デバイス別の利用目的が映し出すビジネス活用の現在地
これまでは「誰が」生成AIを使っているかを見てきましたが、ここからは「どのように」生成AIを使っているかに焦点を当てて分析していきます。図表6は業務における生成AIの利用経験率をデバイス別に示したものです。

ベース:20~65歳男女、会社員・自営業などの有職者(パート・アルバイトは含めず)
n=20,137
デバイス別の利用経験率は、PCが12.7%、スマートフォンが8.5%となりました。前回の記事で触れた通り、日常生活ではスマートフォンの利用がPCを上回りましたが、ビジネスシーンにおいては、依然としてPCが主要な利用デバイスであることがわかります。
この背景には二つの要因が考えられます。一つは、業務用デバイスとしての普及率の違いです。本調査でも業務でPCを利用する人は約7割にのぼっており、業務上のメインツールであるPCがそのまま生成AIの主要な利用デバイスになっている状況が想像されます。二つ目の要因は、企業のセキュリティポリシーです。特に会社支給のスマートフォンでは、情報漏洩対策として、利用できるアプリが厳しく制限されているケースも多く、これが生成AIの業務利用を阻んでいる可能性が考えられます。
このように、業務の特性と企業のセキュリティという、ビジネスシーンならではの制約が、日常生活とは異なるデバイス利用の傾向を生み出していると言えるでしょう。
さらに一歩深掘りし、その利用の「中身」の差を見ていきましょう。ビジネス上でPCまたはスマートフォン利用しているユーザーに対し、そのデバイスを通じた生成AIの利用目的を聴取しました。

ベース:各デバイスを用いて業務上で生成AIを利用した経験のあるビジネスパーソン
両デバイスにおいて、「情報収集・検索」が最も多い利用目的となりました。これは多くの職種に共通する業務であることに加え、検索サービスに生成AI機能が搭載され利用のハードルが下がったことが要因として挙げられます。さらに、ウェブ上の膨大な情報を調査計画に沿って自動で収集・要約しレポートを作成するリサーチ機能も登場し、リサーチアシスタントとしての活用も広がりつつあると考えられます。
また、PCと比較してスマートフォンは「アイデア出し・壁打ち」の順位が上昇していることも特徴的です。腰を据えて行うような作業では、キーボード入力や広い画面の点でPCが有利な一方、比較的短い対話で済む用途は、場所を選ばず手軽に使えるスマートフォンと親和性が高いことを示唆しています。
現状の利用目的の上位は、既存業務の効率化といった顕在的なニーズに応えるものが中心です。しかし、たとえばデータ分析においては、生成AIを活用することで気軽に分析、解釈やデータに基づいた意思決定ができるようになり、専門的な知識を持たないユーザーであってもその業務の遂行が可能になります。生成AIは単に業務を代替するだけでなく、人々の能力を拡張し、ビジネスの在り方自体を大きく変革する可能性を秘めています。
まとめ
本稿ではビジネスシーンにおける生成AIの現在地を紐解いてきました。利用者の増加傾向は続く一方、その活用は「研究・開発職」「ソフトウェア・情報サービス業」「大企業」「高職位者」などの層に集中しており、全体の導入状況には二極化の兆しが見られます。また、業務においてはPCを主軸としつつも、スマートフォンでは対話や壁打ちへの利用が多いなどデバイスならではの利用実態も明らかになりました。
日々進化を続ける生成AI技術が日常生活やビジネスの現場でどのように受け入れられ、活用されていくのか、その技術発展と社会実装の両輪を捉えていくことが引き続き重要になります。今回の調査結果は、あくまでも生成AIの現時点での一断面に過ぎませんが、本稿がAIと人々との関わりを考えるための一助となれば幸いです。
【調査概要】
(スクリーニング)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:20~65歳男女、会社員・自営業などの有職者(パート・アルバイトは含めず)
標本サイズ:(第1回)n=20,498 (第2回)n=20,137
調査実施時期:
(第1回)2024年10月25日(金)~2024年10月28日(月)
(第2回)2025年3月14日(金)~2025年3月17日(月)(本調査)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:スクリーニング回答者のうち、ビジネス(組織・個人)で生成AIを導入済/検討予定の方
標本サイズ:(第1回)n=2,083 (第2回)n=2,179
ウェイトバック:なし
調査実施時期:
(第1回)2024年10月31日(木)~2024年11月5日(火)
(第2回)2025年3月24日(月)~2025年3月26日(水)