行われた講演が「実施施策での獲得CVが大幅増! LIFULLが取り組んだプロダクトアナリティクスとは?」だ。セッションでは、プロダクトアナリティクスツール「Amplitude」を提供するDearOneの小島健一氏が、LIFULLの大久保慎氏を迎え、同社のプロダクトアナリティクスの成功ポイントについて深掘りした。

顧客獲得、収益化、継続利用の要「プロダクトアナリティクス」とは

 どんなに優れたプロダクトも、リリースして終わりではない。むしろリリースしてからがスタートで、ユーザーの利用傾向やニーズに基づいた機能の改善・改修、ユーザビリティのブラッシュアップが欠かせない。ビジネススピードが上がり続ける現代においては「停滞=退化」であり、常に進化を続ける必要がある。

 そこで指摘されているのが、プロダクトアナリティクスの重要性だ。

 プロダクトアナリティクスとは、サービスや製品を成長させる目的で実施する分析のこと。事業を成長させるには顧客を獲得しなくてはならず、またその顧客から収益をあげるための購入フローを築かなくてはならない。そして、継続して利用してもらえるような施策も展開する必要がある。

 この「獲得」「収益化」「継続利用」の3つの軸で、ユーザー行動全体を分析対象とするのがプロダクトアナリティクスの特徴である。

 プロダクトアナリティクスは、元々GAFAのような巨大企業が自社プロダクトを短期間でグロースさせるための社内ツールから派生したもの。プロダクトアナリティクスツール「Amplitude」はその社内ツールを汎用化したもので、分析のベストプラクティスが詰め込まれている

従来のアナリティクスとの違い

 コンバージョンを上げようとデジタルマーケティング施策を展開するものの、成果やグロースにはなかなか結びつかない……これは、多くのマーケターが直面している課題だろう。国内最大級の不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S」を展開するLIFULLも、2021年前後はそんな状況に陥っていたという。

 そのような中、同社が取り組んだのが、プロダクトマネジメントに基づくプロダクトアナリティクスだ。LIFULLの大久保氏は、プロダクトアナリティクスと従来のアナリティクスの違いについて次のように語る。

株式会社LIFULL LIFULL HOME`S事業本部 Chief Product Officer プロダクトプランニング部 部長 分譲マンション事業CEO 大久保槙氏
株式会社LIFULL LIFULL HOME`S事業本部 Chief Product Officer 
プロダクトプランニング部 部長 分譲マンション事業CEO 大久保慎氏

 「分析ツールは世の中に多数ありますが、当社は元々Google Analytics(GA)を使っていました。ただ、GAはアクセス解析に特化しているため、プロダクト内でのユーザーの行動を高い解像度で分析するには難しいところがあります。その点、Amplitudeはプロダクトアナリティクスに特化し、プロダクト内のユーザー行動を高い解像度で捉えることができます。プロダクト改善のアプローチは様々ですが、プロダクトアナリティクスは定量的な改善を強力に下支えしてくれると認識しています」(大久保氏)

「LIFULL HOME'S」がプロダクトアナリティクスの導入を決断した背景

 ここで、LIFULLのプロダクトアナリティクスの詳細に入る。LIFULLはプロダクトアナリティクスの導入を決めた2021年当時、どのような課題に直面していたのか?

 大久保氏がまず挙げたのは「自社独自にカスタマイズされたGAによる分析の難しさ」だ。LIFULLが当時使用していたのは、独自にカスタマイズされたGAだったため、一般的なGAの使い方をマスターしている社員でも分析が難しかった。それゆえ、学習コストが大きく、属人性も高くなっていたという。

 結果、「ユーザー理解の不足」という本質的な問題に陥ってしまう。プロダクトをどのように改善していけばよいか、ユーザーが何を望んでいるのか、当時は十分に把握できていなかった。

 そんな中で出合ったのが、プロダクトアナリティクスツールのAmplitudeだ。Amplitudeの紹介動画や操作解説動画を見て、実際にデモを触わってみると、その使いやすさに驚いたという。「ユーザーをクラスタリングして、クラスターごとにコンバージョンと相関関係が高い行動を一覧化する」といった高度な分析も、わずか数クリックで完了し可視化までできる。

 「施策を回していると、この行動があるからコンバージョンしたのか、元々コンバージョン率が高いユーザーだからこの行動を取ったのかなど、行動とコンバージョンの因果関係がわからなくなるケースがありますが、Amplitudeは時系列でその関係性を可視化できます。デモを見て、プロダクトアナリティクスを導入するしかないと思いました」と大久保氏は振り返る。

新たな手法・ツールを導入する時にぶつかる壁

 プロダクトの成長が頭打ちとなっていることを受け、プロダクトアナリティクスの必要性を実感したLIFULLの大久保氏。とはいえ、新しい手法やツールを導入してすぐ現場に展開できるほど、ことは単純ではない。

 その理由について、DearOneの小島氏は「これまでの業務習慣から受ける“引力”に負けてしまうからではないでしょうか」と見解を示す。

株式会社DearOne グロースマーケティング部 アナリティクスユニット シニアコンサルタント 小島健一氏
株式会社DearOne グロースマーケティング部 アナリティクスユニット シニアコンサルタント 小島健一氏

 既存のツールや業務習慣に馴染みすぎていると、そこからの引力を早々に断ち切るのがなかなか難しい。そのような状況が長引き、「ツール導入の目的が不明瞭になってしまう」という問題は、往々にして起こってしまうものだ。

