※本記事は、2025年3月刊行の『MarkeZine』(雑誌)111号に掲載したものです
【特集】テクノロジーで変化する、社会、広告、マーケティング
─ CESは世界に挑戦するためのプラットフォーム アワード審査員が強調する、日本企業の魅力・ポテンシャル
─ デジタルと現実が結合した「Physical AI」の世界で、ブランドは提供価値に差異を作れるか?(本記事)
Physical AI時代の到来を感じたCES 2025
今年のCESを端的に捉えるキーワードとして、私は「デジタルと現実(サイバーとフィジカル)の滑らかな結合の加速」を挙げたいと思います。
NVIDIAのジェンスン・フアン社長も、基調講演で「Physical AI」という言葉を何度も繰り返し強調していましたが、これからはデジタル世界の中だけでなく、物理世界のインタラクションにもAIの活用が拡大・加速していく。つまり、「Physical AIの時代」が到来することを、CES 2025全体を通して強く感じました。

ストラテジーグループマネジング・ディレクター 齋木康一郎氏
製造業や通信業において、全社戦略、新規事業戦略、ターンアラウンド、ビジネスプロセス改革、経営モデル改革など、幅広い戦略コンサルティングに従事。近年は、ハイテクメーカーにおけるモノ作りからの脱却、BtoBソリューションやBtoCサービスの企画・立ち上げ関連のプロジェクトに多数従事。
Physical AIについて少し紐解くと、これまでのAIは主にデジタル上にあるものを学習し、それを最適に処理することに留まっていました。しかし、これからのAIは物理世界(Physical)を理解し、物理世界(Physical)で働きかけてくるようになります。このシフトを支えているのが、「デジタル情報空間(デジタルツイン)」や「インプット&インターフェース」の進化です。
物理世界の情報をAIに学習させるためには、Physical→デジタルへ、一度情報を変換する必要があります。そのインプットの技術、たとえば、3Dスキャン系の技術や画像解析、ウェアラブル系のデバイス、各種VR・MRといった技術が目覚ましい成長を遂げているのです。デジタル化された世界でAI処理された結果を、AIの「身体」となりPhysical世界へとつなげるための、ロボットや自動化製品の進化・多様化も進んでいます。
これらはいずれも以前からあった技術ですが、Physicalとデジタルの連携がこれまでのような“粗い”つながり方ではなく、総じて“滑らか”になっている印象です。より細かく、高精度に、かつケースバイケースでどんな場合でもつながれる状態になっています。