日本5年目、成長著しいBrazeの2025年戦略
2020年11月に日本市場での展開を開始したBrazeは、5年目に入った現在も順調に成長し続けている。売上/創業からのCAGRは212%、MAUは2.7億人以上、Brazeを通した配信メッセージ数は毎月299億通以上であるほか、顧客企業数は100社を超え、Brazeを利用する業種も広がっている。

パートナーサミット冒頭、水谷氏は2025年度の全体戦略として3つの重点分野を挙げた。
Industry Focus(業界ごとのサクセスストーリー)
Brazeは単なるITソリューションの提供を超え、顧客のビジネス成長を重視している。そのために目指しているのが、各業界の特性やニーズに対して、より的確に対応できる体制の構築だ。強化業種を策定し、早期のサクセスケース創出を目指していく。
Success with Partners(パートナー協働による成功)
顧客のIT知見の有無に関わらず適切なサポートを提供するべく、パートナー企業との連携を強化。導入や活用といった表層的な課題だけでなく、戦略やシステム全体、運用の再定義、変革といった潜在課題を明確化することで、顧客にとって本当の意味でのビジネス成果の創出を目指す。必要な知見はパートナー企業に惜しみなく提供していく予定だ。

Product Localization(国内競争力を高める製品力強化)
本社の開発部門と連携し、日本国内の各業界の特有要件に対応できるプロダクト開発を行っているほか、LINE連携機能の強化など、国内のデファクト・スタンダードソリューションとの連携も進める。
グローバルエコシステム最前線 鍵はパートナーシップにあり
この日に合わせて来日したBrazeグローバルパートナーシップ責任者のJohn Ashton氏は「私自身、入社以来、様々な市場を見ていますが、日本市場のポテンシャルと共にその実績は他市場を圧倒しています。まさにパートナー企業様と共に歩んだ成果であり、今後もパートナーシップがお客様の成功に不可欠です」と語った上で、グローバル視点でのエコシステムのトレンドや日本市場における期待を提示した。

具体的にパートナーとどのような共創の可能性があるのか。実装面以外では次の領域が挙げられる。
まず「カスタマージャーニーマッピング」。顧客理解を通じてタッチポイント全体にわたるジャーニーマッピングの最適化をプロデュースしていく。そして「戦略と顧客の成熟度向上」。Brazeは顧客の知見がどのレベルからでもスタートでき、どこへでも発展できるよう設計されている。自社の方向性を理解し、テクノロジーを適切に活用して目標を明確にすれば、その可能性をさらに広げていくことができる。
上記「カスタマージャーニーマッピング」と「戦略と顧客の成熟度向上」が適切に実行できれば、より優れた、そして創造的な「クリエイティブ・コンテンツ開発」が可能となり、結果として業務サイクルを加速することができる。実際に、米国にてパートナー企業とともに実施したワークショップでは、これまで約2ヵ月かかっていたクリエイティブ制作を2日間で完成できたという。
「パートナー企業との連携が不可欠」エコシステム戦略
続いて、アライアンスマネージャーの北川氏から、日本におけるパートナービジネスのハイライトおよび新年度エコシステム戦略が語られた。

Brazeのエコシステムは拡大を続けており、昨年はパートナー企業経由のパイプライン創出規模は前年比7倍以上、全受注の65%がパートナー企業との連携によるものであった。さらにBrazeが設ける認定資格の保持者数も100名以上に達した。ソリューション、テクノロジー、マーケティングの各領域で、より大きな成長を遂げるためのコラボレーションが加速してることがよくわかる。
これらの振り返りを踏まえ、新年度のエコシステム戦略では「Industryエコシステム」「マルチプレイヤー変革」「協働ホームゲーム展開」を掲げた。いずれも冒頭に水谷氏が全体戦略として語った「Industry Focus」「Success with Partners」「Product Localization」を実現するためのものである。
Industryエコシステム
業界ごとのテクノロジーショーケース化とソリューションパートナーによるベストプラクティス化。業界特有の要件に対応する製品力強化などを通じて、各業界向けのエコシステムを構築する。

