20周年を迎え、進化し続ける「Synergy!」
MarkeZine編集部(以下、MZ):まずは自己紹介をお願いします。
川島:システムエンジニアとしてキャリアをスタートし、プロジェクトマネジメントも経験しました。その後、2023年から「Synergy!」のプロダクトオーナーを担当しています。現在は機能・仕様や品質の責任者として、開発の優先順位や全体計画、ロードマップ策定などを行っています。
金沢:私はSaaSの営業からデジタルマーケティング支援のコンサルティング営業、営業責任者、CX統括などを経て、現在はクラウド事業部長を務めています。当社が扱うSaaSとデジタルマーケティング支援の売り上げ責任が私のミッションです。
MZ:「Synergy!」についてご紹介いただけますか。
川島:「Synergy!」はCRMを起点に出発したツールで、現在はマーケティング領域における様々なペインに対応可能な「マーケティングSaaS」へと進化を続けています。マーケターの日々の業務に寄り添い、成果につなげることを目指しています。
現在は約8,700件の導入実績があり、活用いただける業種業界はBtoB/BtoCを問いません。一般企業だけでなく行政や金融機関など高いセキュリティレベルが求められる分野や、小売り・エンターテインメントなど消費者に近い業態まで、幅広くご利用いただいています。
機能としては、顧客情報を統合し一元化するデータベースを中心に、メール・LINE・アプリなどの様々なチャネルでのメッセージング機能、アンケートフォーム機能、Webトラッキング機能など多様に備えています。2025年6月に誕生20周年を迎え、これに先立ち2024年11月にはブランドリニューアルを行いました。

商売人の視点から生まれたCRMツールの変遷
MZ:「Synergy!」がどのように進化してきたのか、これまでの歩みを教えてください。
金沢:「Synergy!」のアイデアの源流は、紳士服店の子息だった当社取締役会長の谷井の発想にあります。谷井は商売人の視点から「お客様にもっと情報をしっかり届けたい」と考え、生み出したのが「Synergy!」だったのです。情報を届けることやお客様と会話することは、マーケティングの本質。つまり、マーケター発想が根底にあります。
そんな「Synergy!」は、世の中のマーケティングの潮流に合わせ進化を続けてきました。2005年のサービス開始当時は「一斉に情報を届けたい」というニーズが強かったため、一斉メール配信からスタートしました。

MZ:2005年といえば、まだスマホもなく「ガラケー」の時代ですよね。
金沢:その後、お客様それぞれに合わせたメッセージを送るOne to Oneマーケティングの時代へと変化。合わせて「Synergy!」でも、顧客属性に基づくターゲティング機能を実装しました。
One to Oneマーケティングの流れが進むと、今度は細かいターゲティングを行うことによる運用担当者の負荷の増加が課題になりました。そこで、シンプルなターゲティングと運用負荷を下げる自動配信やHTML編集の簡素化といった機能を進化させるとともに、マーケティングオートメーションの要素も取り入れました。
最近では、GoogleのガイドラインやOutlook、iCloudなどのシステム面の変化により、せっかくターゲティングしてもメッセージが届きづらくなる、根本的な課題が生じています。そこで現在当社では、メッセージを顧客に確実に届けるための技術実装にも注力しています。配信速度の調整、IPブロック対策などは、マーケティングツールとして20年間培ってきたノウハウが活きているポイントでもあるのです。
“CRMといえば「Synergy!」”の次なるステージは?
MZ:「Synergy!」は2024年11月にリニューアルを実施されたとのことですが、その背景を教えてください。
金沢:20年前、CRMの認知度がまだ低かった時代からの積み重ねで「CRMといえば『Synergy!』」という認知を獲得できました。ITサービスのレビュープラットフォームでも23期連続でリーダーとして評価いただきました。
しかし、マーケティングの潮流が変わり、マーケターの役割も対応領域もどんどん拡大しています。かつてCRM担当者の業務範囲は限定的でしたが、今では集客も含めたデジタルマーケティング全体に広がっています。私たちもこのような変化に合わせて、「Synergy!」の機能を拡充してきました。
2024年は当社の新規獲得の導入件数も売り上げも二桁成長しており、マーケターが求める機能を提供できていると感じています。「Synergy!」がCRMの枠を既に超えている実態に合わせ、20周年という節目のタイミングで「マーケティングSaaS」としてリニューアルを決断しました。
MZ:リニューアルにあたってロゴも変更されましたよね。
金沢:はい。私たちは多くの企業のデジタルマーケティングを支援する中で、「マーケティングの本質は企業とその先にいる消費者・顧客との双方向コミュニケーションにある」と実感しています。新ロゴはその考えを表現したものです。

