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【最終号特集】未来を創る、企業の挑戦

AI市場がどう変遷しても優位性を保つ。共創を軸に競争力を高めるパナソニックグループのAI戦略

AIを「使いこなせる」人材が1,500人以上も

──各事業でドメイン知識を持ちながら、AIを使いこなせる人材をどのように育成しているのかが気になります。

小塚:AIは2010年頃から一気に台頭し始めた技術です。その頃は弊社にも、さらに言うと日本にもAIの専門家はほぼいない状況でした。ただ、AI技術を活用するならば、責任をもって安心・安全に使えるようにという考えのもと、そうした黎明期の頃からAIには意識を向けていました。

 本格的にAI人材の育成をスタートしたのは2016年です。当時から日本でAI技術領域に力を入れていた大阪大学と連携し、「基礎編」「中級編」「上級編」とAI人材育成のカリキュラムを組み、1,000人規模の育成を開始しました。現在、AIの知識を持ち合わせているだけでなく、現場で使いこなせる人材が1,500名を超えるまでに至っています。

──直近では、自社の「AI倫理」を定める企業が増えています。パナソニックグループは、AI倫理や、AI活用時の組織的なフローをどのように定めていますか?

小塚:AI技術は活用可能性が無限大で、使い方によってはリスクもあります。パナソニックグループは「安心・安全」の企業カラーを長年大事にしてきましたので、AI活用においても「安心・安全」は重視しています。

 我々の場合、まず重要になるのは外部パートナーの選定です。共創する企業を選定する際は、安心・安全で使いやすいAI技術であること、しっかりとしたAI倫理のもと開発されたAI技術であること、ハルシネーションに強いことなどを重視しています。

 その上で、AIを活用する際には、AI倫理原則に則って進められるよう、パナソニックグループAI倫理委員会を設置しています。開発に入る前に、安心・安全でパナソニックらしいAIの使い方になっているかをチェックする形です。

パナソニックグループのAI倫理原則

・「より良いくらしとより良い社会」を実現すること
・安全のための設計、開発、検証を行うこと
・人権と公平性を尊重すること
・透明性と説明責任を重視すること
・お客様のプライバシーを保護すること

くらしにAIが組み込まれると、人々の生活はどう変わる?

──少し先の未来についてもお聞かせください。AIが搭載された家電が今後普及していくと、人々の生活や企業のマーケティングはどのように変わっていくでしょうか?

小塚:既に実現しているものからご紹介すると、冷蔵庫内にある食材をAIが自動認識し、悪くなりそうな食材・なくなりそうな食材などを知らせてくれる「冷蔵庫AIカメラ」という商品があります。冷蔵庫がデバイスとして機能し、お客様に必要な情報を送ってくれるのです。昨今はこのように様々なものが「情報」として扱われるようになっています。

 自然言語処理のAIが登場し、人とAIが言語でやり取りできるようになったことで、今後は人とAIの対話がさらに増え、曖昧で抽象度の高いもの、たとえば人の気持ちなども情報化されていくでしょう。CES2025で発表した家族支援アプリの「Umi(ウミ)」が、まさに良い例です。

 Umiは家族のくらしをより良くするために、家族との対話の中で多様なデータを学習し、様々な提案を行います。要はUmiと家族の対話そのものがマーケティングに近いことを行うようになってくるのです。

家族支援アプリ「Umi」とは

家族のウェルネスに必要な行動変容を促す「ファミリーウェルビーイングコーチ」。家族への質問とコミュニケーションを通じて学習した様々なデータをもとに、一人ひとりに最適な目標を設定し、その目標達成に向けて必要な取り組みを提案してくれる。たとえば、休日の過ごし方を提案し、家族での意見交換を促したり、運動の目標にあわせて食事の提案をしてくれたりする。

 ここで注目すべきは、「人とAIの対話の入り口」を誰が勝ち取るかだと思います。GoogleやAmazon、Appleなど大手テック企業をはじめ様々な企業が対話の入り口(スマートスピーカーやSiriなど)を展開しています。人がAIに対して喋りかける量そのものは増えるにしても限界があるので、今後はこの入り口の取り合いが起こってくるでしょう。購買に近いところはAmazonが担うようになるなど、範囲がどのように区分されていくかも注目したいです。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/06/20 09:30 https://markezine.jp/article/detail/48982

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