マルチレイヤー変革
顧客のビジネス成長にコミットするため、上流、構築、運用フェーズまでの成功を支援。レイヤー別に領域を拡大し、パートナー間の補完連携含め、強みを活かした変革の推進を目指す。
協働ホームゲーム展開
“戦わずして勝つ”ために、顧客企業各階層へホームゲームを展開。ソートリーダーシップ活動(共同調査、ソリューションなど)やBrazeチャンピオンの輩出(パートナーとの共同マーケティングなど)の取り組みを推進する。
製品開発への投資が顧客ビジネスの成長につながる
Brazeの特徴として、製品開発への投資も挙げられる。日本市場製品責任者の新田氏によるプロダクトエコシステム戦略を紹介したい。

Brazeは米国市場への上場後も製品開発を強化している。現在、研究開発部門には33の独立エンジニアチーム(対前年比120%)があり、320人強のエンジニア(対前年比130%)が日々開発に取り組んでいるなど、製品への投資を継続的に加速させている。2024年には133の新機能と機能強化をリリース。うち約25%が外部ソリューションとの連携に関わる機能強化であった。
「『製品エコシステムの強化がお客様のビジネス成果につながる』という考えのもと、2025年は昨年以上にパートナーソリューションとの連携を強化する予定です」(新田氏)
2025年のイノベーションテーマは次の3つ。
1つ目のテーマは「データ製品」。CDI連携元ソースの追加により主要なクラウドデータソースに対応し、連携開発をスムーズにする。Microsoft FabricやSalesforceなどに対応予定だ。 また、ゼロコピーデータによるシナリオトリガーを実装することで、クラウドデータウェアハウス上のデータが変更された時点で、データをコピーすることなくBrazeのシナリオを起動できるようになる。
さらに新しいデータオブジェクトの導入も進めている。従来の顧客軸に加えて新しいデータに対応する。BtoBあるいはBtoBtoCのユースケースで使われることが多い、アカウント(企業)やオポテュニティ(商談)といったオブジェクトだ。たとえば、Salesforceに格納されているアカウントデータをシームレスにBrazeに取り込めるようになる。
2つ目のテーマは「シナリオ設計とAI機能」。特別感を与えるような顧客体験は、人の手だけでは実現することが難しい。そこでAIを活用することで、より効率的かつパーソナライズされた体験を実現する。「Project Catalyst」は、顧客体験を圧倒的なスケールでパーソナライズ。Braze AIを搭載することで、1対1のレベルで何千ものバリエーションを生成、テスト、最適化することを可能にする。
最後のテーマである「チャネル&デジタル顧客接点」に関しては、地域特性に合わせた開発も強化しており、LINE公式アカウント対応コネクタやLINE クリックトラッキング、S/MIMEデジタル署名対応など、日本における主流コミュニケーションツールであるLINEやメールの関連機能の強化を進めている。また、パーソナライズランディングページの開発も進めており、これが実現すれば、ユーザーに合わせたメッセージを表示する登録フォームページなどを作成できるようになる。
Brazeは最終的に「マーケティングにおけるAIエージェント」を目指した製品戦略を展開し、あらゆるデータソースから顧客データを取り込み、最適なジャーニーを自動生成して様々なチャネルで出力する構想を持っている。この実現には、パートナー企業とのエコシステム構築と協力が不可欠であると新田氏は強調した。
Breathe代表が語る、Brazeとの共創だから実現できる「変革」
続くパネルディスカッションでは、Breathe代表取締役社長の吉岡 裕文氏が登壇。Braze リードソリューションコンサルタント廣川 侑氏の進行のもと、「Brazeエコシステムによるトランスフォーメーションの取り組み」をテーマに対談が行われた。

