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1年でCVR約3倍、ROASは10倍に!ディーエイチシーはLINE戦略をどう改革したのか

 化粧品・健康食品を展開するディーエイチシー(以下、DHC)は、LINE公式アカウントで4,300万人という圧倒的な友だち数を誇る。しかしこれまでは、全体的なコンテンツ配信がLINEにおけるコミュニケーションの中心であるものの、膨大な顧客データを活用しきれていない課題があった。そこで2024年9月から電通デジタル支援の元、パーソナライズされたOne to Oneコミュニケーションへと舵を切り、1年足らずで成果を挙げているという。本記事では、両社の担当者に取り組みについて聞いた。

第二創業期に入ったDHCが挑む、LINEマーケティング変革

MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに自己紹介をお願いします。

須田:DHCで、化粧品と健康食品を中心に販売促進業務に従事してきました。これまで休眠顧客のリアクティブ施策や、主力商品のCRM施策立案、販促ツール制作などを手がけ、2024年9月からEC事業のCRO(コンバージョン率最適化)とLINEの運用を担当しています。

三ツ橋:DHCにて、ハガキやFAX注文・モール受注・メルマガ配信・サイト運営を担当してきました。現在はLINEを通じたお客様対応やコミュニケーション業務を担い、配信スケジュールの組み立てから配信内容の確認、電通デジタル社とのネクストステップ検討などを行っています。

キム:電通デジタルに入社以来一貫してCRM領域に携わり、現在はLINEを専門に担当しています。メディア提案からツール提案、プランニング、キャンペーン設計まで、クライアント様の課題に合わせたソリューション提供に従事しています。

MZ:まず、DHCのマーケティング戦略の全体感を教えてください。

須田:DHCでは2023年4月から新経営体制に移り、第二創業期と位置づけてマーケティング戦略の見直しを行っています。2024年5月からは新しいパーパスとして「しあわせを、ふつうに。」を策定。事業成長とウェルビーイングブランドの実現に向けて新たな価値創造に取り組んでいます。この戦略の根底には、お客様の日常に寄り添い、美容や健康の視点から自然で快適なブランド体験を提供することがあります。

DHCのパーパス、ミッション、ビジョン、バリューのピラミッド図(画像出典:https://top.dhc.co.jp/company/jp/about/)
DHCのパーパス、ミッション、ビジョン、バリューのピラミッド図
(画像出典:https://top.dhc.co.jp/company/jp/about/

須田:チャネルとしては会報誌やDM、アプリ、メルマガなどがありますが、LINEはとりわけお客様の日常に寄り添ったプラットフォームであり、パーソナライズ強化の要と位置づけています。

株式会社ディーエイチシー 通販事業ユニット デジタルプロモーショングループ 須田潤氏
株式会社ディーエイチシー 通販事業ユニット デジタルプロモーショングループ 須田潤氏

三ツ橋:チャネルごとの役割分担も明確にしています。LINEではよりライトなお客様にアプローチし、メルマガはロイヤルなお客様向けといった使い分けをしていますね。LINEを入り口として新たなお客様との関係を作り、ブランドや商品への関心が高まったところで他のチャネルへとコミュニケーションを拡げていく形を想定しています。

4,300万の友だちと膨大なデータを活かしきれていなかった

MZ:LINEに注力する理由を聞かせてください。

須田:DHCのLINE公式アカウントは2013年に開設しました。当初LINE公式アカウントの友だちは若い層が中心だったため、10~20代の若年層の増加を目的として導入しました。

 同時期に当社のキャラクター「タマ川ヨシ子(猫)」のLINEスタンプをリリースし、これまで計34回配信してきました。

「タマ川ヨシ子(猫)」のスタンプ
「タマ川ヨシ子(猫)」のLINEスタンプ一例

三ツ橋:友だち追加の経路としては、無料LINEスタンプからの流入が非常に多く、現在では4,300万人の友だち数となっております。日本の人口が約1.2億人なので、大体3人に1人はDHCのLINE公式アカウントの友だちということになります。

株式会社ディーエイチシー 通販事業ユニット デジタルプロモーショングループ 三ツ橋美緒氏
株式会社ディーエイチシー 通販事業ユニット デジタルプロモーショングループ 三ツ橋美緒氏

MZ:4,300万人という規模は驚異的ですが、課題もあったのでしょうか。

須田:これまでは全体配信中心のアプローチでした。One to Oneと呼べる施策もかなり限定的で、ROASは高いものの売り上げ全体へのインパクトは低く、お客様の膨大なデータを活用しきれていないのが課題でした。そこでLINEを、売り上げ拡大にとどまらず、お客様との関係性を深めロイヤリティや継続利用を促進するためのチャネルとして再構築していきたいと考えていました。

LINEの重点戦略を転換!DHCの取り組み

MZ:DHCのLINE施策においては、2024年8月から電通デジタルが支援に入ったとのことですが、どのような取り組みをされましたか?

