デザインの力で企業変革を支援するグッドパッチ
グッドパッチは、顧客体験を起点に企業変革を前進させるデザインカンパニーだ。2020年6月には、日本のデザイン会社として初の東証マザーズ(現グロース)に上場。UI/UXデザインの強みを活かして、事業創出フェーズ、成長フェーズ、変革フェーズといった顧客の3つのビジネスフェーズに応じたソリューション体制を構築し、デザインパートナーとして顧客の課題解決を行っている。

デザインパートナーとしての支援領域は広く、変革フェーズにおいては顧客体験全体のデザイン・コンセプトの策定から、顧客インサイトの分析やクリエイティブの作成、新ブランド・商品の企画、組織デザインまでを中心に担う。

そんな中、昨年5月に、アイメイクブランド「ラブ・ライナー」などを展開するmsh株式会社と共同で開発したのが、コスメブランド「Ctrlx(コントロールバイ)」だ。
目元ケア市場に革命を起こした新発想コスメ「Ctrlx」

Ctrlxは「目元、自在にコントロール」をキャッチコピーに、イエベ・ブルベの2タイプと目元の悩み3タイプの掛け算で合計6通りのアイケア商品としてリリースされた。自分に最も適した商品がどれであるかが判断できるよう、体験設計として目元タイプ診断のコンテンツを作り、選びやすさをサポートしている。

発売に先駆け、SNSなどでの情報発信やECでの先行予約販売を行ったところ、発売当日の楽天市場では4部門でトップを獲得。多数のメディアにも取り上げられ、SNSでも話題沸騰となった。
グッドパッチは、ビジュアルデザインだけでなく、ブランドコンセプトや剤型や成分といった商品の処方を考える開発段階から伴走。クライアントであるmshからは「作り手のみの目線から脱却できた」「データを超えた発見があった」「これまでのmshにはないブランドが作れた」など喜びの声が寄せられたという。
では、なぜそもそもmshはグッドパッチと新ブランドの立ち上げを行ったのか? そしてどのようにユーザーインサイトを掴んだ商品開発を実現したのだろうか。
mshとグッドパッチ、新ブランド誕生の舞台裏
mshでは、基幹ブランドを中⼼にそこから派⽣する商品の展開はできていた。しかし、完全な新しいものはなかなか作れずに苦戦していたという。ブランドとしての次の展開を模索する中、グッドパッチとの共創を開始。ユーザーインサイトを元にした、新しいブランド開発に取り組み始めることにした。
「⽣活者の価値観やニーズが多様化し、購買⾏動も⼤きく変化している今、“真のユーザーインサイトを捉えたブランド開発”がより⼀層求められています。自社の商品はどんな人が買ってくれているのか、また支持され続けるブランドであるにはどうしたらいいのか。ブランドとして向き合う顧客像を明確化し、コミュニケーションプランを含めた統合的なブランド・商品開発が求められています」(江原氏)

リアルな悩みから生まれた“メイクとスキンケアの融合”
では、ユーザーインサイトを捉えた、顧客起点の商品企画はどのように進めていくのか。「Ctrlx」を例に、ステップごとに解説していく。
まずはステップ1、商品アイディエーション。
前例踏襲型のアプローチではアイデアの幅が限定的になり、新規ユーザーの獲得が難しい。そこでグッドパッチが提案するのが「アイデアを出す段階からユーザーにヒントをもらいにいく」方法だ。リアルな声からアイデアを紡ぎ出し、既存の前提や制約にとらわれない自由な発想を促すことで、血の通ったアイデアにしていくという。
「Ctrlx」の場合、ユーザーとの対話の中で、“メイクアップとスキンケアの組み合わせ”という、新しい目元ケアの発想へと繋がった。通常、メイクアップ商品とスキンケア商品は、それぞれ別の棚に置かれており、別のジャンルとして考えがちだが、ユーザーの「目元悩み」を深堀りしていく中で、目元のケアとメイクによるカバーを両立させるという新たな発想が生まれたのだ。

