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MarkeZine Day 2025 Spring(AD)

テレビCMの時代は本当に終わったのか?ノバセルに学ぶ、効果向上のためのプランニング方法と指標の置き方

 近年テレビの影響力は下がりつつあるものの、テレビCMにはいまだ高いリーチ力がある。また、インターネット上の様々なメディアと組み合わせて活用する時代になっている。ただ、どのメディアにいかほど出稿すると費用対効果が高くなるのかを判断するのは難しく、ムダの多い出稿になっている場合も少なくない。テレビCM広告プラットフォームを提供するノバセルでグロースパートナー事業部 部長を務める綿川奨吾氏が「MarkeZine Day 2025 Spring」に登壇。効率的なテレビCMの活用方法について語った。

ノバセル誕生の裏側

 印刷サービスのラクスルは、テレビCMを効果的に活用したマーケティングを展開し、2018年から7年間で42倍の成長を遂げてきた。広告費のムダをなくし、効果を最大化することを徹底した結果だという。このマーケティングは内製していて、ノウハウを事業化すべく2022年に子会社ノバセルを立ち上げた。具体的に、どのような取り組みでラクスルの成長を実現したのだろうか。

 テレビCMの効果は視聴率などで計測されるが、それだけでは売上にどの程度効果があったのかわからない。ラクスルでは複数のアルバイトを雇い、テレビCMが放映された直後にWebサイトの訪問者数が何人増えたのかを確認し、データをダッシュボード化していった。

「視聴率では10倍差の放映枠で、テレビCM放映後の増加訪問数は100倍の差が出ました。もちろん視聴率が高い番組枠の方が放映料は高いのですが、効果の差が100倍もあるのならPDCAをきちんと回そうということになりました」(綿川氏)

 ラクスルでは効果をサイトへの増加訪問数で計測することで、テレビCMの効率的な運用が可能になった。業界最大手の競合と変わらぬ広告投資量で指名検索数は20倍の成果を上げつつも、獲得コストは2分の1まで圧縮できた

 こうして培ったノウハウを活かすべくノバセルでは、テレビCM分析ツール「ノバセル トレンド」「ノバセル アナリティクス」、デジタル広告分析ツール「ノバセルアナリティクス for デジタル」などを提供。広告主のマーケティングを支援している。

ノバセル株式会社 グロースパートナー事業部 部長 綿川 奨吾氏
ノバセル株式会社 グロースパートナー事業部 部長 綿川 奨吾氏

マーケティングのムダ削減における課題

 ムダを削減した効率的なマーケティングを行ううえで、企業は次の5つの課題に直面することが多い。

・テレビCMの価格体系が不透明で効果検証も難しい

・OTTメディアが乱立し、クロスメディアの最適解がない

・クリエイティブの正解が見つからない

・AIの進化で広告運用がブラックボックス化している

・マーケティング人材が不足し外注するとコストがかかる

 ノバセルが広告主に実施したアンケートでも、「テレビCMの正しい効果測定ができていない」と回答した割合が77.3%、「適切な投資判断ができていない」が76.8%と8割近い。視聴率からリーチは判断できても、事業に対する費用対効果がわからないことがうかがえる。

 年々テレビのHUT(総世帯視聴率)が下がる中、いまやクロスメディアで広告展開をしていくのが当たり前になっているが、その最適解はない。こうした中、企業からは「テレビCMとYouTubeの単価を比較しても影響力の違いを判断できない」「TVerなどのOTTとの使い分けがわからない」といった声も聞く。

「課題の中でも『テレビCMの効果体系が不透明で効果検証も難しい』『OTTメディアが乱立しクロスメディアの最適解がない』の2つは、ノバセルの提供するツールで解消でき、大きなコストのムダ削減になります」(綿川氏)

テレビCMは、今も効果があるのか?

 テレビCMを効率的に活用するのが難しい背景として、広告主と広告代理店のスタンスの違いが挙げられる。広告主は広告効果を最大化し、マーケティング予算が売上にどれだけ寄与したのか、ビジネスとの相関関係を重視する。一方、広告代理店は手数料を得るビジネスのため、広告費が大きいクライアントに手厚くなり、テレビCMや複数プランなど予算が大きくなるものを提案しがちだ。

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「このスタンスの違いが、ムダをうむ一因であると思っています。事業のことは、広告主以上にわかっている人はいないので、マーケティングでも自社でノウハウを持つことが重要です。広告代理店にどういう問いを立てられるかが、ムダを最小限にするための鍵となります」(綿川氏)

 ノバセルがテレビ出稿企業の担当者に実施したアンケートによると、フジテレビ問題をきっかけにテレビCM出稿を見直した企業は7割以上。さらに過半数が、1年以内にテレビCM予算の削減・撤退を検討している

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「フジテレビ問題はあくまできっかけで、以前から持っていた『テレビCMは費用対効果がわかりにくい』『年々リーチ力が低下している』という思いが、表面化してきたのだと思います」(綿川氏)

 実際テレビの視聴率は2020年から2024年の間に30%以上落ち、テレビを所有していない世帯は15%にものぼる。しかし、テレビのスポットCMの売上は増加傾向で単価は上昇中だ。それでもアンケートでは、テレビCMは有用だと考える企業が6割以上となり、期待値は依然として高い。

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 実際にラクスルの実績では、リーチのインプレッション単価はテレビが一番安くなっている。

「ラクスルは効率化できているので一般的な単価より安くなっていますが、媒体ごとの比率は他の企業でもおおよそ同様です。つまり、テレビCMの価値自体は現在でも非常に高いのです」(綿川氏)

