企業が向き合うべき“もうひとつの生活者”とは
メタバース生活者の姿から見えてくるのは、「現実とは異なる自己」ではなく、「もうひとつの自己」としてのリアルな生活者像です。企業にとっては、そうしたデジタル生活者との対話こそが、彼らの本音と出会えるだけでなく、これまで見逃していたニーズや欲求の発見につながる可能性を秘めています。これは、メタバース空間だけに閉じない新しい市場を開発できる可能性もあります。
特に、今後デジタル空間上での体験は、現実世界へ影響することも間違いありません。メタバース空間のコミュニティで話題になった商品が売れたりするのはもちろんのこと、メタバースという体験が当たり前に生活に根付いたことによる影響もあると考えます。
たとえば、メタバース空間上での睡眠(VR睡眠)のニーズが高まり、専用の寝具の需要が高まることもありました。その他にも「メタバースで便利だと感じることがリアル・現実世界でも実装されたらいいのにと思うか」という問いに対して、約7割が肯定的な回答を示しており、メタバースをリアルの生活の参考情報として捉えるような側面もうかがえます。
さらに、「自分が利用しているデジタル上のコンテンツ/サービスに関わる企業や人を応援したい」という回答も7割を超えており、メタバース空間で企業と生活者の関係を強固にできる可能性もうかがえます。このように、メタバース生活者と向き合うことには、多くの意味や価値が見出せると言えるでしょう(図表6)。

メタバースに限らず、一過性の流行としてではなく、生活の一部として根付き始めたデジタル空間にこそ、新しいマーケティング視点が必要とされています。企業は今後、単なる限定的なキャンペーンではなく、生活者が属するコミュニティへの継続的な参加と対話によって、「デジタル生活者発想」を実践(図表7)していくことが求められるのではないでしょうか。

企業のマーケティングへの示唆=「メタバース生活者」と向き合う意味とは
- メタバース生活者を通じて、「生活者の本音」と出会える
- 現実世界では表出されにくいニーズの発掘や新たな市場の獲得にも寄与
- メタバース空間で企業と生活者の関係を強固にするコミュニティ構築の可能性も