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第114号(2025年6月 最終号)
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デジタルで広がる、オフライン広告の可能性

2025年上半期に話題になったOOH15選!隠れた仕掛けから応援広告まで最新トレンドを解説

特殊印刷を活用して話題化

 特にここ数年の間で、特殊印刷で展開される広告が増えた印象があります。2025年上半期もいくつか特殊印刷の事例と遭遇しました。

 たとえば、2月に実施されたアニメ『アオのハコ』の広告では、池袋駅で特殊印刷(ベローズプリント)を用いて展開。見る角度によって異なるキャラクターが浮かび上がる仕掛けとなっていました。

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 さらに、1月に実施されたドラマ『秘密 THE TOP SECRET』の広告では、フラッシュ撮影によって出演者の「脳内」が浮かび上がる演出が施された広告を展開。SNS上では、実際に覗いてみた方のコメント投稿が数多く見られていました。

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 同様にフラッシュ撮影を使った仕掛けで、4月にHuluが実施した劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像』公開記念広告では、フラッシュ撮影によって、過去の名シーンと名台詞が浮かび上がってくる仕掛けとなっていました。

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 特殊印刷を使った演出には、通りすがりに「見かけた」だけの広告を、思わず「参加したくなる体験」へ発展できる点に価値を感じています。遭遇できた喜びを生み出し、ユーザーとの接点をより濃い記憶として残すことが期待できます。一方で、特殊印刷はあくまで表現の一つに過ぎません。

 「フラッシュ撮影」を例にとると、今のスマートフォンは夜間でもフラッシュなしで綺麗に撮れるため、フラッシュ自体使ったことがない人も多いと思います。実際、私も今のスマホに変えてから1年以上、フラッシュ機能の使い方を知りませんでした。さらに、人通りの多い場所ではフラッシュ撮影にためらいを感じる人も少なくないはずです。

 演出自体はユニークですが、この演出を使えば確実に話題化するか、といったら話は別です。人流が多い場所ほど、人が避けるまで「待ってでも撮影したい」だけの魅力があるか、撮ってみたくなるような強いコンテンツ力・話題性があるかは、検討する上で重要なポイントだと考えています。

熱量に驚かされる応援広告

 企業の広告も盛り上がっていますが、個人が資金を出資しあって“推し”の広告を出す「応援広告(センイル広告)」も盛り上がりを見せていました。

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 たとえば、4月に実施されたFRUITS ZIPPERの真中まなさんの応援広告は、東急プラザ表参道「オモカド」エントランスを含め、原宿エリアで複数の広告枠をジャックする形で展開。

 2024年は渋谷駅構内で柱型サイネージをジャックする形で展開されていたのが記憶に新しいですが、それ以上の規模感で私も正直驚きを隠せませんでした。

 オモカドを管理する東急不動産のサイトには、エントランスジャックの費用は600万円(税別)/1週間〜と記載されており、そのスケール感にSNS上で驚きの声が上がっていました。

 また、5月に実施されたME:I高見文寧さんの応援広告は新宿エリアを中心に、全国複数箇所で展開されていました。同広告では、クラウドファンディングで資金を募っていた点が印象的で、80万円の目標に対して486万円を達成する盛り上がりとなっていました(参考:ME:I 高見文寧 2025年生誕企画【文寧飯店】

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 4月に実施された、パンダドラゴン・あづさんの卒業にあわせた応援広告は、ファンの想いが詰まった温かい施策でした。改札内というロケーションにもかかわらず、掲出された広告にはファンからの手書き付箋がびっしり。2日間で約700枚ものメッセージが集まり、感謝や応援の言葉で埋め尽くされました。

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 B0・B1サイズの駅貼りポスターが主流だった応援広告ですが、この半年は特に大型枠で見る機会が増えた印象があります。ファンが参加し、想いを可視化できる“場”として機能しているのが印象的です。

 最近では、SNS(Xやスレッズなど)、LINEのオープンチャット、応援広告専用のクラウドファンディングなどを使って、匿名で仲間を集めやすくなっています。さらに、PayPayのような送金サービスが普及したことで、応援広告に取り組みやすい環境が整いつつある印象があります。こうした応援広告は、今後さらに増えていくのではないでしょうか。

 最後に、6月に展開され、たちまちSNSで話題となった『頭文字D』の広告事例を紹介させてください。

 連載開始30周年の『頭文字D』、最終巻発売の『MFゴースト』にちなんで展開された広告は、(1)エリアごとに異なる新聞広告(2)渋谷駅での大型広告の2段階で展開されました。中でも後者は、国産自動車メーカーのロゴがズラッと並ぶビジュアルで、そのスケール感はこれまで多くのOOHを見てきた中でも異例で、まさに壮観でした。

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東京版の朝日新聞(左)と読売新聞(右)。地方版は異なるデザインで展開され、2紙を組み合わせることでビジュアルが完成する仕掛けに
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 応援広告といえば、個人ファンが“推し”を応援するものが一般的ですが、今回は企業が作品を“推す(応援する)”という珍しい形にも感じます。筆者自身も作品のファンとして高揚感を覚える広告でした。

 2025年下半期は、どんな広告に出会えるのか、今から楽しみです。

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この記事の著者

加藤 誠也(カトウ セイヤ)

株式会社ビズパ アドクロ編集長

 食品メーカーで営業職を経験後、2019年に同社入社。主に、編集長として広告・マーケティングの情報メディア「アドクロ」のコンテンツ制作を担当。「広告巡礼」を日課としており、Xでは見つけた広告事例に考察を添えて発信、テレビ出演やセミナー登壇も多数。 

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/07/14 08:30 https://markezine.jp/article/detail/49380

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