パートナーが感じるBrazeの可能性
Breatheは2024年よりBrazeと協業し、DatabricksとBraze活用に特化した事業を開始している。吉岡氏がBrazeに可能性を感じた点は次の3つがあるという。
内製が可能
従来のMAツールではデータの複雑さから内製化が困難であったのに対し、Brazeのアーキテクチャは内製が可能。マーケティング活動の自社コントロールが格段に向上している。
リアルタイムシナリオ
リアルタイムでデータ収集、シナリオ実行ができる。たとえば「六本木エリアに来た顧客に対して、その場で各チャネルからコミュニケーションを取る」といった位置情報に基づくリアルタイム対応が容易に実装可能だ。
機械学習とMAの融合
データベース上で作成した機械学習(AI)の結果をそのまま劣化させることなくBrazeに連携し、マーケティングシナリオに活用できる。より高度なパーソナライゼーションや予測に基づくマーケティングが実現可能となる。
シンプルに課題解決ができる、Braze導入支援事例
MA特化のコンサルティングファームとしてスタートしたBreatheは、これまで様々な課題を実感してきた。吉岡氏はBraze活用が課題解決につながると語り、アパレル企業のプロジェクトを紹介した。既存のMA、CDP、レコメンドエンジンをBrazeとデータベースの組み合わせに置き換えるというものだ。次のように導入前の課題に対応し、4ヵ月という短期間でプロジェクトが完了した。
- シナリオ作成が内製化できない→マーケター主導でBraze保持データを設計、シナリオ作りが可能に
- データを長期間保持できない→Braze導入により、10年間明細データを保持できるように
- ルールベースのシナリオしか開発できない→AI(機械学習)を活用できるように
Brazeのパートナー企業として発揮できる価値
最後に廣川氏がBrazeのパートナー企業として発揮できる価値を尋ねると、吉岡氏は役割の変化・意識の変化・指標の変化について言及した。
まず、Brazeの導入によってプロジェクト推進における役割の変化が生じている。顧客自身がシナリオを容易に作成できるようになったため、パートナー企業の役割が「作る」ことから、作る前のデータ処理方法の設計や、KGIを理解した上でのシナリオ設計といった、より戦略的な領域へとシフトしている。
また、メンバーの意識変革も生じている。これまで制作業務に注力していたチームが、顧客のビジネスやKGIを理解し、適切なシナリオを考案するという、いわば「マーケティングの基本」に立ち返ることの重要性を実感。学習や情報取得に積極的になっている。
さらに評価指標についても変化が見られ、開封率やクリック率といった表層的な指標から、エンゲージメントの向上や収益への貢献といった、より事業成果に直結した指標への移行が進んでいる。重要なのは、ビジネスKGIの達成に向けたマーケティング戦略の立案という基本に立ち返ることだとメンバーが理解し取り組んでいる。
「Braze Torchie Awards 2025」発表
イベントの最後には、パートナーアワード「Braze Torchie Awards 2025」が発表された。今回は、ビジネス貢献の大きさ、カスタマーサクセスの共創、パートナーアセットとの共演、マーケティング変革の革新性といった様々な観点から対象企業を評価。次の7部門8社が選ばれた。
- Sales of the Year (ビジネス貢献と共創活動での大きな成果):サイバーエージェント
- Academy Growth of the Year(スキルと体制の強化):電通デジタル
- Operation of the Year(Brazeの導入・活用の支援促進):ディレクタス
- Rising Star of the Year(協業活動の早期立ち上げ):デロイト トーマツ コンサルティング
- Rising Star of the Year(協業活動の早期立ち上げ):トランスコスモス
- Transformation Partner of the Year(トランスフォーメーションの推進):Breathe
- Technology Partner of the Year(マーケティングおよび、共同販売活動の推進):データブリックス・ジャパン
- Solution Partner of the Year(ソリューション協業におけるリーダーシップの推進):博報堂

成長著しいBraze。パートナーとともに切り拓く、日本企業の革新から今後も目が離せない。
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