日本ブームの理由はどこにある?
また、工業製品以外でも日本ブランドは大きく躍進しています。アメリカからの訪日観光客は2024年に240万人(2023年比33%増)となるなど、日本ブームに拍車がかかっています。米国現地の日本食レストランでは、「Omakase(おまかせ)」スタイルが人気で、一人250米ドルからのコースを提供するレストランが米国の各地に存在します。これらは、20%以上のチップやお酒代などを入れると日本円で10万円程度になります。高額ではありますが、料理の美しさや味、美しさを考慮すると米国では相当お得なメニューです。

以上のように日本ブランド=高品質の信頼度は高いものの、人気の裏側には「割安感」があることも否めません。今後の円高や関税によって生じる米国市場での値上げに対して「選ばれるブランド」となるためには、新たなメッセージやマーケティング・PRのコミュニケーション戦略は不可欠です。
突破口は「日本品質への信頼」と「ストーリーテリング」
米国のマーケティング・PRにおいて、現在最も重視されている戦略はストーリーテリングとソートリーダーシップ(※)です。これらは、ブランドが消費者との深い関係を築く上で欠かせない要素となっています。さらに、消費者が現実逃避的な体験を求める「エスケーピズム」の傾向も強まり、魅力的で幻想的な物語を提供することが重要視されています。また、個々のニーズに応じたパーソナライゼーションや、真実味のあるオーセンティシティも、消費者の信頼を得るための鍵となっています。これらは著者が日本企業に対しアドバイスする中で、一番強調していることです。
※ソートリーダーシップ:特定の領域における革新的なアイデアやソリューションを、他のプレイヤーより早く発見し、示すことでその領域における主導的地位を確立することを指します。

日本企業は、製品のスペックや機能を前面に押し出す傾向がありますが、米国市場では異なるアプローチが求められます。米国のカタログやオンラインショップでは、製品の技術的な詳細よりも、消費者がその製品を使用することで得られる体験や価値を強調することが一般的です。この違いは、消費者の購買行動やブランドへの期待の差異から生じています。日本市場でのマーケティングでも、アップル(創造的な活動を支援)とソニー(製品の性能)、ナイキ(アスリートの挑戦や成功)とミズノ(機能性や素材)といった対比を見ると明らかです。