ノンエンデミック領域に広がる可能性
Amazonの実験は、ノンエンデミック領域に広がる可能性に気付かせてくれる(図1)。

HyundaiのAmazonストアでは、車の下取りや購入時の融資(金融)、保険(ダイナミック・プライシング)に関するサービスも取り扱われる。今後Amazonは、車の売買に関連する周辺サービスを一括で提供するエコシステムをマーケットプレイス上に垂直に構築する。また、Hyundai車に留まらず、他の自動車メーカーの車や自動車保険、修理、メンテナンスといった関連サービスもマーケットプレイス上に乗り、経済規模が水平に広がっていく可能性がある。
さらには、Walmartのようにガソリンスタンドや充電ステーションを持つ企業、コンビニとの連携・統合により、このエコシステムはさらなる広がりを見せるかもしれない。
Amazonが始めた自動車販売の意義
米国の自動車業界では、車のオンラインでの売買は難しいとされてきた中で、先行して事業を展開していた企業が「Carvana」だ。同社は中古車の下取りと再販を自動販売機のような仕組みで実現。2017年の上場時点では約3,000億円だった企業価値を、現在は6兆円規模にまで成長させている。
CarvanaにとってAmazonは表面的には競合関係に見えるかもしれない。しかし、非常に大きな影響力と強力なインフラを持つAmazonが市場を拡大することで、Carvana含む自動車販売全体に追い風が吹く可能性もある。顧客アカウントを増やす「客寄せ効果」が期待されるだけでなく、保険やメンテナンス、レジャーやエンタメコンテンツ、決済サービスなどクルマ関連の統合サービスビジネスの広がりに繋がるからだ。
クルマ産業という巨大な市場が、強靭なプラットフォームに乗り上げた意義は極めて大きい。この「実験」がもたらす影響の大きさを、今後想定しておこう。