ロングセラーブランドゆえの「3つの課題」
日本ハムのシャウエッセンは1985年に発売され、2025年で40周年を迎えたロングセラーブランドだ。2023年度の同社のデータでは「発売からの総販売本数を1本ずつつないでいくと、地球100周もの長さになる」という。しかし、シャウエッセンの広告宣伝やプロモーションを担当する岡村氏は、ロングセラーゆえの課題も抱えていたと明かした。
1つ目の課題は、コアファンの高齢化だ。シャウエッセンのヘビーユーザーは50代以上の女性となり、若年層の取り込みが大きな課題になっていた。2つ目には、食卓出現頻度の問題、つまり食シーンが限定されていることが課題に挙げられた。朝食や昼食、弁当で使われることが多いシャウエッセンだが、それ以外の食事シーンにはあまり浸透していなかった。
そして3つ目は、ブランドが購入されるきっかけとなるカテゴリーエントリーポイント(※)をいかに増やすかが課題に。「ブランドのさらなる拡大のために欠かせない視点です」と岡村氏は語った。
※カテゴリーエントリーポイント(以下、CEP)は、あるカテゴリーが想起されるきっかけとなる、消費・利用される状況や目的、ニーズを捉える考え方。カテゴリーエントリーポイントごとに、異なるブランドが想起されることもある。

岡村香里氏
期間限定の新商品で、食シーンの広がりを狙う
同社は3つの課題を解決すべく、様々な対応を行ってきた。たとえば、電子レンジ調理の解禁。簡単調理や時短へのニーズの高まりに対応するため、社内で数百回ものテストを経て最適な調理時間を算出した。話題化を狙い「シャウエッセンは、手のひらを返します。」という形でリリースし注目を集めたり、若年層をターゲットに新しいフレーバー商品を発売したりした。

また食シーンを拡大するために、シャウエッセンの素材を活かしたメニューを提案。中には夜に食べられるメニューも含まれていたが、顧客だけでなく社内においても「シャウエッセンは朝に食べるものである」という認識が根強いことに気づいたという。
この状況を打開するには、メニューの提案以外のアプローチが必要なのではないか。そこで生まれたアイデアが、夜に食べてもらえるような新しいタイプのシャウエッセン「夜味」を開発することだった。開発にあたってまず考えたのは、社内の様々な「不文律」をリデザインすることだったと岡村氏は説明した。
「シャウエッセンは40年の歴史を築いてきたからこそ、様々な固定観念に支配されてしまっている部分もありました。ターゲットや食シーン、ネーミングなど、要素を改めて捉え直しマーケティングに活用する。そうすることで、CEPの設計を試みました」(岡村氏)