生活者に聞く、パーソナライズコミュニケーションへの本音
日本社会における人口減少や顧客ニーズの多様化といったトレンドを背景に、顧客に対するCRM施策やCX(顧客体験)の向上を通じたロイヤリティやLTV(顧客生涯価値)の向上に取り組む企業が増加しています。
これらの手段の一つとして注目されているのが、パーソナライズコミュニケーションです。しかし、実際にはどのようなデータを用い、どのチャネルで、どのような内容のパーソナライズコミュニケーションが効果的なのかについては、各企業が試行錯誤を重ねながら検証する必要がありました。
日本でCRMが本格化してから25年が経過した今、その答えは「パーソナライズコミュニケーションを受けてきた生活者の中にあるのではないか」と私たちは考えています。そこで、マクロミルのCRM/CX事業ユニットでは、実際の生活者を対象にパーソナライズコミュニケーションの現状や期待について意識調査を実施しました。
カテゴリによって、サービス・ブランド選定時の重視点は異なる
まず、生活者が利用しているサービスのうち、CRMやCXに力をいれていると思われる10カテゴリについて、サービス・ブランド選定に重視するポイントをヒアリングしました(図1)。

「小売業/モール系EC」カテゴリでは「価格」が最も重視されており、次いで「品質」「手に入れやすさ」「信頼性や安心感」の順でした。一方、「金融サービス」カテゴリでは「サービス・ブランドの信頼性や安心感」が最も重視され、次いで「ポイント還元や割引制度の充実」が挙げられ、カテゴリごとで重視点が大きく異なることがわかります。
重視点を機能的価値と情緒的価値に変換して比較すると、「小売業/モール系EC」をはじめとする多くのカテゴリでは、価格や品質、機能性といった機能的価値が優勢でした。一方、「金融サービス」カテゴリでは、信頼性や安心感といった情緒的価値がより高く評価される結果となりました。
生活者が自身のお金を預けたり、いざというときのセーフティネットになったりする「金融サービス」では、生活者から信頼を得ることが何よりも重要であることがうかがえます。
また、「個々のニーズにあったコミュニケーションや提案」(=パーソナライズコミュニケーション)を重視する割合の高かったカテゴリは、「教育サービス」(32.4%)、「エンターテインメント」(13.2%)、「金融サービス」(11.2%)であり、生活者の進路や暮らしに直接影響を与えるカテゴリ、選択肢が無数に存在するカテゴリにおいて顕著でした。
パーソナライズコミュニケーションの価値とは?
次に、生活者がパーソナライズコミュニケーションの価値をどのように捉えているか把握するため、複数の設問を通じて調査を続けました。結果、どのカテゴリにおいても「新しい商品や情報を知るきっかけ」が最も高い評価を得ました。

先ほど紹介したブランド・サービス選定については、パーソナライズコミュニケーションの重要性は必ずしも高くありませんでした。しかし、実際にサービスを利用する中で、新しい商品や情報を知るきっかけとなり、選択を容易にしてくれる点が価値として認識されていることがわかります。
なお、いずれのカテゴリにおいても、機能的価値(「商品を知るきっかけ」「選択が容易になる」など)が優位でしたが、情緒的価値(「予期せぬ出会い」「自分の好みやニーズを理解してくれている」など)も一定の割合で見られました。