(3) 教育に「厳しさ」を求める。Fixby「Don't Look Down」

アラブ首長国連邦(UAE)では、子どもたちのスマホ依存が深刻な問題になっています。調査によると、約7割の子どもが1日に7時間以上スマホを使っており、中には9時間以上も画面を見続けるケースもあります。これにより、心の健康や学業成績、人との関わり方に悪影響が出ているのです。しかし、こうした問題に対して、これまで本格的な対策はほとんど取られていませんでした。
そこで、スマホケースを販売する「Fixby」は、社会に警鐘を鳴らすためにユニークな取り組みを始めました。それが「Don't Look Down」という9時間にわたる映画です。この映画は、スマホで延々とスクロールし続ける「Doomscroll(ドゥームスクロール)」の行動をリアルに再現したもので、まるでティーンエイジャーの1日をそのまま映し出したような内容。9時間永遠とスマホの画面を見せられる映画視聴体験を通して、観客に「このままでいいのか?」という問いを強く投げかけました。
上映後、観客はキャンペーンサイトに誘導され、学校でのスマホ使用を制限するかどうかの投票に参加するよう促されました。その結果、わずか1ヵ月で40万件以上の「賛成」票が集まり大きな話題に。これがきっかけとなり、UAEの教育省は学校でのスマホ使用を禁止する方針を決定。Fixbyが開発した「スマホをロックできる専用ポーチ」の需要も急増し、社会全体で子どもたちのスマホ依存に向き合う流れが生まれています。
「子どもの主体性を尊重し、自分で考えて行動できるように育てることが大切」という風潮にも変化が見て取れます。調査からは、約70%が「子どもはある程度のルールの中で育てるべきだ」「教師はより権威が与えられるべき」と考えていることがわかりました。過剰な自由が与えられると、ルールやマナーを学ぶ機会が減り、社会の中で必要なマナーや協調性が身につかなくなるのではないかという不安視が背景にあると考えられます。

Fixbyは、まさにこのような生活者意識の変化から共感を得た事例と考えられるでしょう。
(4) 生物学的年齢に基づく保険?Hispania「BALI」
キャンペーンという軸からは外れるのですが、新たな生命保険商品「Biological Age Life Insurance(生物学的年齢生命保険)」を発表し注目を集める、Hispania(ヒスパニア)の事例を紹介させてください。
通常の生命保険は、加入者の実年齢をもとに保険料が決まるのに対して、この新しい保険では、「実際の体の若さ=生物学的年齢」を基に保険条件が決まります。つまり、健康的な生活をしていて体が実年齢より若い人は、より有利な条件で保険に入れるという仕組みです。