広がり始める“デバイスならでは”の活用方法
スマートフォンからの利用が中心になりつつある中、デバイスごとの生成AIの利用傾向に差は見られるのでしょうか。本章では利用サービスと利用目的の2つの観点からその違いを分析します。
まず、図表5は各デバイスの生成AIユーザーが、どのサービスを利用しているのかを示した利用率ランキングです。

ベース:各デバイスにおける生成AIサービス利用者
上位5項目
PC・スマートフォンともに、ChatGPTの利用率が7割を超え圧倒的な首位でしたが、PCにおける利用率の2位はCopilot、スマートフォンの2位はGeminiと違いが見られました。両者は、Webブラウザや検索エンジンと統合するアプローチでは類似していますが、MicrosoftがWindowsやEdgeといったPC中心のエコシステムに強みを持つのに対し、GoogleはPixelやAndroid OSでスマートフォンの利用体験に深く根差しています。こうした各社の事業基盤の違いが、デバイスごとの利用率の差に影響していると考えられます。
次に図表6で、各デバイスの生成AIユーザーが、そのデバイスで生成AIをどのような目的で利用しているのかを比較しました。この図からは、さらに本質的なユーザー行動の違いが見えてきます。

ベース:各デバイスにおける生成AIサービス利用者
上位10項目
まず、PCとスマートフォンの共通点として、「文章の作成・改善」「情報収集のサポート」「文章の要約」「翻訳」の4項目が上位であり、他の項目より突出して多く利用されていることがわかります。これらのタスクは生成AIの得意とする中核的な機能であり、どのデバイスからも広く用いられる代表的な活用方法であると言えそうです。
デバイス別に見ると、PCでは「文章の作成・改善」、スマートフォンでは「情報収集のサポート」が最も多く、腰を据えて行う作業はPC、気軽な検索の代替はスマートフォン、という用途の違いが表れています。さらに、PCではイラスト・画像などテキスト以外のコンテンツ制作が上位に見られた一方、スマートフォンでは「悩み相談」「交通手段の相談」「会話の相手」「献立の相談」など、生活に寄り添う用途が特徴的です。日常生活において、サポート役としてより手軽にアクセスしたいというニーズがスマートフォン利用者に共通していると考えられます。
以上の結果から、現時点ではこれらの用途の利用率はまだ高くありませんが、デバイスごとに異なる利用目的が生まれつつあるようです。特にスマートフォンは、カメラやマイクの機能を活用するマルチモーダルなモデル(画像や音声などテキスト以外を入出力として扱えるモデル)との親和性が高く、その組み合わせによって利用シーンは飛躍的に拡大する可能性があります。こうしたデバイスならではの活用法がさらに開拓されれば、生成AIの一層の普及につながるでしょう。
まとめ
本稿では、ログデータとアンケート調査から、「日常生活における生成AIの現在地」に迫ってきました。生成AIの利用者は現在でも着実に増加し続けており、サービスやデバイスの面では更なる多様化の兆しが見られます。特に、PCとスマートフォンを比較すると、利用されるサービスや目的にデバイスならではの特徴もみられ、それぞれ異なるシーンでの活用法も生まれつつあることが明らかになりました。
次回は、日常生活とは異なる発展を遂げる「ビジネスシーンにおける生成AIの現在地」に迫ります。ご期待ください。
【調査概要】
(スクリーニング)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:18~75歳男女
標本サイズ:n=21,013(性別・年代・地域を母集団準拠で回収)
調査実施時期:2025年3月17日(月)~2025年3月21日(金)
(本調査)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:スクリーニング回答者のうち、生成AI利用経験者の方
標本サイズ:n=2,125
ウェイトバック:生成AI利用経験者のスクリーニング構成比にあわせてウェイトバック
調査実施時期:2025年3月24日(月)~2025年3月26日(水)