インタビュー調査から正しくインサイトを捉えるには?
──たとえ消費者調査に取り組んだとしても、御社のように正しくインサイトを捉えることは容易ではありません。調査を進める上で意識すべき点があれば教えてください。
多くの人が陥りがちなミスとして、目的を曖昧にしたまま調査に取り組んでしまうといったケースがあると思います。しかし、これでは正しい消費者調査はできません。
調査を行う上では、ビジネス上で抱えている課題と知りたい情報、その情報を得ることで行える意思決定などを事前に整理して明確にする必要があります。これによって実際に行う調査の手法なども大きく変わってしまうためです。

また、定量調査と定性調査の使い分けも大切です。顧客の解像度を上げるには、「何かを確認したい」場合は定量調査、「その現象の理由やヒント」を知りたい場合は定性調査といった具合に、目的に応じて交互に調査を進めることが一番の方法だと考えています。
──インタビューのような定性調査では、消費者側が調査側の意図をくみ取ってしまい、本音を引き出すのが難しいという側面もあると思います。そんな中、どのように工夫すれば、インサイトを発掘することができるのでしょうか。
インタビュー調査を行う上でのポイントは二点あると考えています。一つ目は、「沈黙を恐れないこと」です。多くの場合、インタビュー時に、「なぜ?」「どうして?」のようなオープンクエスチョンを投げかけた時、沈黙に耐えかねてインタビュアー側から話を広げようとしてしまいがちです。しかし、それではインサイトを引き出すことはできません。たとえ沈黙が生じてもインタビュイー側の考えがまとまるのを待ち、心の奥にあるインサイトを引き出せるように意識しています。
もう一つは、「矛盾や違和感をスルーしないこと」です。インタビューを進める中で、発言内容と実際の行動が一致していない人の事例を見かけることがあります。しかしそう言った時に、「よくわからない人だったね」と済ませてしまうのではなく、“発言の真意”を深く掘り下げて考えることが大切です。
たとえば、「6Pチーズ」チームが朝食について調査を行った際に、「朝は忙しいから簡単に済ませたい」と述べているにも関わらず、「毎朝卵焼きを焼いている」という方に出会いました。この方の行動は一見すると矛盾しています。しかし、この行動の背景を紐解くことで、「手間をかけたくない」という言葉には「何も考えたくない」という本音が隠れているのだと気づくことができました。
このように、一見すると不可解な行動の裏側にこそ真のインサイトが眠っています。それを明らかにすることがインタビュー調査を行う上では大切です。
リサーチを通して顧客起点の組織文化を醸成
──今後、御社としては、データを活用してどのような取り組みを行っていきたいとお考えですか?
現在、弊社のお客様センターには年間で数万件もの電話が寄せられています。そして、それらの声は本来、商品開発や施策を考える上でも非常に貴重なデータです。現在ではまだ、それらのデータを十分に活用できていませんが、今後は、マーケティング活動に活せるように仕組み作りを行っていきたいと思っています。
加えて、データ分析の手法も進化させたいですね。データから得られる示唆は分析方法を変えるだけで大きく変化します。そのため、様々な分析手法を取り入れることで、今よりもさらに深いインサイトの発見に貢献していきたいです。
私は、リサーチグループの役割を「お客様と会社をつなぐ重要な存在」だと考えています。リサーチ結果の解釈方法と経営層への伝え方次第で、意思決定が変わるためです。将来的には、リサーチグループの活動を通して、生産・研究・経営など、あらゆる部門がお客様のことを深く理解し、お客様視点で考えて行動できる組織文化を醸成していきたいと思います。