須田:特に大きい転換点としては、全体配信からセグメント配信へと重点方針を変えたことです。具体的には、DHC会員様のIDとLINEのIDの連携状況に応じたリッチメニュー(LINEのトーク画面下部に固定で表示されるメニュー)のタブ切り替えを可能にし、会員ステータスに応じたコンテンツの出し分け、個別オファーの提示が可能になりました。

 また、リッチメッセージ(画像やテキスト情報を一つのビジュアルにまとめ、簡潔で分かりやすい訴求を実現できる機能)においてスクロールを促すような表現を活用し、一度に複数の配信を行った場合のインプレッション向上を図ったり、ユーザー行動に連動した自動配信を行ったりしています。

MZ:ユーザー行動に連動した自動配信とは、具体的にどのようなものでしょうか。

須田:誕生日を迎えられたお客様に対して「今月買うとお得」というクーポンを提供したり、クーポンを付与されているけれど使用していないお客様に対してリマインドのメッセージを送ったりする配信を、自動的に行うものです。

 最近は、アンケート回答によるプレゼント企画なども、DHC会員様のIDとLINEのID連携における促進施策として行っています。

DHC LINE公式アカウントのリッチメニュー、リッチメッセージのイメージ(クリックして拡大)

高度なパーソナライゼーションを実現するために

MZ:電通デジタルとして、LINE活用支援で意識されたポイントを教えてください。

キム:特に重視した部分は、「何のために」という目的、そして「誰に対して」という対象者です。

 LINE公式アカウントの友だち4,300万人以上といっても、中にいらっしゃるお客様は本当に様々です。たとえば、購入経験があるお客様とそうでないお客様、また購入経験がある方の中でも、オフライン店舗での購入はあるがオンラインでの購入経験がない方などもいらっしゃいます。キャラクター「タマ川ヨシ子(猫)」のファンだけど、購入経験はないといったお客様もいます。そういった一人ひとりのニーズに合わせた配信や情報提供を、常に意識しています。

株式会社電通デジタル ソーシャルエンゲージメントデザイン部門 LINEプランニング部 第一グループ キムヒョンジ氏
株式会社電通デジタル ソーシャルエンゲージメントデザイン部門 LINEプランニング部 第1グループ キムヒョンジ氏

キム:パーソナライズ配信強化のため、当社開発のLINE APIツールを活用いただいています。個別のお客様の購入状況や利用状況に応じたパーソナライズ配信を行うことができ、クーポンのリマインドや購入ステータスに合わせた優待のご案内なども可能です。タイミングと配信内容を最適化することによる、エンゲージメントの向上が狙いです。

 ID連携についても、いくつかの施策を実施させていただきました。DHC会員様のIDとLINEのIDの連携を条件にスタンプやLINEポイント、クーポンなど様々なインセンティブを付与し、最も効果的な施策を検証。今後も、新しいインセンティブ施策の可能性も含めてPDCAを回していきたいと思っています。

CVR約3倍、ROASは10倍に。方針転換が奏功

MZ:電通デジタルとの取り組みについて、DHCとしてどのように感じていますか?

須田:配信のプランニング以外にも、非常に手厚い支援をいただいています。毎週の定例会議に加えて、クリエイティブを深掘りする場、システム連携に関する技術的な検討会、月々の成果報告、さらにLINEヤフー社との合同ミーティングなど多面的な体制が整備され、総勢約30名の方々に携わっていただいています。

三ツ橋:リッチメニューやメッセージ配信のクリエイティブ部分は、配信クリエイティブのA/Bテストを繰り返し改善する取り組みを一緒に実施させていただいています。私たちの想定とは違うクリエイティブの反応がいいこともあり、現在もテストをしながら効率の良い配信施策を目指しています。

MZ:これまでお話しいただいた取り組みの成果はいかがでしょうか。

須田:全配信に偏っていたLINEの配信を見直し、パーソナライズ配信に大きく舵を切ったことで、従来に比べCVRは約3倍になりました。ユーザー行動に連動した自動配信においても、従来の配信に比べてROASが10倍を超える成果が出ています。

キム:この他、ID連携者数はご支援を始めてから120%以上になりました。これも大きな成果の一つですね。

数千のシナリオで目指す、究極のOne to Oneコミュニケーション

MZ:最後に、今後の展望をお聞かせください。

須田:今後は、より高度なOne to Oneコミュニケーションの実現にチャレンジしていきたいと思っています。理想としてはお客様一人ひとりの行動に応じてメッセージを届けることです。これから数百数千のシナリオを作っていきたいと思っており、最適な情報やサービスを提供することで顧客満足と売り上げ拡大を実現したいですね。

 個別最適化の取り組みは、私たちのパーパス「しあわせを、ふつうに。」とも深く関係していると考えています。お客様にとって自然でストレスのない、日々の生活の延長線上にあるブランド体験価値を提供することは、まさにその実現に向けた一歩といえます。

三ツ橋:DHCのサイトへの訪問はLINE経由も多いので、ID連携の促進と配信精度の向上は共通の課題です。一方で、ID連携者へのパーソナル配信は効率よく売り上げを積み上げることができているので、配信精度の向上を図ることで、効率的な売り上げ拡大と顧客定着につながると考えています。今後は今まで以上にお客様に寄り添ったパーソナルな配信をお届けしていきたいですね。

キム:より一層、顧客解像度を上げて、お客様の体験価値の高度化を図っていければと思っています。短期的な売り上げはもちろん大切にしながらも、中長期的にお客様がDHCブランドを好きになり、つながり続けたいと思っていただくことが重要です。

 そのためにはやはりデータを使っていくことが必要となります。当社としてデータビジネス領域は業界でも先駆けて注力してきた部分なので、DHC社がお持ちの1stパーティーデータはもちろん、国内電通グループ(dentsu Japan)が持つ独自のデータや、3rdパーティーデータも活用可能です。テレビ視聴データとデジタル施策を掛け合わせた施策も可能ですので、こういった強みを活かしながら顧客解像度をもう1段階上げ、より細かなマーケティング施策に落とし込んでいきたいですね。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社電通デジタル

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/08/04 10:00 https://markezine.jp/article/detail/49320