職種別利用実態:研究・開発職が牽引し、二極化が進む
これまでで、業務における生成AIの認知と利用が現在も拡大し続けていることを見てきました。しかし、一口に業務と言ってもPCと向き合うデスクワークから実店舗での接客まで、その形態は多岐にわたります。ここからは、具体的にどういったビジネスパーソンが生成AIを積極的に活用しているのか、「職種」「業種」「企業規模×職位」の3つの切り口から深掘りしていきたいと思います。

ベース:20~65歳男女、会社員・自営業などの有職者(パート・アルバイトは含めず)
まず、職種別の利用経験率を見ていきましょう。2025年3月の時点では、「研究・開発職」の利用経験率が最も高く40.8%となりました。次いで、「技術職」「企画・事務職」「営業職」「自由職」で全体平均を上回る高い利用経験率が見られています。反対に現在活用が進んでいない職種は、「技能・生産職」「農・林・漁業従事職」「接客業」となっています。これらの職種では、PCを使ったデスクワークよりも現場での身体的作業や対面コミュニケーションの割合が高く、現状では生成AIの活用シーンが限定的であることが要因にあると考えられます。
全体としては、すべての職種で利用経験率の上昇傾向が見られますが、前回調査から利用率トップを維持する「研究・開発職」の伸び(+12.8pt)が突出しています。結果として、利用が進む職種とそうでない職種の間の差は、この半年間でさらに拡大したことが明らかになりました。
業種別利用実態:IT業界で先行、業界間の格差も拡大

ベース:20~65歳男女、会社員・自営業などの有職者(パート・アルバイトは含めず)
業種別に見ても、利用状況には大きな差が見られます。利用経験率は「ソフトウェア・情報サービス業」が40.5%と突出して高く、次いで「電気通信業」、「金融業」となっています。これらの業種で利用が進む背景としては、ソフトウェア開発での実用的なツールの登場や、デスクワークの比率が高くAIを適用しやすい業務形態にあること、またITリテラシーの高い人材が豊富であることなどが考えられます。
前回調査からの上昇量を見ると、元々利用率が最も高かった「ソフトウェア・情報サービス業」の伸びが最大(+9.0pt)となりました。この結果は、職種間だけでなく業種間においても、導入度合いに二極化の兆しが見られていることを示しています。
企業規模×職位別利用実態:大企業・高職位者が積極的に活用

ベース:従業員2人以上の企業の役員・経営者/係長・課長・部長/一般社員
※企業規模1,000人以上の企業の役員・経営者はサンプル過少のため参考値
図表5では、企業規模と職位別に生成AI利用経験率を比較しています。この図からは、企業規模が大きく職位が高いほど利用経験率が高く、また、特に職位の高いビジネスパーソンほど前回調査からの上昇量も大きい傾向が読み取れます。この結果からは、実務者レベルからボトムアップでの活用拡大が進んでいるというよりも、テクノロジーに対する情報感度が高い高職位者が率先して活用を試みているという、現在の普及フェーズが示唆されます。
これまでの結果を総合すると、現在のビジネスシーンにおける生成AIの導入には、職種・業種・企業規模×職位による濃淡があり、「研究・開発職」「ソフトウェア・情報サービス業」「大企業」「高職位者」などの層が、積極的に生成AIの業務への適用を試みていることがわかりました。さらに、これらのセグメントでは、前回調査からの利用経験率の伸び幅も大きく、生成AIの導入が進んでいないセグメントとの格差が拡大する二極化の傾向が見られています。
業種・職種ごとに業務の内容や環境は大きく異なり、生成AIの導入障壁にも大きな違いが存在します。今後は、一部の先進的な層だけでなく、多様な働き手がそれぞれの持ち場でその恩恵を享受できるよう、生成AIのさらなる可能性を探求し、活用の裾野を広げていくことが期待されます。