効率的なテレビCMのバイイング方法

 テレビCMのプランニングの流れは、広告主がエリアや投下量、テレビ局ごとの配分を決定。その後、広告代理店からどの番組で放映されるかを記した線引きという表が提示され、広告主から変更の希望があれば改案して反映する流れになっている。この中で広告主が重視すべき点が、局配分だ

「広告主とテレビ局の間には広告代理店が入るのが通例で、各社の中でも複数の担当者を通すので、広告主の出稿意図はなかなか伝わりません。こうした状況でも、広告主が重視する指標をわかりやすく提示し、貢献した局は次から配分を上げると伝えると、放送局はそのために努力してくれます。指標の高くなった局のシェアを上げる仕組みをつくることで、より効果の高い枠で出稿しやすくなります」(綿川氏)

 広告主側で重視する指標と相性のよい番組がわかっていれば、最初から「こういう枠を取ってほしい」と依頼できて話が早い。さらに期日に余裕を持って発注することで、やり取りをする時間も確保できる。

 ノバセルでは、テレビCMのバイイングをシミュレートし、自動化できるツール「ノバセルメディアプランナー」を提供している。これを利用すれば、あらかじめ効果の高い枠を指定し、早めに依頼を出せる。

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 また、改案は期間が短いこともあり、広告代理店や放送局にとって調整が大変で、あまり受けたくないものだ。もし改案をしたい場合は、ぼんやりとした指示ではなく、ピンポイントに番組を指定し、反映してもらいやすくすることも大切だ。

テレビCMの指標をどう定めるのか

 広告主の売上につながる、テレビCMの指標はどのように定めたらよいのだろうか。従来はいかにターゲットにリーチしたかを見るのが一般的だったが、CMを見た後にサービスについて調べて理解を深めたり、購入したりと、行動につながらないとビジネスに寄与する効果が出たとは言い難い。

「我々は指標として指名検索をオススメしています。もしテレビCMを見て気になったら、検索しますよね。また、指名検索と購買との相関性も非常に高いと、ノバセルの分析実績で、かなり明確になってきています」(綿川氏)

 CM放映後の指名検索やサイト流入は、「ノバセルトレンド」「ノバセルアナリティクス」で確認可能だ。CMの放映単価を入力するとダッシュボード上でCPAなども見られる。改善を重ねていくことで、10〜20%も費用対効果を上げられる。

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 ノバセルのツールを活用して効果検証を行なっている広告主の一つに、自動車メーカーのSUBARUだ。テレビCMのKPIを来店とし、そこに向けて改善アクションを行っていった。

 具体的には、KPIの中間指標が何になるかを精査したところ、指名検索リフトの相関性が高いことを発見。検索リフトにまつわる様々な変数をすべて分解し、有効な指標を可視化したうえで、改善のロードマップを組んでいった。

SUBARU様の事例では、当社のツールを使ってフォーカスするテーマを決め、アクションをサポートし、指名検索を最大化できています。結果として、検索リフトは同じコストで14.5倍上がり、KPIとしていた来店数も110〜140%ほど増加しました。これら一連のコンサルティングサービスを、我々は『ノバセルプロフェッショナル』と呼んでいます」(綿川氏)

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クロスメディアで「ものさし」をそろえる

 テレビの影響力が下がる中、CM予算を振り分けクロスメディアを使いこなす時代になっている。予算の移行先として、検索連動型広告やSNSと並んで、YouTube、TVer、ABEMAなどの動画広告が注目されている。

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 実際にフリークエンシーの質が異なるテレビCMとYouTubeを組み合わせることで、単体での出稿よりも成果を上げられる。ただ、まだ効果を最大化する最適解が出ている企業は多くない。

 クロスメディアで予算配分の最適解を出すのが難しい要因として、テレビCMでは視聴率、Youtubeではリーチやインプレッションと、媒体ごとに指標が不統一なことがある。ものさしがバラバラであれば、1リーチの価値も異なってくるので総合的な評価ができず、PDCAを回すのが難しい。MMM(マーケティングミックスモデリング)であれば総合評価ができるものの、一般的には膨大なコストがかかるうえ、振り返りサイクルが年に1度程度と時間も要する。

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「MMMよりも短い期間でものさしをそろえる解決策があります。その指標となるのも、指名検索です。なぜなら、純粋想起と明確な連動が確認できますし、指名検索を経て流入してきたユーザーはCVRが高くなるからです」(綿川氏)

 ノバセルでは、クロスメディアで最適なメディアプランニングができる「ノバセル MMM」を提供。月単位でのスピーディーなMMMによる分析も可能だ。

 テレビCMもクロスメディアも有益だが、効率的に効果を出すには、ゆるぎない指標を持って成果を可視化することが重要だ。綿川氏は最後に「広告費はまだまだムダを削れます。ぜひノバセルのツールを活用して効率化していただければ幸いです」と話し、同セッションを締めくくった。

広告主が考えるテレビCMの現在地とは?

 いわゆる「フジテレビ問題」の発覚以降、従来からのデジタル移行も相まって、企業の広告出稿に対する考え方に変化が生じています。調査レポートからは、広告主のテレビCM出稿に対する実態や、デジタルメディアの有効活用に向けた具体的な課題などが浮き彫りになっています。

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この記事の著者

平田 順子(ヒラタ ジュンコ)

フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行う。2008年よ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:ノバセル株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/05/16 10:00 https://markezine.jp/article/detail/48588