インバウンド施策の“理想的な4ステップ”
MZ:どのようにインバウンドマーケティングを進めていかれたのでしょうか?

佐藤:まずは第1段階として、「比較サイト」の活用を行いました。きっかけは、とある企業が作成した「資料作成代行サービスの選び方」という比較記事で、当社サービスを取り上げていただいたことでした。その記事が「資料作成代行」の検索キーワードで上位に表示されていたこともあり、リードが2〜3倍に増えました。そこで当社のターゲット層が検索するであろうキーワードで上位表示が取れている他の比較サイトにも掲載をお願いしていきました。
次に第2段階として、「事例コンテンツ」を仕込んでいきました。比較サイトで自社サイトへの流入経路を確保した後は、興味を持って訪問してくださったユーザーの利用意向をさらに高めていくことが必要です。そこで、弊社のサービスを実際にご活用いただいた20社前後の企業の方にインタビューを行い、業界や依頼いただいた資料のジャンル別に事例集を作り、当社に依頼いただくとどれだけの効果を提供できるのかをしっかり説明しました。
第3段階では、潜在層にリーチを広げていきました。具体的には、SEOを駆使した「解説系コンテンツ」を展開しました。たとえば「営業資料の作り方」など、当社が持つノウハウで解決できる課題について解説記事を書き、記事を読んだ方には無料テンプレートをダウンロードしてもらうといった取り組みです。中には月間10万PVを誇る人気記事もあり、当社サイトを訪れていただくきっかけを作ることができています。また、こうしたコンテンツをきっかけに問い合わせにつながるケースも増えていきました。
さらに事業フェーズが進むと、より広く認知を取る必要が出てきます。そこで第4段階として、「外部メディア」、つまりメディア事業者が運営する専門メディアの活用を行いました。自社の事業フィールドに適したメディアに露出することで、認知を広げていきました。
まとめると、第0段階でリスティング広告、第1段階で比較サイト、第2段階で事例、第3段階でノウハウ解説系のコンテンツ、第4段階で外部メディアという4段階で認知を上げていくことで、当社は事業を広げてきました。マーケティングファネルで言えば、先端の顕在層から徐々にターゲットを拡大していくイメージです。

インバウンドマーケティングの4ステップを上手に展開するコツ
MZ:各フェーズにおける進め方のポイントを教えてください。
湯淺:既にリスティング広告を展開している場合、まずはそのキーワードで上位に出ている比較記事を確認し、サイトの運営元に連絡することをお勧めしています。事業会社のオウンドメディアであれば対応いただけることが比較的多いです。
もちろん専門の比較サイトに掲載することも有効な選択肢です。ただ注意しておきたいのは、その比較サイトがどの領域に特化しているかを確認すること。「〇〇代行」などのBPO関連のキーワードで上位表示されている記事が公開されていたとしても、「実はBPOではなくSaaS領域に強いサイトだった」というケースもあります。
また、その比較サイトが「成果報酬型か月額制か」という点も選ぶ時のポイントです。月額制は、記事掲載にあたり月額料金が発生します。成果報酬型は、掲載には料金がかかりませんが、リードが発生すると「1リードにつき1万円」というような基準で料金を支払う仕組みです。10件リードが入って10万円払ったのに、商談が1件も取れないことは珍しくありません。そもそも「リードは即商談につながらない」ということを理解しておかないと、最初の課題である「成果が上がらない」という悩みに戻ってしまいます。そこで事例や解説のコンテンツが必要です。
MZ:コンテンツに関しては、どのように作っていくのが良いでしょうか?

湯淺:事例系コンテンツに関しては「どういう案件を取っていきたいか」で考えることをお勧めします。たとえばSEOコンサルティングを展開している事業会社なのに、記事制作の事例ばかりが掲載されていれば、コンサルティングよりも制作会社のイメージが付いてしまいます。
解説系コンテンツの活用、いわゆるSEOに関してはキーワード戦略が大事になります。自社が解決できる課題は何で、ユーザーはその領域にどんな課題を持っているのかを把握し、その課題を解決できるキーワードでSEO記事を作成しなければなりません。訪問ユーザーの抱える課題と自社が解決できる課題に乖離が起きると、そもそも認知を獲得できない、リードを獲得できない状態になってしまいます。
佐藤:外部メディアを活用した認知拡大の施策はコストがかかるので、ROIをどう考えるかがポイントです。顧客のジャーニーは先述の4ステップとは逆で、認知から興味・関心、比較・検討、購入という順番に進みます。ここまでのインバウンド施策によって準顕在層、潜在層に上手くアプローチできていなければ、認知から次のフェーズに進んでもらう仕組みができていないため、もし外部メディアから認知が取れたとしても費用対効果が見合わないでしょう。コンテンツマーケティングまで展開してくると、「認知を獲得すればどれくらいの成果があるか」ということが概算できるようになり、出稿の判断がしやすくなります。