保険は「モチベーション」に、健康は「義務」になる時代へ

この取り組みを実現するために、ヒスパニアは生物学的年齢の測定で世界的に知られるGlycanAge社と提携。加入希望者は血液検査を受け、血液中に含まれる27種類の糖鎖(オリゴ糖など)を分析することで、生物学的年齢を算出します。実際の測定結果では、約半数の人が実年齢よりも3〜7歳若いという結果が出ており、健康的な生活をしている人にとっては大きなメリットとなっています。
この保険は、個人に最適化された公平な保険制度としてだけでなく、人々の健康意識を高める新たなきっかけとしても期待されています。保険が「もしもの備え」だけでなく、「より良い生活へのモチベーション」として機能する時代が来ているのかもしれませんね。
この商品が注目されている背景には「自由」と「統制」の意識が影響しているかもしれません。現在の生活者の意識として、健康管理を怠る人に対して厳しい目を向けるようになっています。その背景には、不健康な人が増えることで、医療費や社会保険費などの社会コスト増加への不満が考えられます。

また健康は大きなテーマであり、プロシューマーの約3割は、政府に健康と食生活に関するより厳しい法律を制定してほしいと回答しています。おそらく多くの回答者は、現在議論されている超加工食品に関する議論に沿って、食品・飲料メーカーに高い健康基準を課すことを望んでいると思われます。また40%以上が「ジャンクフードの広告は禁止すべき」と答えているように、健康に対する規制はブランドに対しても求められています。
このように、健康は社会コストに直結する問題であり、まさに今回の「生物学的年齢生命保険」のように、公平で個人に合った商品は、生活者の意識や不満を捉えた事例と考えられるでしょう。
まとめ:権威主義の先にある自由
今回の記事では、民主主義から権威主義に生活者の意識がシフトする中で、それがブランドにどのような影響があるかを考察してみました。
<生活者からの政府規制が求められている分野の事例>
- 安全:TIM Telecom「Block Pin」(自由よりも安全)
- 仕事:DoorDash「Fun Coach」(権威的な上司)
- 教育:Fixby「Don't Look Down」(規律とルール)
- 健康:Hispania「BALI」(健康管理)
どの分野も、今までの自由を大事にする見方とは少し異なり、規律やルールを求めている傾向が見て取れます。
興味深いのは、多くの生活者が権威主義的な傾向を示しつつも、「資本主義(自由経済)」には依然として強い支持を寄せている点です。これは「個人の自由」に対しても同様で、自らの自由を手放すことには強い抵抗感があるようです。

このように規律を求めつつも、自由主義に対する厚い支持をしているのを見ると、おそらく生活者は「自由を謳歌するために、今一度秩序を構築してほしい」という希望を持っているのだと考えられます。
ブランドはこの「規律」と「自由」とのバランスをどう取り、生活者とどのように関係構築を図るのか。これは今後ますます重要になるテーマであり、引き続き注視していきたいと考えています。今回の記事が、皆様の参考になれば幸いです。