※本記事は、2024年11月刊行の『MarkeZine』(雑誌)107号に掲載したものです
【特集】進むAI活用、その影響とは?
─ 生成AIがクリエイティブとデータをつなぎ、顧客体験を変えていく。アドビに聞くビジョンと現在地
─ 最初から完璧を目指さない ハイテクなイメージをあえて遠ざけた東急のAIコンシェルジュ(本記事)
PRで絵になる“素材”が必要だった
──「TsugiTsugi」がどのようなサービスか教えてください。
全国260以上(2024年10月時点)の宿泊施設から、その日の都合や気分に合わせて好きな場所を選び、定額で宿泊できるサービスです。宿泊数に応じて料金が異なり、最小2泊から最大30泊までプランを用意しています。
──どのようなユーザーが利用していますか?
年齢で言うと35〜44歳の層が最も厚く、全ユーザーの8割以上を就労者が占めています。平日の宿泊に特化していることもあってか、宿泊する直前に予約いただくケースが非常に多いです。「来週の火曜日なら有給が取れそうだな」「この日なら出社しなくてもリモートで働けそうだな」と思えたタイミングで予約に至っているのかもしれません。自身の仕事のスケジュールや勤務形態をある程度コントロールできる方が、上手に利用してくださっているようです。
──2023年5月にTsugiTsugiへ実装された「旅先こんしぇるじゅ」機能の紹介もお願いします。
ChatGPTの技術を活用したAIコンシェルジュ機能です。ユーザーはキャラクターとの会話を通じて、旅先や宿泊施設の提案を受けられます。キャラクターは全4種で、見た目や性格、言葉遣い、得意領域が異なります。温泉に詳しい「おつぎ山」や、子連れ旅行のおすすめ情報に詳しい「小次郎」など、浮世絵イラストレーターのNAGAさんにキャラクターをデザインしてもらいました。
──なぜこの機能の開発に至ったのですか?
第一の理由は、ユーザーの離脱防止にあります。TsugiTsugiに限らず、宿泊予約サービスで離脱可能性が最も高まる瞬間は、予約手配のタイミングなのです。「旅行しよう」と思い立つ方は数多くいるものの、OTA(※)のサイトにアクセスして目的地を決める段階で、まず大半の方が悩みます。それなりの時間をかけて目的地を伊豆に決めても、伊豆のどこに行くかでまた悩みが生じますよね。エリアを絞った後は宿泊先のホテル選びやプラン選びで悩むうち、面倒くさくなって離脱してしまうのです。TsugiTsugiでは提携施設が毎月増えていることもあり、ユーザーの選択をサポートする目的でこの機能を開発しました。
※Online Travel Agencyの略称。インターネット上でのみ取引を行う旅行代理店を指す
第二の理由は、話題化にあります。TsugiTsugiの正式事業化を報道公開するにあたって、メディア関係者に足を運んでもらうための“素材”が必要でした。ちょうどその頃、ChatGPTが国内で話題になりつつあったため「AIを使ってメディア関係者が取り上げやすい素材をつくろう」と考えたのです。