「名乗れば動かせる」鍋底エコシステムの始まり
3種のIDが連携し、共通基盤として社会に浸透すれば、これまでデジタル時代のブランドが直面していた、「偽造・流通の不透明さ・顧客との断絶」といった課題にも対処できる可能性が開ける。
今年発生した「メルカリでの備蓄米販売の規制」や「任天堂Switch2の並行輸入規制」などの事案も、NIKEの事例が解決のヒントを示している。
さらに、三者が相互に名乗り、「販売者ID」「商品ID」「ユーザーID」がインフラ上(=強靭な鍋底)で横連携すれば、次はリセール市場のような縦軸での時間(過去履歴)にも価値が生まれる。ブランド価値を持つNIKE(や高級ブランド)ならば、「ブランド→初期購買者→買取業者→再販購入者(→売却者は次回の正規品購入へ)」という循環型(リセール)マーケットブレイスを形成できる。この市場に信頼性と透明性が付加されていけば、これまでサードパーティ・マーケットプレイスで課題となっていた“無法地帯的な不正販売”の排除も現実的になってくる。
この共創モデルがAmazonとNIKEを例に、Walmartや他のリテーラーにも広がることは不可避だ。アパレルや高級ブランドにとどまらず、さらには医療・保険・金融といった「ノンエンデミック(店頭には置いてない高信頼かつ高付加の情報管理が求められる業種)」にも波及していくと予想される。
今後、ブランドの競争力は単なる量販チャネルの拡張ではなく「誰とどのように信頼を重ねていくか」というエコシステムの形成力によって問われていく時代に入っている。