事例:楽天が2018年にスタートした「EARTH MALL 」プログラム
このバランスを工夫する1つの方法が、商品の性能や価格だけでなく、作り手の背景や想いを丁寧に伝えることだ。これが「選ばれる理由」につながることもある。
たとえば、楽天が展開する「EARTH MALL with Rakuten」は、「未来を変える買い物を。」をコンセプトに2018年にスタートした「EARTH MALL 」プログラムにおける、実際に買い物ができるサイトの代表例として知られている。FSC認証の木材製品やMSC・ASC認証の水産物、RSPO認証のパーム油製品など、国際基準を満たした商品を紹介しているが、特徴的なのは、商品のスペックだけでなく、生産者の声や背景を「読み物」として合わせて紹介している点である。
消費者は「誰が、どこで、どのように作ったのか」を知ることで、その商品の持つ意味を再確認できる。このような取り組みは、単なる情報提供にとどまらず、「共感」を生む仕掛けとなっており、サステナビリティを「自分ごと」として捉えて、その価値を実感してもらうための工夫の1つだと言えるだろう。

求められるのは実行力~マーケティングに問われる社会的文脈
今回は、サステナブル・マーケティングを進める上で欠かせない「効果」「ポジショニング」「ターゲット理解」の3つの視点から、企業が直面する実務的な課題とその対応策を読み解いてきた。生活者の行動や価値観が変化する今、社会的な価値をどのようにブランドに取り込み、事業の成長へと結びつけていくか。そのためには、マーケティングの知恵と現場感覚に根ざした洞察が、これまで以上に重要になっている。
気候変動や人口減少といった社会課題が進行する中、サステナビリティはもはや理想論ではなく、企業戦略の中核にあるテーマになりつつある。企業に求められているのは、社会的な価値を「コスト」ではなく「選ばれる理由」として再設計し、生活者の共感と行動を引き出す実行力と言えるだろう。
次回はさらに一歩踏み込み、「どのようなターゲットに、どのような価値を届けるべきか」という視点から、生活者をセグメント別にデータで可視化し、企業が実務として取り組むべきアプローチについて具体的に見ていきたい。