ユーザーニーズを分析し「ブランドコンセプト」への架け橋に
続いてステップ2、ユーザー体験設計。
ユーザーの体験設計を行う上でよくある課題が、実際のユーザー行動が見えないまま、ブランドとしての理想が先行してしまうケースだ。リサーチはしているもののどうもニーズを掴みきれない、ペルソナを作ったもののリアリティがなく実ユーザーの生の声が出てこない……という悩みは多くのブランド企業が抱えているものだろう。そこでグッドパッチが提案するのが、「アイデアは素早く可視化して、ユーザーからフィードバックをもらう」という方法だ。
具体的には、デプスインタビューによって深くユーザーを理解したうえで、ユーザーニーズの構造化と可視化を行うという。ここで重要なのは「これが欲しい」というユーザーの声をそのまま鵜呑みにせず、インタビューの結果を集約・分析し、インサイトを絞り出すことだという。
たとえば「Ctrlx」における調査では、「日常的なケア方法が分からない」という毎⽇のケアの積み重ねによる改善への期待とハードルがある一方で、「今この瞬間にクマをどうにかしたい」という喫緊の課題解決意欲も浮かび上がり、そこから【長期の努力と短期で隠す】両輪のケアというアイデアにつながっている。

またニーズの分析によって「負担を減らして、より健やかな⾃分でいたい」というインサイトも浮き彫りになり、これがCtrlxのコンセプトでもある「ショートカットキー」への架け橋になったという。
ブランドの共感性と受容性を確認する
次にステップ3、ブランド開発。
既存ブランドが複数ある場合、新ブランドの差別化は悩ましいポイントだろう。グッドパッチでは「ブランドの方向性に悩んだら、ユーザーに受容性を確かめてみては」と提案する。

具体的には、可視化された価値観からビジョンを言語化し、ブランドの方向性を定義。その上で、定量・定性ユーザー調査を通して、共感性と説得力を検証していく。ここでポイントになるのが、検証は一回では終わらせず、繰り返し検証と改善を行うこと。これにより、説得力が増していき、ユーザーに刺さるコンセプトが出来上がっていくという。
たとえば「Ctrlx」はパソコンのショートカットキーを想起させ、誰もが手に取りやすいビジュアルがモチーフになっているが、これも検証を繰り返す中で生まれたものだ。
「ショートカットの情緒的な世界観を表す⽅向性のブランドと、⽬元ケアであることが直感的にわかる⽅向性のブランドを並⾏して開発し、生まれた2つの方向性を定量調査によって吟味していきました。ローンチ後、コンセプトやショートカットキーモチーフへの好意的な声も多数上がり、商品の提供価値を上手くブランドに落とし込めたと感じています」(豊田氏)
オンライン×オフラインで一貫した体験設計を作る
そして最後のステップ4、コミュニケーションプラン。
ブランドが確立した後は、店舗やEC、LP、SNSなどでの展開が始まるが、ユーザーが心地良く、また負担なくブランドを体験するためには、オンライン・オフラインで一貫した体験を作ることが重要になる。
外部のデザイン会社と内部のデザイナーとで担当が異なると、タッチポイントでトンマナが揺らぐことも多い。一貫した体験を提供するには、全体コミュニケーションを踏まえたクリエイティブ制作が必要である。
「Ctrlx」では、各タッチポイントの制作前に全体のコミュニケーションを策定。各チャネルごとに施策を行い最適化するのではなく、チャネル同士の相互関係を考え、全体設計を考えてコミュニケーション体験を設計することでブランド価値の最大化を目指したという。

品質の高いブランドの露出により、発売前のリリース時点でメディアやSNS上で話題化に成功。またEC、店頭什器から診断コンテンツに誘導することで、商品の選びから購入までのスムーズな流れを実現している。
顧客起点の商品開発4つのポイント
最後に豊田氏は、明日から取り組めるポイントとして以下の4つを紹介し、セッションを終えた。
- アイデアを出す段階からユーザーに会いヒントをもらう
- アイデアはすばやく可視化してユーザーからフィードバックをもらう
- ブランドの⽅向性に悩んだらユーザーに受容性を確かめてみる
- ユーザーが⼼地よく・負荷なくブランドを体験するためにオンライン・オフラインのチャネルをどのように連動すべきか考える
ユーザーインサイトを捉えた商品開発やブランド戦略を実現!
Ctrlxの事例をもとに、具体的なアプローチや成功事例をまとめた資料をご紹介します。従来にない独自性のある商品を生み出したい方、ユーザーの真のニーズを捉えた商品開発を行いたい方は、ぜひこちらをご覧ください。