生成AIの活用スキルを高める、2つの観点
ワークショップなどの施策を通して、メンバーに知見を深めてもらう際、工藤氏が重視しているのが「プロブレム・ソリューション・フィット(PSF)」という概念である。

社内での“有効な”生成AI活用を促すためには、実務の課題と生成AIの有用性を結び付けて考えられる力を養っていく必要がある。生成AIにも向き不向きがあり、生成AIがマッチしない課題・領域で活用しようとしても、なかなか成果には結びつかないからだ。
ワークショップでは、PSFの概念を参考に、「業務の課題を言語化・抽象化・汎用化する力」と「生成AIの性質や長所・短所、これまでのユースケース」を掛け合わせ、「生成AIを活用すると良い案件」を導き出す力をつける、という観点で学びを深めるよう促している。
同様に、「ビジネスインパクト」と「開発の複雑性・専門度の度合」を掛け合わせて、筋の良い案件を見極める力も重要だ。

「生成AIは進化が非常に速いので、時間をかけて開発している間に類似のソリューションが出てきてしまい、『せっかく作ったのに』という状況になりかねません。本当にインパクトの大きいものや社内独自の要件でない限りは、なるべくシンプルな作りでの創出を目指したほうがいいと考えています」(工藤氏)
実務での活用事例も!能動的に学び、活用することで成果を出していく
プロダクトデザイン室では組織内の活用推進を行った結果、実際に生成AIを業務活用し成果を出している事例がいくつか生まれている。その一例が校正・校閲での活用だ。
これは記事を作成する際に、記事原稿や入稿情報に社内整備された校閲ガイドラインを組み合わせることで、修正内容を提案するという取り組み。校閲業務の一部をAIで代替することで業務効率化を図っている事例だ。
また、マーケティング領域でも活用されている。ペルソナ分析や、そのペルソナを基にした記事制作にあたり、社内独自のナレッジをプロンプトに組み込むことで、パーソナライズされたペルソナ情報や記事を提案してもらうことが可能になっているそうだ。
「個人的には、今後生成AIの技術やモデル精度が進化していくことにより、より一層パーソナライズが加速していくのではないか、顧客の価値として提供できるような仕組みが重要ではないかと考えています」(工藤氏)
ビジネスに大きな変革をもたらす可能性のある生成AIは、実践しながら学び、組織内で知見を内製化・共有していくことで、自社の競争力向上に繋がることが期待される。工藤氏は「今後も急速に進化する生成AIの変化を“能動的に”学び、取り入れていくことで成果に繋げていきたい」と話し、講演を締めくくった。