SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2026 Spring

MarkeZine Day 2025 Autumn

売上計画比2倍の花王「THE ANSWER」が戦略の実行プロセスを公開 鍵は感情ニーズ×スクラム組織

商品開発:知覚体験設計と“スクラム”組織による一貫性の創出

 商品開発にあたり、まずはワークショップを開催した。30名以上のメンバーが参加し、トレンドを幅広くインプットした上でアイデアを出し合い、決めたコンセプトは「完全栄養シャンプー」。そこから、処方、使用感、仕上がり、容器、デザイン、KVまで、すべてを「栄養感」と「青の感情」に貫徹して設計した。

画像を説明するテキストなくても可
※クリックすると拡大します

 特徴的なのは、ヘアケア行動を細分化した「知覚品質フロー設計」だ。予洗い、手に取る、塗り広げる、泡立てる・洗う、すすぐ、仕上がり、仕上げ後という各段階に、五感から刺激する仕掛けを組み込んだ。

 そして、パッケージデザインやブランドサイトで、花王100年の研究史や世界初の5大必須成分配合、約12倍のヘアケア成分など、こだわりがひと目で伝わるビジュアルを採用した。

 山岡氏は、商品開発における一貫性を生み出すための環境作りにも言及した。これまでは、商品研究・開発、デザイナー、マーケティングと分業体制を取っていたが、本プロジェクトでは、企業・部署の垣根を越えたメンバーが集うスクラム組織を組成したという。

画像を説明するテキストなくても可
※クリックすると拡大します

 「ワークを通して制作過程や苦労を見ることで、それぞれの立場へのリスペクトが生まれ、意見を素直に交わせる空気感が育まれていきました。また、理解が進むことで全員の視点が高いレベルで揃い、よりシャープな一貫性を構築できたと感じています」(山岡氏)

変化への対応:SNS上の声を即座に反映、施策化

 アジャイルな組織体制は、商品開発にとどまらない。商品発売後は、SNS上のオーガニック投稿の声をリアルタイムで収集し、毎週PDCAを回す体制を構築している。

画像を説明するテキストなくても可
※クリックすると拡大します

 この体制を構築した背景として、野原氏は「オーガニックの声とシェアには完全に正の相関がある」ことを挙げる。

 「我々のメッセージを広告で発信するだけでは難しく、オーガニックの声自体がシェアと最も相関があると考えています」(野原氏)。

 ただしオーガニック投稿は広告と違い、企業がコントロールすることは難しい。そこで、「変化への対応」が重要となってくる。オーガニック投稿から、生活者が注目する要素を発見し、コミュニケーションを磨き上げることで対応する。

 高速PDCAサイクルを回す上で、まず発売前にチェック指標を仕組み化した。その1つに、タッチポイントとTHE ANSWERが生活者へ伝えたいメッセージ(What to say)を掛け合わせて評価し、優先順位を整理した表がある。

 そして発売後は、どのメッセージを、どのタッチポイントで当てていくとワークするか、その仮説を持って毎週発話を確認すると、特徴的なワードが出てくるのだという。

 山岡氏は、具体例として、同製品独自の洗い方「塗り洗い」を挙げた。実は発売当初は、成分や技術面を優先的に訴求する計画だった。しかし発売後にオーガニック投稿を分析すると、「塗り洗い」に対する反応が予想以上に大きかった

「チームでは、単に単語が新しいというだけでなく、何か伝えたいメッセージにつながっているのでは?と考え、さらに検証を進めました。すると『理にかなった洗い方だ』という発話が元となっていることがわかったのです」(山岡氏)

 そこで、「塗り洗い」という新規性、他との明確な差別性、そして「多量の成分を届ける」という意義性(納得性)の3点が揃っていることから、これがブランドロイヤリティにつながると判断。すぐに「塗り洗い」をフィーチャーしたコンテンツを追加制作し、より直感的に訴える動画を展開した。

画像を説明するテキストなくても可
※クリックすると拡大します

 このPDCAサイクルでは、発話された内容をそのまま受け取るのではなく、その裏にある生活者の言葉にならない感情を捉え、共有することが非常に重要だと山岡氏は振り返った。

「生活者の潜在的な声を感覚的に共有し、意見を共鳴させ合い、すぐに実行まで進められるのは、スクラム組織ならではのメリットです。しかしそれには、全員でデータを分析しながら、感じたことを意見出しする空気感作りが重要です」(山岡氏)

画像を説明するテキストなくても可
※クリックすると拡大します

次のページ
ミドルマネジメント層は「サーバントリーダー」に

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
MarkeZine Day 2025 Autumn連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

タカハシ コウキ(タカハシ コウキ)

1997年生まれ。2020年に駒沢大学経済学部を卒業。在学中よりインターンなどで記事制作を経験。卒業後、フリーライターとして、インタビューやレポート記事を執筆している。またカメラマンとしても活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/11/26 08:30 https://markezine.jp/article/detail/49799

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング