定性調査だからこそ見えた「さけるチーズ」が子育て世代から重宝される理由
──リサーチグループの改革後、マーケティングを行う上で具体的にどのような影響がありましたか。直近で手応えを感じたプロジェクトをお教えください。
事業部とリサーチグループが同じチームメンバーとして活動するようになったことで、事業部が抱えているマーケティング課題や欲しい情報などのニーズを深く理解できるようになりました。
また、これまでは予算や時間的制約から、調査は定量が中心だったため、購入者のおおまかな実態は理解できてもインサイトまでは把握できていきないという課題がありました。
そこで、改革後はセルフのインタビューツールを導入するなど、定性情報が採りやすい環境を整備し、ブランドチームのメンバー自らが消費者インタビューを行うように。これにより、定量データと定性的なインサイトを掛け合わせた分析ができ、より消費者心理の深いところまで理解できるようになりました。

定量データと定性的なインサイトを掛け合わせ、消費者心理を深く理解
実際の取り組み事例として、「さけるチーズ」ブランドでの調査が挙げられます。同ブランドでは、購入者の属性分析から「30代の子育て世代」が「子どものおやつとして食している」ことまではわかっていました。
そこで改革後のチームではインタビュー調査を行い、消費シーンの詳細分析を新たに実施。すると、多くの「子育て世代」にとって、夕飯の準備中にお腹を空かせた子どもがスナック菓子を食べてしまうことに大きなストレスを抱えていることが判明しました。
つまり、「子どもにはお菓子を食べるのではなく、しっかりと夕飯を食べてほしい」という想いがありつつも、「目の前の家事に追われて子どもを注視する余裕がないため、仕方なくお菓子をあげてしまう」というジレンマを抱えていたのです。
そんな場面において、子どもが喜んで食べてくれる「健康的で手軽なおやつ」として「さけるチーズ」が重宝されていることが明らかになりました。
ここまで消費者心理の解像度が上がると、「認知度向上施策」や「店頭販促施策」などファネルごとの施策をすべて連動させることが可能です。そのため、より効果的なマーケティング戦略が構築できるようになりました。
インサイト起点の連動プロモーションで、売上が2年連続で2桁成長!
──リサーチで得られた「さけるチーズ」を選ぶ子育て世代のインサイトは、具体的にどのような施策へと落とし込んでいったのでしょうか?
まず、おやつとして喫食してもらうには、「さけるチーズ=楽しくておいしいおやつ」というイメージをより多くの子どもにもってもらう必要があります。
その上で、おやつとしてなんとなくお菓子をあげてしまっている子育て世代に対して、「さけるチーズはおやつの選択肢の一つである」という知覚刺激となるようなプロモーションを複数チャネルで展開しました。
たとえば、2024年12月から放映された新テレビCM「ごはん前のおやつはまかせろ」篇では、「さけるチーズ」を「さいて食べられる、楽しいおやつ」として子どもに訴求。その上で、親に対しては、「ごはん前に安心して与えられる、栄養価の高いおやつ」として認知してもらえるようなクリエイティブを作成しました。

他にも、商業施設でさけるチーズの大型フィギュアの設置やアレンジメニューの試食会などのイベントを実施したり、レアパッケージの「ボンバーさけチー」デザインを全シリーズに展開したりするなど、複数のチャネルで様々なアプローチを行いました。

「ボンバーさけチー」と呼ばれるレアなパッケージ。爆発するようなシルエットになるまで割かれたさけるチーズの写真が印象的。出現率は2個パックで約6%、1本入りでは約3%の割合しかないため、売り場で見つけられるかどうかも一つの楽しみになっている
このように、お客様が持つインサイトを正しく理解し、それを起点としてプロモーション設計を行ってきました。こうすることで、SNSでただバズらせることを目的とした、いわゆる小手先の施策ではなく、すべてが連動した一貫性のある施策ができるようになります。
なお、お客様のインサイト起点でプロモーション設計を考えるようになってから、「さけるチーズ」の売上は非常に好調です。発売から40年以上も経つロングセラーブランドでありながら2年連続で2桁成長を達成する見込みです。