店舗で長時間の相談…AI活用で効率化&品質安定を実現!
HISの店舗でAIをどのように活用しているのだろうか。
同社では、店舗での相談予約をしたユーザーに関して、Webサイト上でどのような情報を閲覧していたのかその行動履歴をAIが分析し、サマリーをスタッフに提供する「生成AIベースの相談予約ダッシュボード」を実装している。

旅行サイトで検索する際、行き場所や予算感、日程などがあらかじめ全部決まっているというケースはあまり多くない。多くの場合、「だいたいこの時期に予定している」「場所はこのあたりがいい」「予算はこれくらい」など、大体のスケールを想定しながらWebで情報を検索し、具体的に固めていくことになる。
ユーザー行動の背景にある文脈や意図を、プレイドは「コンテクスト」と表現する。ユーザーのコンテクストを店舗スタッフが事前に理解していれば、ユーザーが来店したタイミングで、予算感や希望の行き先を絞り込んだ形でヒアリングを進めていける。
店舗での接客は、長いケースだと2時間くらいかかることもあると言う。ただ、データを見ると「時間はかかるが成約率は高くなる傾向」もわかっており、一概に接客時間を減らすだけが得策ではない。とは言え、「かけなくていいところまで時間をかけると、その分コンサルタントの負担にもなるので、効率化できるところは効率化したほうがいいと思いました」と澤田氏は説明する。

店舗に来る顧客は、年齢も予算も行きたいところも様々です。食事もアクティビティも楽しみたい方もいれば、ホテルや食事よりも長期滞在しやすい立地にこだわるなど、ニーズは多様化している。これに加えて、特に店舗の場合では、経験の浅いスタッフとベテランの接客の質という課題もある。
「お客様に満足いただけるような提案やきめ細かいヒアリングを実施するには、事前にそのお客様の抱いている希望を把握しておくことが大切です。そうすることで、全体的な接客のクオリティも上がりますし、接客時間も効率化できるなどのメリットが考えられます。AIを活用することで接客の質を保ち、かつ社員教育の面でもプラスになるなど、総合的に考えて相乗効果が期待できるため、導入を決めました」(澤田氏)
成約率が5ポイント向上&顧客の意外な悩み方を発見
店舗でのAI活用はプレイドの支援と共に進められ、約2ヵ月で開発完了、1ヵ月で全国店舗へ展開した。これにより、大きく3つの点で成果が得られたと言う。

1つは、開発工数を抑えながらもWebサイト上でのパーソナライズ精度が向上し、Web体験のユーザビリティが改善されたこと。もう1つが、店舗で生成AIベースの相談予約ダッシュボードの活用が進み、提案工数の削減や若手スタッフの早期育成などで効果が出たことだ。その具体的な結果として、相談予約利用ユーザーは導入前と比較して成約率が約5ポイント上がったと言う。相談が効率化され、成約率が上がったことで、コスト削減と売上向上の2つを同時に実現できたわけだ。
3点目として、より詳細な顧客インサイトを獲得できたことも大きな成果だと言う。たとえば、行き先に悩みながら相談に訪れたユーザーの声を聞いたところ、国内/海外で分けて検討するのではなく、両軸で検討しているユーザーが想定外に多いことが判明したそうだ。