 LIFULLもまさにこの状態に陥った。歴史の浅い小規模チームであれば、新しいやり方を導入してもすんなり受け入れられる柔軟さがあるが、「これまで十何年も積み上げてきたプロダクト開発の方法があり、しきたりもある比較的大きなチームで、プロダクトアナリティクスという新しい手法を取り入れるのには、やはり困難が伴いました」と大久保氏も認める。

 ただ同社の場合、「これまでのやり方を続けていても成長できない」という危機感を経営から現場まで共有できていたことが大きかった。プロダクトアナリティクスの定着に向けて、社内カルチャーの変革を強力に進めていったという。具体的には、社内・社外での知見共有活動を推進することでプロダクトアナリティクスの定着を目指した

 社内での活動については、勉強会・知見共有を推進。DearOne小島氏をはじめとする外部パートナーの協力を得て、定期的に勉強会を実施すると共に、社内のプロダクトチーム間での知見共有会も開催した。また、その中から生まれた社内の成功施策をインターナルで発信するべくニュースレターを作成し、成果だけでなく課題発見の過程も公開していったという。

導入から1年半で転換期が!プロダクトアナリティクスが定着したタイミング

 講演で大久保氏は、Amplitude導入によるプロダクトアナリティクスの立ち上がりから定着までのタイムラインも共有した。

 まず、ツール導入から1年間は「混乱~試行錯誤期」。最適なツールの使い方がわからず、効果があまり得られなかった。

 続いて、導入して1年から1年半の期間は「転換期」だ。試行錯誤期間を経て「このままだとツールへのコストが出ていくだけ」という現実問題がのしかかり、このタイミングから積極的に外部の知見を取りに行く方向にチェンジした。ポイントは「自分たちだけで考えず、外にある知見を吸収すること」を意識した点。「よくわからないまま自分たちの頭だけで考えていても状況は変わらない」と思い、外部の専門家に支援を頼むことにしたそうだ。

 この知見共有活動中に、一部のチームの取り組みからわかりやすい成功事例が生まれたことが転機になった。そこから一気に「定着・発展期」に移行していく。

 「プロダクトAチームとBチームは同じやり方ができるのではないか」「こういう分析はできないのか」などチーム間での繋がりが自然発生し、組織全体で学習速度が一気に上がっていった。

 「大変ではありましたが、転換期の最中で1つ成功事例が生まれたことは非常に大きかったです。それによって、先ほど話に出た『従来の業務習慣の引力』を跳ね返すエビデンスができたと感じています。新しいやり方を定着させるには、成功事例をいつ作るかが大切なポイントで、そこに注力すべきだと思います」(大久保氏)

分析工数は10分の1に低下、創出CV数は10倍に!

 プロダクトアナリティクスの導入後、LIFULLのプロダクト事業にどのような変化があったのだろうか。大きな成果で言うと、「分析工数を従来の10分の1まで減らすことができた」と大久保氏は話す。

 その上で、より具体的にプロダクトチームの変化を見ると「施策成功率」「市場学習回数」「創出CV数」の3つの指標で大きな成果が得られたそうだ。

 まず施策成功率については、定量理解が進んだことで従来の2.8倍と大きく向上。それまでは「あまり成果が出ない」という認識が広がっていたが、Amplitude導入により、他チームも含めて施策の成功率を実感できるようになった

 そして市場学習回数も、従来の1.5倍となった。市場学習とは「市場にリリースした実験の回数」のことで、目標達成のための仮説立案・検証実施を意味する。プロダクトアナリティクスで分析を繰り返すことで、仮説の立案から施策の設計、検証がスムーズになり、施策実施の回数が大きく伸びたそうだ。こうした成果を踏まえ、創出CV数も10倍と大きく向上した。

次に目指すのは「市場学習回数の最大化」

 毎日1%の成長を続けていくと、1年後には35.8倍になるという「1%の法則」がある。この法則によれば、逆に毎日1%ずつ衰退していくと、1年後には0.03になってしまうそうだ。LIFULLはこの概念を突き詰め、プロダクト事業のさらなる成長を目指し市場学習回数の向上に取り組んでいくと大久保氏は話す。

 この市場学習の最大化に向けて必要なのは、各チームでPDCAをしっかり回していくこと。そのためのフレームワークも組んでいるが、特に注力していくのは成功施策を組織全体に広げる「横展開」と、その成功事例のアウトカムを発信する「発信・浸透」だという。

 大久保氏は「発信・浸透を重視する企業はあまり多くないと思いますが、1つのチームが得た知見を共有することはとても重要だと考えています。成功・失敗も含めて得た知見が社内で共有されなければ、組織全体で見ると機会損失や非効率を生む可能性があるからです。あえて発信というプロセスを組み込むことで、チーム全体の成長速度が上がると考えています」と説明する。

 DearOneの小島氏も、「発信・浸透」はプロダクトグロースにおいて重要なポイントになると述べ、「グロースを目指すのならば、プロダクトアナリティクスの考え方と、その導入に伴うカルチャー変革の2本立てで取り組むことを考えてみてください」と話し、セッションを結んだ。

NTTドコモグループDearOneの提供するプロフェッショナルサービス

最新鋭のMarTechツールの目利きから、それらツールを活用したグロースマーケティング戦略全体設計、ユーザー行動軸での分析/示唆出し、カスタマーエンゲージメントツールによるOne to Oneマーケティング施策実行支援など、クライアントの事業成長にコミットいたします。本記事で「グロースマーケティング支援」に興味を持たれた方は、公式サイトからお問い合わせください。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社DearOne

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2024/10/28 12:00 https://markezine.jp/article/detail/47026