SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第114号(2025年6月 最終号)
特集「未来を創る、企業の挑戦」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

デジタルで広がる、オフライン広告の可能性

2025年上半期に話題になったOOH15選!隠れた仕掛けから応援広告まで最新トレンドを解説

「ユーザーの声」をそのまま使って共感創出

 ここ最近、事前に一般ユーザーから募集したメッセージや感想、SNS投稿を載せたOOHとよく遭遇するようになった印象があります。

 たとえば、2月に実施されたパナソニックの広告では、家事を家電に頼ることへのプレッシャーやユーザーの声をあえて表面化。「忙しい母が手洗いしてたんだから、自分も頑張るべき?」といった“モヤモヤ”を代弁しつつ、Q&A形式で共感を生むことで食洗機へ関心を引く設計になっていました。

画像を説明するテキストなくても可
(クリックすると拡大します)

 4月に渋谷駅で展開された、ヤマハのアプリ「Extrack」の広告では、Xで発信されたバンド活動への憧れや悩みを拾い上げつつ、Extrackで解決できることを伝える内容で展開。悩みを可視化した上で、Extrackならどのような解決策があるのか?を自然な口調で語り掛けたようなビジュアルが印象的でした。

画像を説明するテキストなくても可
(クリックすると拡大します)

 また、iRobot社「ルンバ」の広告も「一人暮らし」「子育て」など具体的なシーン別で、「自社製品購入者アンケート」の回答を参考に、ユーザーのリアルな声を用いて共感を生み出すような広告となっていました。

画像を説明するテキストなくても可
(クリックすると拡大します)

 これらの事例に共通するのは、「共感」の入り口を広告側が作るのではなく、「ユーザーの言葉」をそのまま入り口に据えるという発想です。企業目線のメッセージではなく、「既に誰かが感じたこと」をそのまま載せることで、「私もそう思ってた」「それ、わかる」と共感してもらい、興味関心につなげる狙いがあるのではないかと思います。

 特にOOHは、サイズや面のバリエーションが多く、こうした多数の意見・感想を「並べる」演出と相性が良いと言えます。OOHという場でまとめて見せることで、広告自体が「共感のアーカイブ」のような存在になっていたのが特徴的でした。

意外性のある掛け合わせで話題化

 企業間でのコラボ広告自体は決して珍しいものではないですが、少し意外性を感じたコラボ事例があったので紹介します。

 不動産サービス「SUUMO」は、1月に『こちら亀有公園前派出所(こち亀)』、2月に『ヒプノシスマイク』とコラボ広告を展開。

 前者は、緑色のスーモカラーで統一された壁面に、作中のキャラクターである両津勘吉が住まい探しに右往左往する様子をコマ形式で表現。駅を通りながら一連のストーリーを楽しめる構成になっていました。

画像を説明するテキストなくても可
(クリックすると拡大します)

 一方後者のコラボ広告は、渋谷・池袋など広告が掲出された場所にちなんで、キャラクターごとの“こだわり検索条件”を描き、SUUMOの機能を間接的に描いたビジュアルとなっていました。

画像を説明するテキストなくても可
(クリックすると拡大します)

 6月に実施された、サントリー「伊右衛門 特茶」と「歩きスマホ防止」啓発広告の組み合わせでは、啓発ポスターに寄せる形でデザインが作られていました。ほぼ同じデザインの2枚が連なっていることに違和感を覚え、よく見ると内容が異なる……と気づいて、ハッとするような仕掛けとなっていました。

画像を説明するテキストなくても可
(クリックすると拡大します)

 異なるジャンルのコンテンツを組み合わせるコラボ企画は、新たな顧客層にリーチできるだけでなく、ファン同士の拡散や話題化も期待できます。また、クリエイティブでも表現の幅が広がり、ユニークな切り口で商品を紹介できるのが大きなメリットと言えます。

 SUUMOとヒプノシスマイクの事例では、登場キャラクターの理想の住まいという設定を通じて、「不動産検索機能」を自然に説明しています。実際、SNS上では各キャラクターの部屋探し条件に対するツッコミ発信も数多く見られましたが、受け手にとって広告がコンテンツの一部のように受け取ってもらえる点はポイントと言えそうです。

次のページ
特殊印刷を活用して話題化

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
デジタルで広がる、オフライン広告の可能性連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

加藤 誠也(カトウ セイヤ)

株式会社ビズパ アドクロ編集長

 食品メーカーで営業職を経験後、2019年に同社入社。主に、編集長として広告・マーケティングの情報メディア「アドクロ」のコンテンツ制作を担当。「広告巡礼」を日課としており、Xでは見つけた広告事例に考察を添えて発信、テレビ出演やセミナー登壇も多数。 

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/07/14 08:30 https://markezine.jp/article/detail/49380

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング