「事業会社」「広告会社」間で、前提を取っ払ったコミュニケーションを
藤平:少し視点を変えて、現状の突破口も探りたいと思います。広告会社が「広告だけ」を作っていたり、その広告に既視感があったり。「既定路線のまま」になっている課題の原因はどこにあるんでしょうか? 広告会社と事業会社、双方に課題がありそうですが。

坂巻:事業会社側の原因は、やはり社内で「前例」が重視されすぎること、じゃないでしょうか? たとえば、現場から上がってきた挑戦的なアイデアは認められにくいというところもそうですし、各領域で前例があるパートナーとプロジェクトを推進するということもそうですし。その意味では、私がいま社内で果たすべき役割は「みんなが右を推薦した時に、自分が信じられるのであれば左を選ぶ」ことなのかなと思っています。
逆に、広告会社側が一歩踏み込んだ提案をしにくいのはなぜだと思われますか?
藤平:オリエンに沿った広告だけを頼まれている場合はもとより、そういうわけではないのに勝手にそう思い込んでしまっているケースなど、「きっとこんなこと(企画)はできないだろう」と、はなから言わない・聞かないケースが多いかもしれないです。
また、「作り方から作る」のは、どうしても時間と労力がかかってしまいます。だから、そこに踏み込まず「いつもの手法の中でクオリティを上げる」ほうを選んでしまう傾向もありそうです。これは、「新領域のクリエイティブワーク」が評価されにくい(評価の仕方が確立されていない)という広告産業の課題も背景にあると思います。
坂巻:なるほど。周年キャンペーンで実施した企画がまさにそうですが、事業会社側からしても「広告会社のクリエイターって、そんなこともやってくれるんですか?!」ということは多いんですよ。たとえば、Webドラマの脚本まで執筆いただいたり。となると、意外に、課題の原因は、お互い前例を察し合うがゆえの、単なるコミュニケーション不足かもしれないですね。
藤平:たしかに、そうですね。別のプロジェクトでも、「ちなみに……」と提案してみたら、意外と喜ばれたり、とんとん拍子に話が進んだりすることは多いです。
先ほども話になった「問いを拡張して、新しい答えを生み出す」という広告会社の強みを、誰よりもまずは我々自身が信じなければならないですね。その上で、前提を取っ払ったコミュニケーションを通じて「作り方から作る」ことにも挑戦する必要があると改めて思いました。
売上増が続くearth music&ecology、2025年の展望
藤平:せっかくなので、earth music&ecologyが掲げる2025年の展望も最後に聞かせてください。
坂巻:earth music&ecologyの背骨になるパーパスが2024年にできたので、それを活かしたコミュニケーションを継続していきたいと思っています。また、2025年は新しいCXアクションを生み出していきたいという思いもあります。
おかげさまで、この2年間は非常に良い取り組みができ、少しずつお客様に認めていただけるようになりました。25周年が終わったと思えば、今度はブランドの30周年を数年後に控えているわけですが、また違った新しいアプローチを考える必要があると思っています。まさに先ほどの「作り方から作る」が必要ですね。
クリエイターのみなさんの力をお借りして、このチームならではの「問い」を、このチームにしかできない「答え」で表現・設計できたらいいですね。その先には、必ず売上がついてくると信じています。
藤平:今日いただいた言葉「真面目にふざける」を今年の抱負にしようと思います。個人的には、ふざけすぎて滑らないように十分注意しつつ(笑)。坂巻さん、本日はありがとうございました。
広告産業のパーパス:藤平の仮説キーワード(2025年1月時点)
「創造参謀」
・すべての事業責任者に「クリエイティブなチーム」を
・広告会社は、問いを拡張して、新しい答えを生み出すために(真面目にふざけるために)存在している
・創造に関する領域であれば前例(≒広告)にとらわれず担当できる(はず)