金沢:ロゴマークにおけるピンクの部分は消費者の温度感や体温を表し、緑の部分は企業からのメッセージを表しています。双方の矢印が重なる部分が赤い「S」の形になっており、双方向コミュニケーションをサポートする存在としての「Synergy!」の立ち位置を表現しています。マーケターの方々と20年歩んできた中で、最も本質的だと考える双方向コミュニケーションをロゴに込めたデザインとなりました。
「プロダクト」「人」の両輪でマーケターを支援
MZ:リニューアルを経て、「Synergy!」はこれからどのような姿を目指すのでしょうか?
金沢:私たちの支援の特徴は、プロダクトだけでなくコンサルティングサービスも提供している点です。現在約20名のプロデューサーがおり、システムと人の両輪でマーケターの方の日々の課題をカバーしています。SaaSを提供する会社が社内にこれだけの数のプロデューサーを抱えているのは珍しく、顧客からも高く評価をいただいています。

金沢:マーケターの役割が拡大する中、ツールのみですべてをカバーするのは現実的に難しいと考えています。そのため、システムと人でマーケティング課題を解決していく支援体制は今後も継続してまいります。またこれによって、実際のマーケティング現場で「何が必要で何が不要なのか」を高い解像度で把握でき、リアルなニーズを捉えた機能開発ができることを強みにしていきます。
「現場起点」で、ペイン解消に向けた機能開発を実現
MZ:具体的にどのような機能開発を行っているのでしょうか。
川島:マーケターの方にとって、Webサイト上での顧客体験の設計は優先度が高まっています。サイト上の接客による購買の後押しやスムーズな登録導線の用意など、サイトを訪れてくれたお客様のユーザー体験が向上する機能の開発を進めています。
直近では「ポップアップ機能」を6月にリリースします。マーケ施策の結果サイトに訪問してくださった方に目的に合わせたページに案内したり、最適化されたメッセージ表示を行ったりすることで離脱率を減らし、CVRの改善に寄与できます。

川島:既にリリースした機能としては、フォームの「アクセスレポート機能」があります。資料請求やアンケートなどの登録フォームで、なぜか登録が完了しないケースの原因を解析するためのものです。「この入力項目で離脱者が多い」といった傾向がわかれば、その項目を任意にしたり削除したりすることでコンバージョン率の改善につながります。
さらに、一度登録したユーザーが休眠状態になった後、最近サイトにアクセスしたホットリードを検知する機能もリリースしました。これらはすべて現場の課題を起点とした機能開発で、マーケターのペインを解消することを目指しています。
いかに効率化するかより、いかに成果につなげるか
MZ:今後のビジョンや展望についてお聞かせください。
川島:基本的には今後もお客様の課題解決を中心に進化を続けます。昨今、マーケターの方々が直面している課題として、施策の費用対効果の可視化があります。たとえばメール配信がどの程度売り上げに寄与しているのか、どの広告が最も効果が高いのかなど、判断材料となるデータの可視化に注力していきます。
また、マーケティング業務が多岐にわたり時間や労力が足りないという課題に対しては、AIエージェントなどを活用した生産性向上や業務効率改善につなげていきたいと考えています。これらを通してマーケターの業務に貢献し、「Synergy!」のブランドをより身近に感じていただくとともに、現場からのフィードバックをプロダクトに反映する流れは今後も加速させていきます。
金沢:2025年は「AIエージェント元年」といわれ、私たちもその領域に注目しています。既に仮想のAI顧客を生成する「DAYS GRAPHY」や、AIでコンテンツを作成する「Writing Assistant」などの生成AIを活用したサービスを当社ではリリースしています。
マーケターの役割が拡大する中、より成果も求められるようになっています。かつては会員数や継続率などがCRMの活動指標として重視されましたが、今ではROI(投資対効果)という結果が問われています。
現在マーケターが直面する課題の一つに、顧客理解があります。従来はデータ分析やグループインタビューなど、いずれも時間とコストがかかる方法を取っていました。しかし、生成AIを使えば短時間で顧客像を作成し、AIエージェントとして24時間会話できるようになります。
またパーソナライズが進むと、クラスターごとに異なるクリエイティブが必要になり労力が増大する課題もあります。こちらも生成AIを活用することで、効率的に多くのコンテンツを作成できます。
重要なのは「効率化だけでなく、成果を出すこと」です。そのためには、どのようなデータをAIに与えるかが重要であり、ここが私たちの独自性になると考えています。生成AIによる業務効率化と、成果を出すためのノウハウやアルゴリズムを組み合わせることで、真にマーケターに必要なソリューションを提供していきたいですね。
MZ:これからの「Synergy!」のアップデートにも注目していきたいと思います。
金沢:6月25日(水)~26日(木)に、「Synergy!」20周年を記念したオンラインのカンファレンス「Marketing Solution Days」を開催します。マーケターが現場で直面するTOP20の課題に対して、当社だけでなく知見を持った39社のパートナー企業とともに、解決策を提案する場にしたいと考えています。2日間で23セッションの開催に加えて「Synergy!」の最新アップデート情報も公開予定ですので、ぜひご参加いただければと思います。
撮影場所:WeWork 麹町