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【特集】進むAI活用、その影響とは?

組織の生成AI活用を最大化するためには?リクルートの生成AIプロジェクトが実践する4つの施策

未経験者〜エバンジェリストまで、レベル別に実施した4つの施策

──「生成AIの活用人数最大化」が目下の目標とのことですが、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか?

夏目:主に4つの柱で生成AIの活用を推進しています。

 1つ目は「生成AI試行者の増加」。そもそも生成AIを使ったことがない人に対して、まずは試してもらうことを目的に、メルマガ配信や勉強会を実施しています。初心者向けアプローチのコツは、私たち側が「頑張りすぎないこと」です。プロダクトデザイン室AI活用プロジェクトは20名程度の小規模組織です。時間も人員も限られるため、最低限の人員で効果を出すべく、メルマガなどのパッケージ化可能な施策はパッケージを用意して提供しています。

株式会社リクルート プロダクト統括本部 SaaS領域プロダクトデザインユニット Airプロダクトデザイン1グループ 夏目大地(なつめ・だいち)氏 2022年にリクルートに新卒入社。ECサービスの「ポンパレモール」にてUIUX改善を経験後、現在は「Airレジ」や「Airペイ」の新規事業企画に従事。また、リクルートのプロダクトデザイン室向けに生成AIの社内活用促進を推進するチームリーダーも兼任。
株式会社リクルート プロダクト統括本部
SaaS領域プロダクトデザインユニット Airプロダクトデザイン1グループ
夏目大地(なつめ・だいち)氏

2022年にリクルートに新卒入社。ECサービスの「ポンパレモール」にてUIUX改善を経験後、現在は「Airレジ」や「Airペイ」の新規事業企画に従事。また、リクルートのプロダクトデザイン室向けに生成AIの社内活用促進を推進するチームリーダーも兼任。

工藤:勉強会を実施する際のポイントは「組織長との事前の期待値調整」です。未経験者への活用推進にあたって、事前に組織長との期待値の調整を行うことで、生成AIに関する勉強会や説明会への参加を促すことが可能となるでしょう。また、信頼性を高めるために、実績や肩書きを持つ有識者を招くことも効果的です。

株式会社リクルート プロダクト統括本部 プロダクトデザイン・マーケティング統括室 プロダクトデザイン室 オペレーションデザインユニット 工藤照久(くどう・てるひさ)氏 2015年にリクルートコミュニケーションズ(現リクルート)に中途入社。社内の業務BPRやDX、AIの活用を推進。昨今では生成AIを活用できる人材育成・リスキリング推進に従事。
株式会社リクルート プロダクト統括本部
プロダクトデザイン・マーケティング統括室 プロダクトデザイン室
オペレーションデザインユニット 工藤照久(くどう・てるひさ)氏

2015年にリクルートコミュニケーションズ(現リクルート)に中途入社。社内の業務BPRやDX、AIの活用を推進。昨今では生成AIを活用できる人材育成・リスキリング推進に従事。

夏目:2つ目は「試行者から活用者への昇華」。生成AIを使ったことはあるものの、日常的に業務利用していない人向けのアプローチとして、プロンプト集や事例といったコンテンツを用意しています。意識しているのは、実務にすぐ活用できるプロンプトや事例にすること。たとえば、「画面作成」「競合分析」「施策の案出し」など、PdMの作業の一部を代替するようなプロンプトを作り、コピー&ペーストですぐ使えるように提供しています。

 3つ目は「組織長への周知」。1つ目、2つ目は個人向けでしたが、こちらは組織向けです。生成AIを組織で活用するための周知活動を、各組織長へ行っています。意識しているのは、あえて「利用しない場合のデメリット」を伝えること。生成AIのメリットばかりを伝えるのではなく、「活用しなければ想定外の業務影響が出る」といった趣旨も周知し、これからのビジネスにおける生成AIの必要性を訴えています。

 4つ目は「伴走型支援」。個人の生産性向上にベクトルが向いている1つ目〜3つ目の施策とは毛色が異なり、具体的な案件で生成AIを活用し、着実に成果を出していくための施策です。伴走する案件は、高いROI(投資利益率)が見込めるか担当者のスキルや熱意があるか業務フローが可視化されているかなどをチェックした上で選定しています。

工藤:「伴走型支援」は、案件の成果を出すのはもちろんのこと、「各組織で生成AIのエバンジェリスト(生成AIの活用ノウハウ・ナレッジを広めていく人材)を育成すること」も目的としています。エバンジェリスト候補者には、2〜3ヵ月の案件伴走によって具体的な成果を上げながら、生成AIの知識を身に付けてもらいます。

 エバンジェリストは伴走終了後も、組織の中で生成AIの活用を推進する役割を担います。プロダクトデザイン室AI活用プロジェクトのリソースは限られるため、各組織でエバンジェリストを育成することによって、社内で生成AIの活用を推進する仲間を増やし、成果を上げながら横断的にスケールしていきたいと考えています。

──業務の生産性向上から、案件の成果最大化まであらゆる場面で生成AIを活用し始めているリクルートですが、具体的な事例について詳しく教えてください。

工藤:たとえば記事の制作部門の案件にて、「校正」「校閲」といった作業を一部生成AIに代替することで、業務効率アップや自動化を実現できているものはありますね。また、お客様から頂いた商品・サービスへのフィードバックをAIに読ませて、分析・分類してプロダクト改善に活かしている案件もあります。

 これらはほんの一例ですが、これまで人間がやっていた業務の一部を生成AIに代替することで、生産性やプロセスは大きく変わりました。生成AIでビジネスを効率化・高品質化させていくことをゴールに、これからも取り組みを進めていきます。

 ただし、生成AIによる業務代替を進める際、最終的な成果の責任は人間が負うべきだと考えています。そのため、業務がどんどん生成AIに代替されても、最終工程の品質チェックは人間が行うようにプロセスを設計しています。逆に言えば、案出し、肉付け、最終チェック前の誤字脱字の確認など代替可能なプロセスは積極的に生成AIを活用していくべきだと思います。どんなに生成AIが発展しても、「意思決定」「最終判断」「責任を持つ」といった業務は人間が担当するしかありません。あくまで生成AIはそのゴールに向けた「副操縦士」として、それぞれの業務を役割分担していくイメージです。

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生成AIは「正解のない領域」。地道な一歩を積み重ねて

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この記事の著者

安光 あずみ(ヤスミツ アズミ)

Web広告代理店で7年間、営業や広告ディレクターを経験し、タイアップ広告の企画やLP・バナー制作等に携わる。2024年に独立し、フリーライターへ転身。企業へのインタビュー記事から、体験レポート、SEO記事まで幅広く執筆。「ぼっちのazumiさん」名義でもnoteなどで発信中。ひとり旅が趣味。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/28 09:30 https://markezine.jp/article/detail/47199

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