企業やファンとのコラボを活発化
――具体的に、どのような戦略をとるご予定ですか?
今年取り組んできたヤッホーらしい企画は、数値面を比較してみても好評であることがわかってきています。一方で、SNSのアルゴリズム変化により、いくらエンゲージメントが高くても、限られたファンにしか届かなくなってきている現状もあります。
そこで2025年からは、「ヤッホーらしさ」を軸としながらも、より多くの方に届くような施策を展開していきたいと考えています。クラフトビールを飲むシーンの提案や、他社・ファンの方との共創など、新しい取り組みにも挑戦していく予定です。
既に取り組みは始まっていて、たとえば、他社とのコラボレーションを積極的に行っています。それぞれのブランドのファンの方に、コラボ先企業を知っていただけるメリットがあります。最近ではエスビー食品さんと一緒にスパイスカレーのレシピを開発し、スパイスセットが当たるキャンペーンを実施しました。強い苦みが特徴の「インドの青鬼」というクラフトビールを、スパイスカレーと一緒に楽しんでいただいているUGCがたくさんあることから発想した施策です。
また、クラフトビールとキャンプのUGCが多いことから、ソロキャンプを楽しむファンフルエンサーの方に動画を制作していただくなど、ファンの方との共創にも力を入れています。このように、私たちに共感してくれる企業さんやファンの方と共創し、まだ見ぬファン候補の方たちにも届くような施策を増やしていきたいと考えています
――これまでSNSの戦略は、どのように変化してきたのでしょうか?
先々のありたい姿があり、そこに向けて戦略を少しずつ変えているイメージです。私が入社した5年ほど前は、SNSは会社からのお知らせを調整・発信する役割が強かったのですが、ファンの方により好きになってもらうためには、単なる告知だけでは不十分だと考え、様々な方法を模索してきました。
――SNSはプラットフォーム側の変更も大きいかと思います。その点はいかがお考えですか?
SNSは毎年、下手すると数か月単位で大きく状況が変わるので中長期の戦略を立てるのはなかなか難しいですね。今年は特に、アルゴリズムの変化を実感しています。たとえばInstagramでは、以前はフォロワーからの投稿へのエンゲージメントが高ければ、自然とリーチが広がっていましたが、現在はそうではないように感じます。また、Xでは「おすすめ」のタイムラインが主流となり、自動的に興味のある情報を取得できるようになったため、アカウントをフォローするという行動自体が減ってきたようにも感じます。
動画コンテンツも年々重要度が高まっています。Instagramでは、インプレッション数の多い投稿のほとんどが動画です。しかも、ユーザーは2~3秒で判断してスクロールするため、最初のフックが重要になっています。企画を練り、動画を作り、かつアウトプットも尖らせていく必要があると感じます。片手間では対応できなくなってきていると感じますね。
「100人に1人刺さる」ための企画作り
――KPIの設定や達成に向けた取り組みについて、どのようにお考えですか?
定量的な数値も見ていますが、それよりもむしろ、「その企画における『ヤッホーらしさ』はどこにあったのか」を深掘りするような定性面の議論を重視しています。当社には「100人に1人に刺さること」を重視した考え方があり、必ずしも大衆ウケを狙う必要はないという共通認識があります。
社長とも月に一度SNS企画の壁打ちをする機会があるのですが、毎回「私が止めるような(尖った)企画を持ってきてほしい」と言うほど、数字にとらわれない、チャレンジングな企画を推奨してくれています。
とはいえ、ヤッホーらしい企画が数値面でも上位に来ることが多いため、定量はそこまで意識しないと言いつつ、結果的には数字に表れるとも思っています。
――SNS運用で特に大切にしていることは何でしょうか。
数字を追いすぎないこと、ルールを決めすぎないことを大切にしています。ただし、発信頻度については、月に最低10企画は自分たちで考えるという目安は設けています。それ以外の社内からの発信依頼にも対応していますが、「ヤッホーらしい」言い方や、ファンの方に親近感を持ってもらえる表現を心がけています。
以前は社内からの発信依頼が殺到して困ることもありましたが、現在は全社のマーケティングカレンダーを整備し、発信内容を年間で決めています。また、よなよな編集部の方針や大切にしていることを他部署に共有する機会も設けており、発信内容やタイミングを最適化できるようになってきました。