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【特集】テクノロジーで変化する、社会、広告、マーケティング

CESは世界に挑戦するためのプラットフォーム アワード審査員が強調する、日本企業の魅力・ポテンシャル

 2025年1月7~10日、ラスベガスで「CES 2025」が開催された。最新テクノロジーの見本市として、日本でも認知度が高まってきたCESだが、自社が出展・参加するものとしてウォッチしているマーケターはまだ多くない。本稿では、CESに長年参加し、今年はCESイノベーションアワードの審査員も務めたHEART CATCH代表取締役の西村真里子氏に、CES 2025の全体感を踏まえつつ、日本企業がCESで掴めるチャンスを語ってもらった。

※本記事は、2025年3月刊行の『MarkeZine』(雑誌)111号に掲載したものです

【特集】テクノロジーで変化する、社会、広告、マーケティング

─ CESは世界に挑戦するためのプラットフォーム アワード審査員が強調する、日本企業の魅力・ポテンシャル(本記事)

世界にAIの驚異的なインパクトを体感させた「CES 2025」

 世界最大級のテクノロジー見本市CES。毎年1月ラスベガスで開催され、その年のテクノロジーを軸にした産業動向を把握するために世界各国から人々が集まる。今年は14万人超が世界150ヵ国程から訪れた。CESでは、これまで「IoT」や「スマートXX」「XR」といったキーワードが登場してきた。CESを皮切りに、それらに関連するプロダクトやソリューションが数年かけて市場を席捲するという流れが、今までは主流だった。

 しかし、今年、その流れは変わった。「AI」がCESのキーワードとして注目されたのは2024年。そのわずか1年後のCES 2025には、AIが家電、車、メガネなどに組み込まれ、当たり前のものとして浸透していた。約4,500社の出展があった中、4社に1社はAI活用していたとも言われる。過去13年間CESを見てきたが、このAIの進化スピード、企業への浸透具合は驚異的である。また、「AIエージェント」や、NVIDIAの基調講演で発表された「フィジカルAI」への注目度も高く、ロボットや自動運転の進化が加速することも予想させた。

CES 2025会場の様子。CESはラスベガス中心エリアに設置される3会場で開催される。1つの会場を1日で回り切れないほどの規模の大きさで、展示のほかにグローバル企業によるカンファレンスも行われる
CES 2025会場の様子。CESはラスベガス中心エリアに設置される3会場で開催される。1つの会場を1日で回り切れないほどの規模の大きさで、展示のほかにグローバル企業によるカンファレンスも行われる

 昨年までのCESでは、「AIは人間の仕事を奪うのではないか」という議論が主流だったが、今年は「デジタル共存:AIは社会とビジネスに不可欠なパートナー」という文脈で議論されていた。CESで頻繁に聞かれた「AI is everywhere , AI is an electricity(AIはあらゆるところに存在し、電気のような存在だ)」という表現は、AIがもはや特別なテクノロジーではなく、生活やビジネスの基盤として不可欠な存在になりつつあることを象徴している。

 これらの動向は、AIがマーケターにとって単なるソフトウェア上のテクノロジーではなくなっていることを示している。AIは、消費者体験をフィジカルに革新していく際に不可欠な要素となっている。今後、AIを活用したプロダクトやサービスをいかに迅速に市場に届けるかが、企業の競争力を大きく左右するだろう。

日本企業がCESで掴めるチャンス

 CESに13年連続で参加し、定点観測を続けてきた私だが、今年初めてCESイノベーションアワードの審査員を務める機会を得た。日本企業として審査に参加したのは弊社が唯一だと思われる。この貴重な経験を通じて改めて気づいたのは、日本のプロダクトやサービスが持つ質の高さだ。

 日本企業が持つ強みは、プロダクトの意義を明確に持ち、“伝える力”だ。私が審査した範囲では、応募数は中国や韓国などの他国に比べて多くはないものの、応募プロダクトの受賞「打率」は非常に高いと感じている(少なくとも私が審査をしたカテゴリーにおいて)。これは、製品やサービスのクオリティだけでなく、明確なメッセージ性が評価されている証拠だ。

 CESのイノベーションアワードを受賞することで得られる価値は高い。受賞プロダクトはCES会場内の特別展示ブースで紹介されるだけでなく、ブース内に「イノベーションアワード受賞」のトロフィーを掲げることができる。このトロフィーがあるだけで、4,500以上のブースの中で来場者の目を引き、多くの人が足を運んでくれる。これは、グローバル市場におけるプロダクトの認知度を高める上で絶大な効果を発揮する。

 マーケターとしてCESへの出展に関わる機会がある方、またグローバル市場でのプロダクト展開を計画している方にとって、CESイノベーションアワードへの応募は戦略的な一手である。単なる出展にとどまらず、アワードを受賞することでブランド力や製品の独自性を大きく打ち出すことができるのだ。日本企業の質の高さと明確なメッセージを武器に、この場を活用しない理由はない。

 CESは単なる展示会ではなく、世界との接点を作り、企業の未来を切り開くための重要な舞台である。この場を活用し、さらなる挑戦を続ける日本企業が増えることを期待してやまない。

クボタの出展ブース。デモが始まると、参加者が群がっていた。クボタは、全地形型プラットフォーム車両「KATR」でイノベーション・アワードの「Best of Innovation」を受賞した
クボタの出展ブース。デモが始まると、参加者が群がっていた。クボタは、全地形型プラットフォーム車両「KATR」でイノベーション・アワードの「Best of Innovation」を受賞した

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この記事の著者

西村 真里子(ニシムラ マリコ)

元:(株)バスキュール プロデューサー 現:(株)HEART CATCH代表
IBMでエンジニアとしてWebソリューションスキルを蓄え(特許取得)、AdobeでFlashなどのWeb製品マーケティングマネージャーを経て現職に至る。プロデュースプロジェクトは次世代マス・リアルタイム エンターテインメントの可能性を探るべ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/03/14 09:30 https://markezine.jp/article/detail/48553

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