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【特集】進むAI活用、その影響とは?

生成AI活用に驚きがなくなった今、企業が意識すべきこと

価値の移動が起こっても、軸はユーザーインサイトにある

──企業による生成AIの活用は、顧客体験にも変化を与えると思います。どのような変化が起きると考えますか?

 顧客体験は、パーソナライズを含めて、どんどん統合されてシームレスになっていくと考えます。

 たとえばスーパーで買い物をしている際、献立はどうしようかと冷蔵庫の中身を確認したくなりますよね。現在、冷蔵庫の中をスマホで確認できるサービスや、材料を入力するとレシピを提案してくれるサービスもあります。これらが完全に統合されると、午前中に夕食の献立を考えるタイミングで、冷蔵庫の中身の画像から自動的にレシピを考え、いくつかのパターンを提案してもらえ、テキストデータや画像付きのレシピを得られるようになるかもしれません。

 日常生活の中でユーザーが特別な操作をしなくても、自分に合わせた便利な提案が自動的に提供されるようになっていくのではないでしょうか。

AI活用に欠かせないのは顧客理解

 ──一人ひとりの顧客にとって最適なサービスを自動で提供できるようになるとき、企業が注意すべきポイントをお聞かせください。

 本来の価値がずれる可能性を意識することです。イラスト投稿の例で説明します。これまでは、一枚のイラストを描くのに時間と労力がかかり、技術を持った人が貴重でした。だからこそ投稿されるイラスト自体に大きな価値があった。しかし、画像生成AIの登場により、短時間で多くのイラストを作れるようになりました。

 ここで気をつけたいのは、単純にたくさんのイラストが公開されればユーザーが嬉しいわけではないということです。一枚一枚の価値は相対的に下がるほか、スパムのように感じられ、まったく反響を得られないといった状況に陥りかねません。そうなると今度は、投稿者ではなく閲覧者のほうが貴重になってくるかもしれません。目利きのできる閲覧者がいることのほうが中心価値になってくる。

 生成AIの普及にともなって、自社サービスの何が価値になるのかを改めて考える必要があるでしょう。

──価値という観点では顧客の一次対応にチャットボットを起用することも、接客の価値や差別化が消える可能性を感じました。

 そうですね。24時間365日、かなり精度の高い対応をしてくれる状態が当たり前になってしまうと、これまで対応の丁寧さを売りにしていたところの価値がなくなってしまう可能性があります。チャットボットのLLMのほうが人間よりも精度が高く、人間のほうが精度が低いという状況になりかねません。

 生成AIの導入によって変化する価値の所在を正確に把握し、それに応じた戦略を立てることが重要になってくるでしょう。そのような中で欠かせないのは、やはり顧客理解やユーザーインサイトです。これらを考慮せずにすべて自動的に行ってしまうと、スパムになってしまったり、的外れな提案をしてしまったりすることもあります。

 生成AIを効果的に活用するためには、単に技術を導入するだけでなく、それを使用するユーザーの特性や需要を深く理解することが不可欠だと考えています。

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/12/04 15:15 https://markezine.jp/article/detail/47075

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