KDDIがプロモーションにSpotifyの音声広告を活用した三つの理由
MarkeZine編集部(以下、MZ):KDDIでは、高速Wi-Fiサービス「WiMAX +5G」のブランド認知施策として、2024年8月と9月にSpotify広告を活用したプロモーションを実施しました。同プロモーションの概要と今回音声広告の活用に至った背景を教えてください。
柴山:当サービスではこれまで、メインターゲットである20代を中心に幅広い年齢層への認知度を高めるため、テレビ広告、デジタル広告、SNSなど様々なメディアを活用したプロモーションを実施してきました。これまではマス連動素材を中心に動画メディアでの展開が多かったのですが、音声広告が他メディアとは異なる接点を持っていることに注目し、今回は動画メディアに加えてSpotifyの音声広告にトライしました。
柴山:音声広告の中でもSpotifyを採用した理由は主に三つあります。一つ目は、「Spotifyユーザーの年齢層」です。Spotify利用者の年代別割合は20代が高く、当サービスのメインターゲット層へ効果的なアプローチが期待できると考えました。
二つ目は、「動画メディアとの利用モーメントの違い」です。私たちは動画メディアを“意識的に見る時間を作って視聴されるもの”と捉えています。そのため“ながら視聴”は一定ありつつも、メディア視聴に専念するケースが多いと考えています。
一方Spotifyは、移動中や運転中、料理中、ランニング中、デスクでの作業中など、画面を見ていない時間を含むあらゆるモーメントで利用されるメディアであると考えています。“ながら利用”されるケースも多く存在するため、動画メディアに加えて音声広告を実施することでお客様へのアプローチ機会を増やせるのではないかと考えました。
そして三つ目は、「プロモーション実施時期のモーメント」です。施策を実施した8月~9月は旅行や帰省のタイミング。Spotifyは移動中や運転中のユーザーにも利用されます。時期的に生活者の移動が増えることから、より多くのお客様へのリーチが見込めるのではないかと期待しました。
これらの理由を総合的に判断した結果、Spotifyの音声広告を活用することでKPIである名称認知向上に大きく寄与するのではないかと考え、活用に至りました。
二つの仮説に基づいた調査でSpotify広告の有用性を可視化
MZ:同施策の実施にともない、KDDIでは「音声広告の残存効果」に関する調査を行ったと伺っています。このような調査を行った理由を教えてください。
後舎:先述の通り、当社が行う大規模プロモーションはクロスメディアで実施するケースが多いですが、そこに新たなアプローチ方法として音声広告を活用してみたいと考えていました。
後舎:これまでも当社ではSpotify広告の活用を行っていましたが、今回は音声広告ならではのより深掘りした活用策を模索したく、調査を通して効果の可視化に取り組みました。
MZ:調査では具体的に何を行ったのでしょうか。
後舎:今回二つの仮説に基づいて、音声広告に関するより詳細な効果検証を実施しました。一つ目の仮説は、「聴覚に訴えかけることによる残存効果」です。現在、プロモーションの多くは、視覚的なアプローチ、つまり「見てもらう」ことを重視したプランニングを行うケースが多いと思います。一方、Spotifyの音声広告は、視覚的なアプローチを行わない「聴いてもらう」ことを重視したコミュニケーションです。古くから「耳に残る」という言葉があるように、「聴覚に訴求することから音声広告特有の効果が期待できるのでは?」と考えました。
二つ目は、「他メディアとの利用モーメントの違いからくる広告の重複効果」です。動画メディアとSpotifyの音声広告ではユーザーの接触モーメントが異なります。そのため、Spotify広告をメディアプランニングに組み込むことで動画ではリーチが難しい生活モーメントでのリーチが可能になり、広告の重複効果が期待できると考えました。
これらの仮説を検証するため、「Spotify広告単体での残存効果」および「Spotify広告と動画広告の重複接触効果」という二つの観点から効果を調べました。