飲食店が「広告メディア化」されていなかった3つの理由
高い効果が見込める飲食店内での映像×体験プロモーション。それにもかかわらず、どうしてこれまで広告として十分に活用されてこなかったのだろうか。背景には3つの要因があったという。

1つ目は、個人経営の店舗が圧倒的に高いこと。外食市場規模は25兆円を超えるが、大手チェーンが占めるシェアは7%に満たず、大多数は個人店である。この分散性が、ネットワーク化や一斉導入の障壁となってきた。
2つ目は、閉店率が高いこと。一般的に、飲食店の7割以上は5年以内に閉店すると言われている。つまり、広告用にサイネージを設置したとしても、投資資金を回収する前に店舗がなくなってしまうリスクが高い。そのため、安定したメディアとして成立しにくい側面があった。
3つ目は、人手不足が課題となっている飲食店の割合が高いこと。リソースが限られているなかで、物理的にもマインド的にも、新しい施策に取り組める店舗は少なく、協力を得ること自体が難しい状況にあった。
「こうした課題に対して、ぐるなびの飲食店ネットワークとエプソンの映像環境整備を組み合わせることで解決を図ったのが『ミセメディア』です。信頼関係のある加盟店にプロジェクターをはじめとした大型ディスプレイを設置させてもらうことで、飲食店を『広告メディア化』することに成功しました」(小西氏)

飲食店は「エモーショナルコミュニティ」。「体験×会話」がファンを生み出す
「ミセメディア」を表すキーワードは「エモーショナル」。飲食店はときに、人間の行動や決断、対人関係に大きな影響をおよぼすような感情(=エモーショナル)が揺れ動く舞台となる。
「好きな人と初めて会うドキドキ、仲間と未来を語り合うワクワク。飲食店は様々な感情が共存し、誰かに心を動かされる場所です。限りなく日常に近いけれど、ちょっと非日常な空間で、人と人、人とモノがつながっていく……。飲食店はいわば、『エモーショナルコミュニティ』と言えます」(西本氏)
また、そんなエモーショナルコミュニティでの滞在時間の長さも、「ミセメディア」の優位性のひとつと言える。飲食店の平均滞在時間は120分と圧倒的に長い。長時間滞在が前提のエモーショナルな空間だからこそ、企業や地域の「ウリ」や「ストーリー」を来店客の心にしっかりと届けることができる。
さらに、飲食店での体験には「会話」がともなうことも、「ミセメディア」の効果を高める重要なポイントだ。

複数人で同じ料理をシェアしたり、映像を同時に見たりすることで自然に話題が生まれる。この「体験×会話」が相互作用し、記憶への定着と行動変容を加速させる。「人は文字を読むだけより、体験した方が9倍記憶に残る」という研究データを耳にしたことがある人も多いのではないだろうか。
「映像体験、喫食体験、会話体験、想起体験……ここまで『体験』がともなうプロモーションは、他にないと思います。だからこそ、好きになってファンにつながる。『ミセメディア』ではそんな、今までになかったプロモーションが可能です」(西本氏)