「検索」や「SNS」にも 多様化が進む一方、利用の壁も
これまでは主要な生成AIチャットの利用率推移を通じて、生成AIの利用が拡大している現状をご紹介しました。さらに、最近では既存のサービスに生成AI機能を統合する試みも活発化しており、サービスの多様化が進んでいます。ここからは2025年3月に生活者21,013人に対して実施したアンケート調査の結果を通じて、サービスごとの利用実態をより詳細に紐解いていきましょう。
図表3は、生成AIチャットや既存のサービスに搭載された生成AI機能を含めて、各サービスの認知率と、PC・スマートフォン・タブレットなどいずれかの端末における利用率を示したものです。

ベース:18~75歳男女
n=21,013
認知率上位10項目を降順ソート
生成AIチャットとしては、ChatGPT、DeepSeek、Gemini、Copilotの4サービスがランクインしました。特にChatGPTは認知率32.1%、利用率14.0%と、いずれも他サービスを大きく引き離しており、この分野をリードする存在であることがわかります。
全体で4位にランクインしたDeepSeekは、2025年1月に発表された新モデル「DeepSeek R1」がコストに対する性能の高さから大きな注目を集めました。一方で、それと同時にセキュリティに関する懸念も報じられた影響か、認知率のわりに利用率が低いことが特徴的です。
GeminiとCopilotは、いずれもWebブラウザや検索エンジンと統合されており、通常の検索結果と並行して生成AIの回答も表示されるようになりました。そのため、アンケート回答における利用率ではChatGPTに劣りますが、検索画面を通じて無意識にその機能を活用しているというユーザーも一定数存在すると考えられます。
既存のサービスに搭載された生成AI機能としては、Yahoo!検索、Yahoo!知恵袋、X、LINE、Yahoo!ニュース、メルカリ、Zoomなど、日常生活において普段からよく利用されているサービス名が多く見られます。特にGrokは昨年末にXの一般ユーザーへと解放されたことで、実際にGrokの投稿を目にする機会が増えました。X自体の膨大なユーザー基盤と、生成されたコンテンツを気軽に共有・拡散しやすいプラットフォームの性質が、Grokの成長に大きく寄与していると考えられます。
しかし、ほとんどのサービスで、利用率は認知率の半分以下にとどまっていることには注意が必要です。認知は広がっているものの、「知ってはいるが使ったことはない」層が多く、実際の利用に至るまでのハードルが依然として高いことがうかがえます。DeepSeekの例に見られるように、単なる話題性や機能の搭載だけでは利用には直結せず、セキュリティ等に関する懸念の解消や、具体的な利用機会・きっかけの創出が不可欠であるという課題が浮き彫りになっています。
PCからスマートフォンへ、利用シーンのシフトが進む
アンケート調査からは、生成AIを利用するデバイスの面でも興味深い実態が見えています。図表4は、デバイス自体の利用割合とデバイスを通じた生成AIの利用経験をPC・スマートフォン別に比較したものです。

ベース:18~75歳男女
n=21,013
図表4の示す通り、生活者のうちPCを通じて生成AIを利用したことがあると回答した人は10.4%、スマートフォンを通じて生成AIを利用したことがあると回答した人は12.3%で、スマートフォンからの生成AI利用者数はPCを上回っていることが確認されました。これは、スマートフォンの元々のデバイス保有率が高いことに加え、図表2で見たように、スマートフォンからも気軽に生成AIを利用できるアプリの普及が進んでいることが背景にあると考えられます。また、スマートフォンユーザーの多くは生成AIをまだ利用していないことから、今後、こうした層が生成AI機能を活用するようになれば、利用シーンはさらに大きく拡大するポテンシャルを秘めていると言えるでしょう。