※本記事は、2025年1月刊行の『MarkeZine』(雑誌)110号に掲載したものです
とうとう「クルマ」もAmazonで買える時代に
Amazonが自動車販売に乗り出した。104号(2024年8月刊行号)の『MarkeZine』で解説した「ユニファイドコマース」の概念が、具体に浮上した例だ。やはりクルマ産業は、経済の先発で走るシグナルを見せてくれる。
Amazonは、自ら車を販売するのではなく、第三者ディーラーに「マーケットプレイス」の仕組みを提供。第一弾としてHyundai車の販売から開始、米国48都市での展開とされている。
単に「Amazonがクルマを売り始めたぞ」と捉える前に、ここで改めてユニファイドコマースの本質を捉えたい。根幹にあるのは、リテール業態における「セラー市場への投資(の解放)」だ。
セラー市場への投資とは、具体的にはセラーとバイヤーを結び付けるマーケットプレイステクノロジーへの先行投資や、フルフィルメント施設の拡充を指す。マーケティングや広告領域でホットなリテールメディア事業は、その仕組みの表層部分に過ぎず、水面下で着々と基盤構築が進められている。
一方、日本のリテーラー(百貨店・スーパー・コンビニ・量販店)に目を向けると、セラー市場を広げるためのマーケットプレイス投資が不十分なまま、クローズドなビジネスモデルに依存している状況だ。
たしかに、自社の目利きによる仕入品販売や、高品質な在庫の保有を通して利益率を向上させる従来の方法でも一定の成功はおさめられてきた。しかし、近年はオンライン販売に適していないとされてきた商材やサービスですら、マーケットプレイスを通じた販売が可能となり、その販売範囲も拡大している。日本のリテール企業が自販品を競い、顧客を囲っている間に、Amazonはセラー販売市場を70兆円規模に成長させた。
リテールメディアは「エンデミック(既存の店内や自社Webサイトなどの“売り場”)」に留まらず、セラー市場の広がりによる「ノンエンデミック(それ以外の領域)」へと拡大しつつある。この無限の広がりこそがリテールメディアの成長を支えるカギなのだ。